毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

頭はこれからよくなります

 

これも図書館で偶然見つけた、前から読みたかった本。
池谷裕二さんは当時31歳の東京大学薬学部助手で、脳研究のホープと言われる人だ。その専門が記憶を司る脳の器官・海馬

簡単に言えば「脳細胞は20歳をピークにどんどん死んでいく」という説は間違ってはいないけど、ちまたで言われるほど絶望することはないという希望が持てる本。


以下、なるほどと思ったことをメモ。

物忘れは老化ではない

物忘れがひどくなるのは生きてきた上でたくさんの知識を蓄えたため、選び出すのに時間がかかったりたどり着けないのは仕方のないこと。ド忘れしても誰かにその内容を言ってもらうと「あ!それそれ」と言えるということは、忘れてしまったり情報が消えてしまったわけではない。「大人が1万個の知識からひとつを選ぶのに比べて、子どもは10個の中からひとつ選ぶのだから早い」と考えれば悲観的になる必要もないことがわかる。

30歳を過ぎてから頭はよくなる

作ったり壊したり再編成しながら脳のインフラを整えるのが20代まで、30歳以降脳は別の働きに入る。構築したネットワークを密にする段階に入るので、推理力は大人のほうが優れているそうだ。若い時にはつながりを発見できる範囲が狭いが、年を取って行くに連れてつながりを発見する範囲が広がっていき、30歳を超えたところで飛躍的に増える。
「今まで一見違うと思われたものが実は根底でつながっている」
ということがわかってくるのが30歳を超えた時期なのだそうだ。

脳は疲れない

脳はいつでも元気いっぱいで全然疲れない。寝ている時も働いているし、一生使い続けても疲れないのだとか。脳が疲れているというのは間違いで、疲れているのは目。疲れたと思ったら目の疲れをケアしたり、体を動かした方がいいらしい。

脳は見たいものしか見ない

脳は自分が混乱しないように見たがるので、整合性が取れないと見なかったり勝手に作り出したり自分の都合のいいように解釈するそうだ。まるで京極夏彦の小説みたいだ。見たくないものを勝手に消してしまった体験があるので、この説はとても納得。

眠っている間に考えは整理される

そのためにも睡眠不足はよくないそうだ。6時間は必要だとか。
海馬は眠っている間に記憶を引っ張り出していろいろつなぎ合わせることで情報を整理している。その時に見るのが夢だそうだ。個人的には夢はそれだけではないと思うが、確かに経験したことや新しく覚えたこと、起きたことが出てくることも多いので、夢にはそういう目的もあるのだろう。睡眠は「きちんと整理できた情報をしっかり記憶する」という、取捨選択の重要なプロセスなのだ。

寝ている間にできるようになる

よく「寝る前に翌日やるべきことや悩みを心に問いかけてから寝ると翌朝いいやり方や解決方法が浮かぶ」という話が本などに載っている。これはスピリチュアルな領域の話だと思っていたが、科学的にも証明されているのだそうだ。それも海馬のおかげ。寝ている間にさまざまな情報をつなぎ変えているうちに思いつかなかったベストの方法が浮かんだり、簡単に解決できてしまう。
この力を最大限利用するためには、寝る前にこれからやる仕事に目を通しておいたり、脳に材料を与えておく必要がある。その後は脳に任せて眠るだけでいいそうだ。

やる気がなくても実際にやり始めるしかない

掃除などやりたくないと思っていたことをやり始めたら意外に面白くなってがんばってしまうのは、実は脳の生理で説明がつくそうだ。やる気を司るのは脳の側坐核という部分。ここの神経細胞が刺激されるとやる気が生まれるが、刺激しなければやる気は出ない。つまり、やり始めて刺激が起こるまでやる気が出ないのは当然。

達成感を増やすのがやる気を出すコツ

達成感が快楽物質ドーパミンを出すので、目標は小刻みに設定した方が上手く行く。
あることの始めと終わりには能率が上がるので、1時間何かをやるとしても30分が2回あると思うと、始めと終わりが1回ずつ増えるからよりはかどる。
自分に適した目標設定が大切。

言ってしまったことが未来を決める

脳はひとつのことを決めつけたがり、なおかつ安定化したがる。自分があらかじめ言ったことに対しても安定化しようとする。いいことを言うとその通りになる。悪いことを言ってもその通りになる。いい意味でも悪い意味でも、言葉は呪いみたいなもの、だったら未来に対しては素敵なイメージを思い描いた方がいい――って、こんなことを科学系の本で読むとは驚き。
科学的裏付けもあるのなら、張り切ってネガティブなものを自分から排除しましょう。

予想以上に脳は使い尽くせる

「脳は使い尽くせるんだ」と気づけば、どんな年齢であっても脳の力を伸ばすことができる。ふと「これ、おもしろいなぁ」と感じることはとても大切。なぜなら、自分の視点にひとつ面白いものが加われば、脳の中のパターン認識が不約的に増えるから。新しい支店の獲得をくり返せば、脳はそれらの視点を組み合わせ、驚くほど面白い考えや発想を生み出していく。

