これでも昔は文学少女だった。学生の頃欠かさず読んでいたのは村上春樹と吉本ばなな*1のおふたり。それがいつからか実用書・自己啓発本一辺倒になってしまった。仕事にどっぷりつかってしまったからだろうか。
反省して久しぶりに借りたのがこの本。文芸書といってもこれは小説ではなく村上さんご自身の体験をつづったもので、ご本人は「メモワール」のようなものと書かれている。個人史というほど大げさなものではないがエッセイという軽いくくりには入らない。
村上さんのエッセイが好きで(もちろん小説も)ある時期まで熱心に読んでいたので、村上さんが毎日走っていて定期的にマラソンに出場されていたことは知っている。この本はその走ることについて書いたものだ。ランニングとかマラソンとか、トレーニングとか負荷とか筋肉がどうのこうの、とやらない人にとってはまったくちんぷんかんぷんな話のはずなのになぜかものすごく示唆に満ちている。人生の教訓になると言ったらオーバーかもしれないが、少なくとも私にはとても励みになる本だった。
村上さんの本は昔からそうなのだ。誰にとってもではないと思うが、なぜかいつも本を読んだあとはこつこつした作業がしたくなる。で、日常的なことをちゃんちゃん片付けられたりする。今日もやらなきゃ、と思ったまま放り出していたことがずいぶんはかどった。
いろんな意味で勇気づけられた。たまには自己啓発と関係ない本も読んで自分の世界を広げよう。