毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

「物語」の傑作☆☆☆

ラン

ラン

最近ではほとんど読まない小説をめずらしく読んだ。理由は、タイトルに惹かれたランニングオタクの家族が借りてきたから、というただそれだけだったが、読んでみたらとてもいい作品だった。
作者の森絵都さんは2006年直木賞を受賞した実力のある人だが、私は今まで読んだことがなかった。経歴を見るともともと児童文学を書かれていたようだ。

この物語の世界は吉本ばななさん(当時)のデビュー作「キッチン」に似ている。主人公は家族を失ってひとりになってしまった20代の女性。亡くなった人にもう一度会うというところも「キッチン」に収録されている「ムーンライトシャドウ」という作品にこれまた似ている。
ただ、同じところからスタートしているのに当たり前だがまったく違う物語が展開する。これがものすごく面白い。少し極端なキャラクターの登場人物たちがいきいきと会話し、動き回るので400ページ以上あるのに一気に読んでしまった。しかも、感動のあまり涙すること数回。電車の中で読まなくてよかった。
この作品を「物語」と感じるのは、やはり作者が児童文学を書いてきたキャリアによるものだろう。ぐいぐい引き込まれて途中でやめられなくなる本を久しぶりに読んだ気がする。

最近実用書ばかり読んでいるな、という方、これでも昔は文学少女(少年)だった、という方、久しぶりに物語に浸ってみるのもいいですよ。
私自身はランニングに至っていないのだが、周りにハマっている人がいるとそれなりに情報は入ってくる。著者の森さんが実際に走る方かどうかは知らないが、用語解説からトレーニング方法まで、かなりきちんとしたことが書いてあると思う。作家なら当たり前なのかもしれないが、もしランニングが趣味なんじゃなければ、取材だけでここまで書けてしまうというのはすごいと思う。脱帽です。