脳はべき乗で発展

べき乗とは1、2、4、8、16、32…と増えていく。経験メモリー(方法記憶)はくり返すことによってべき乗で増える。それはやればやるほど飛躍的に経験メモリーのつながりが緊密になっていくから。しかも、この「脳の組み合わせ能力」が爆発的に増えるのは30歳を過ぎてから。
「ひとつのことを毎日、10年繰り返しさえすれば、才能があろうがなかろうがものになる」というのは本当。

ストッパーをはずすと成長できる

「できないかもしれない」と心配するストッパーをはずさないことには、無意識のうちに能力にブレーキをかけてしまう。一見「無理だ」と思えることでも、気持ちにストッパーをかけずにやり続けてみると、能力は飛躍的に向上する。
何かを進める時、ストッパーを外す方法と前に進む力を伸ばす方法の2種類がある。もとの力を増やすのは大変だが、ストッパーは意識で外せる。無理かもしれないと思えることをやり続けることで変わる!

「頭真っ白」状態をできるだけ少なくする

頭真っ白とはインプットもアウトプットもできない状態、つまり脳は全く働いていない状態なので能力も発揮できない。糸井さんはこういう時「自分は真っ白になっていない」と思い込むのだそうだ。そう考えている限り、人は何とかしようと思える。何とかしようと思えないのが一番危ない。というのは何となくわかるような気がする。

失敗が人をかしこくする

実験をすると、ミスをした猿のほうが記憶の定着率がいい。脳は消去法のように「ミスをした方向に進まないことで道を選ぶ」という性質があるため、間違えることは脳にとっては飛躍のチャンスになる。

やりかけの仕事だけでは辛い

人生においてやりかけのことだけが募ってくると、当然誇りは生まれないだろうと思います。誇りを生むためには、ちょっとでも完成したものを残しておくというか、そうしないと自信って出てこないですよね(池谷さん)。
脳は安定を求めるので、新しい観点が全く増えないのも問題だが、可塑性だけでも核がなくなってしまい辛い状態になるのだとか。耳が痛い。

「頑固」=頭が悪い

ひとつだけの見方にとらわれないで、絶えず新しい組み合わせを探そうとするのは、いつでも生きていく動機が増えること。
認識を豊富にして脳のネットワークを密にして行くことがクリエイティブな仕事に近づいていくヒントになる。認識のパターンを増やす(今までと違う見方を受け入れる)チャンスを増やしておくことが、ものを見る時のゆとり、余裕、遊びにつながる。新しい認識方法を受け入れるスペースがなくいっぱいいっぱいの状態が頑固。新しい組み合わせを増やせないということは、脳の可塑性が低いということで、創造力も生まれないし可能性を放棄していることにもなる。

丸暗記するには海馬をだます

海馬は生存に必要な情報かどうかを判断して、生存に必要なものを記憶する働きがある。
今それが必要なものだと自分で納得しているかどうかも海馬の判断基準に影響する。また、好き嫌いを判断する扁桃体と海馬は密接な関係があるので、好きなものは覚えやすい。
覚える対象を「生存に必要」「大好き」と思うことで記憶しやすくなる。

休みは切りのいところで取らない

これも「脳は疲れない」ところから来るもの。ある小説家は
「区切りのいいところまで書いて終わりにして、あとの続きを書き始めるのはとても難しい。それよりも、区切りのいいところからあと数行を書いて休憩をとったほうが、うまくいく」
と言っていたそうだ。これは大きなヒントだと思う。

ちょっと増やしてちょっと減らせばプラスマイナスでコントラストがすごくつく

というのが池谷さん曰く生物共通のやり方だそうだ。実生活でいろんな課題をたくさん抱え込んだ時に、何かを「これはやらなくていいや」と少し減らすことができれば、他の大事に部分に向けるエネルギーが増えて燃費よく好きなことをやることができる。
他のことへ向かう可能性を捨てれば、特定のひとつのことに抜群に秀でることができる。そういう潜在能力は誰の脳にもあるのだそうだ。

DHAは足りている

池谷さんによれば、一生外から摂らなくても足りているそうだ。サプリメントの会社に怒られそうだが、わざわざ摂る必要ないみたい。

脳細胞は余っている

1秒に1個ずつくらいのペースで脳細胞は死んでいるのは確かだが、ある細胞を全部使っているわけではないそうだ。一生かかってもたくさん残るので、死んで減っていくことを気にすることはない。
人間の体は、脳以外もそれだけ充分に余裕を持たせて作ってあるそうだ。自然ってすごい。

宗教の開祖はたとえ話の名人

たとえ話が上手いのは、脳の結びつける能力の高さを示す。何かを上手く表現するのは「結びつきの発明」のようなことなので、一見関係ないもの同士に共通項を見つけ出して新しい世界を見いだす能力は、脳の働きがいいことを示している。