- 作者: 西野浩輝
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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著者の説く「段取り」は、私たちがイメージする段取りよりも広範囲に及び、驚くようなことも含まれる。たとえば、Plan/Do/Seeは有名なビジネスの基本だが、著者はSee(振り返り)が一番大事だができていない人が多いと書いている。なぜなら、振り返りを行うことでよかった点や改善すべき点が確認できて段取りの技術が飛躍的に向上するからだそうだ。確かに、どうしても終わったらホッとしてやりっ放しになりやすいが、成功したことにせよ失敗したことにせよ、それを次に活かせば素晴らしい財産になる。
以前お菓子作りに凝っていた時期があり、同じものを続けて何度か作った時はだんだんうまくできるようになるのだが、ブランクが空くと「あれ、前はうまくできたのに」というできになることが多かった。それは、前の結果を忘れてしまうからだということに気づき、コツや失敗の原因をメモしておくようになった。すると、時間が空いてもできばえにばらつきが出にくくなった。
仕事も同じだと思う。終わった直後にちょっと振り返るだけで成長のスピードが違うそうだ。「反省」というと悪かったことばかりにフォーカスしてしまうので著者の会社では「レビュー」という言葉を使い、よかった点6割、改善すべき点4割の割合で出し合うようにしているそうだ。この割合ならイヤにならなくてよさそう。
さらに驚いたのは、イメージングと準備に綿密に時間をかけていることだ。だからこそ時間通りに伝えたい内容をしっかり伝える講演ができているのだろう。
イメージングも段取りのひとつ。何か仕事をする前にしっかりイメージングをしておけば同時に準備するもののチェックもできるそうだ。たとえば、営業先での動きを綿密にイメージングすることで持って行くものやどんな準備をすればいいかがわかり、もれがなくなるそうだ。
たかが段取り、されど段取りだ。このくらいしっかり段取りできるようになれば、仕事のスピードは格段に上がると思う。
他にも、実に細かいコツがたくさん紹介されているので勉強になる。誰でもいくつかはすぐ使えると思う。ただ、時々「これが一番」と押しつけるような印象を受けるところがあったので☆は2つにした。個人的に「自分にとっていいやり方を紹介していますがそれぞれ工夫してください」というスタンスの方が好きなので。この辺は好みが分かれると思う。
PlanとSeeに全体の10%程度を使う、とあったのでこれからは毎朝しっかり手帳を見てToDoを確認し、夜にはレビューと翌日の準備をしてみることにした。
そういえばGTDは必ずレビューがセットになっていた。やっぱり進んでいる人の教えは同じ。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
段取りの定義
時間当たりの成果を最大化し、目標を最短ルートで達成するためのすべての計画と行動
Don't work harder. Work smarter!
(一生懸命に頑張って働くなかれ。賢く働こう!)
うまく人を動かすために伝えること
- 「何のために行うのか」という仕事の目的
- 目的達成のために具体的にやってほしいこと
- 係わる仕事の最終到達点
イメージングは「輪島塗法」で
輪島塗の塗装方法の特徴として何度も何度も薄く塗ることが挙げられる。この作業を繰り返すことで、輪島塗りの見事な風合いが生み出されているのだ。
イメージングの方法もこれとよく似ている。1回のイメージングは短時間でいいので、それを繰り返し、何度も何度も行うことが重要である。
その際のポイントとして、1回当たりの負荷はできるだけ少なくすること。イメージングに長時間を裂き、ものすごい労力を使うと、次にイメージングを行う時に心理的なプレッシャーとなり、面倒になってしまう。それでは本末転倒である。
「プチ・レビュー」こそ「See」の本質
私はひとつの仕事が終わったら、その流れの中で即「振り返り」を行うようにした。さらに、それに「細切れ時間の活用」という概念をプラスして、レビューを実践するようにした。
この「細切れ時間」を活用することで、さまざまな「振り返り」を効果的に行うことができる。それは、プレゼンテーションのような「ひとつのタスク」の振り返りだけでなく、1日や1週間のレビューでも同じである。
