- 作者: 原子禅,亀畑清隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/12
- メディア: 文庫
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「行動展示」(その動物本来の動きを活かした展示方法。見る側にとっても動物の野生に近い状態を見ることができるし、動物にとっても棲みやすい環境になる)に至るいきさつや新しい施設ができるまでのエピソード、展示方法などはほとんど読んだことがある話だったが、スタッフの方々が何を思って動物園を運営しているかをこの本のあちこちで知ることができ、それが面白かった。
ただ珍しい動物を集めて見せるのが目的ではないということ。傷ついた野生動物を保護し、治療して返したり、逆に絶滅危惧種をどうやって維持するかを考えるのも動物園の仕事なのだそうだ。また、動物を見ることによって環境のことを考えたり、動物を本当に大切にするというのはどういうことかを学べる場でもある。
たとえば旭山動物園では「ペンギンの散歩」という催しがあるが、あえてパレードなどの言葉を使っていないそうだ。それは、本当にペンギンに散歩をさせることが目的で、休園日でも行っているからだとか。動物の目線で一番いい方法を考える、という姿勢を感じた。この本の最後にある園長と立松和平さんの対談も面白い。「ここのアザラシはアザラシを生きている」という言葉には説得力がある。旭山動物園の魅力がよくわかるし、これだけでも読む価値があると思う。
この本のもうひとつの魅力は写真。いきいきしている動物だからこんな写真が撮れるのかもしれないが、動物も人もみんないい表情をしている。