つまり、日常の中でハッと気がついたときに、手帳やノートを開いて、「振り返る」習慣を身につけることが重要なのである。
私は、この細切れ時間を活用した「振り返り」を「プチ・レビュー」と呼んでいる。この「プチ・レビュー」こそ「See」の本質であると考えている。
結論として、「See」とは自分の「時間の使い方」を見直して、もう一度同じような場面に遭遇したときに、より効果的・効率的に行うにはどうするべきかを明確にするための行動である。それを行うことで、時間管理における段取りの技術は飛躍的に向上するのだ。
ボトルネックを意識する
「ボトルネック」とは「びんの首」のこと。水の入ったびんを逆さにしても、びんの口がせばまっているために、水は少しずつしか出てこない。同じように高速道路の料金所で渋滞が発生するのは、道路に比べて出口がせばまっているからである。ここを通り抜ければ、車はスムーズに流れ出す。このように、一連の仕事で最も時間がかる仕事のことを指す。
仕事を進める上では、あらかじめこの「ボトルネック」となる作業を明らかにしたうえで、取りかかる必要がある。つまり、タイムマネジメント的な観点から見ると、「ボトルネック」をメインにスケジュールを組み立てることがポイントになる。
できる限り、プロセスを細分化する
私は、情報サイト「オールアバウト」の「営業・セールスの仕事」というコーナーでガイドをしている。
このサイトでガイドを務めるようになって早2年半が経つが、当初、原稿を仕上げる時間には、ムラが大きかった。しかも、はじめたばかりの頃は長時間かかるほうが圧倒的に多かった。
そこで、私はこの状況を改善するために、まず「1時間で必ず仕上げるようにしよう!」と決めた。
さらに、それだけに終わらず、「プロセスを細分化」するようにしたのだ。「テーマ決めに15分」「内容の項目出しに15分」「執筆に20分」「推敲に10分」と区切って、その時間に沿って原稿を仕上げるようにした。すると、以前は1時間をオーバーすることが普通だったのだが、このやり方で原稿を書いてみると、自分でも驚くほど事前に立てた予定通りに進めることができた。
(中略)
私は1年に150日以上のセミナー・講演を行っているが、その毎回の準備の際でも、ここに挙げた方法を応用している。要は、セミナーや講演の場面でかかる時間を見積もる際において、十分に「プロセスを細分化」してイメージングしているのだ。
たとえば「このパートは、『パワーポイント』4枚で、この内容だから18分の時間を要する」「次のパートは5枚だから22分かかる」というように、プロセスを非常に細かく刻んでいる。
そのため、本番のイメージをより明確にすることができるのだ。
私がセミナーや講演をほぼ時間通りに進められるのは、これを実践していることが大きいと考えている。
しっかりレビューする
仕事にかかる時間の見積もりをする上で、重要な2つ目のポイントは、「しっかりレビューする」ということ。それにより、時間の見積もりの勘所をつかんでいくのだ。
当然のことだが、実際に仕事を進めるとき、「イメージした時間ぴったり」に終わることはまずない。必ず時間の誤差は生じるはず。だが、毎回、一連の仕事が一段落した後は、それについて振り返り、「どの作業にどのくらいの時間がかかったか」を計ってみることが重要なのである。
また、繰り返し何度も同じ仕事をするときは、モチベーションが「高いとき」と「低いとき」を比べて、どのくらい時間の差があるかを、レビューすると非常に参考になる。
こうしたレビューを行いながら、実際に仕事に要した時間とその仕事に取りかかる前に見込んでいた時間の誤差はなぜ生じたのかを考えるようにしよう。それを繰り返していくうちに、だんだんとその「誤差」は縮まっていき、「見積もり」が正確になるはずだ。
また、「ストップウォッチ」や「キッチンタイマー」などの時間を測定するツールで、自分がする仕事の所要時間を計ってみるのも効果的だ。
私もこうしたツールを使って、仕事にかかる時間を測定することがある。このメリットとしては、何と言っても、時間が正確にわかるということ。それによって、仕事を終えた後のレビューもより明確に行うことができる。
さらに、もうひとつのメリットとして、ちょっとしたゲーム感覚が得られることが挙げられる。そのため、普段よりも高いモチベーションで仕事に取りかかることができ、結果的に仕事のスピードが上がることが少なくない。