毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

アウトプットが脳を鍛える☆☆☆

4569701930脳を活かす仕事術
茂木 健一郎
PHP研究所 2008-09-10
価格 ¥ 1,155

by G-Tools
「脳を活かす勉強法」の仕事版。今回もなるほど、という気づきの連続で楽しく読めた。著者は専門的なことをわかりやすく説明し、さらに日常レベルと結びつけるのがうまいのだと思う。司会をされているNHK「プロフェッショナル・仕事の流儀」出演者から聞いた話などもたくさん出てくるので飽きさせない。

この本で私が一番「なるほど!」と思ったのは、感覚系学習の回路=インプットと、運動系学習の回路=アウトプットは脳内で直接連携を取っておらず、よいアウトプットを生み出すには運動系を上手に鍛える必要がある、ということだ。感覚系学習はちょっとしたことで飛躍的に発達するのに対し、運動系学習は反復でしか鍛えることができない。つまり、実際にやることでしかアウトプットの精度は上げられないのだ。しかも、それが脳を鍛えることにもなる。
私は特に頭の中では理解もしているし、良し悪しの判断もできるのに実際にはうまくできないことが多い方だと思うので、この説明を読んでとてもスッキリした。仕事の効率化をテーマにした本などには、必ずと言っていいほど「アウトプットの必要性」が説かれているが、その根拠はここにあったのだ。

また、“意欲や意識を司る前頭葉を活性化させて、自分の「生命の輝き」を放つための5つの行動”というのが新鮮だった。

  1. クリエイティビティ(創造性)をもっていること
  2. セレンディピティ(偶然の幸福に出会う力)があること
  3. オプティミスト楽天家)であること
  4. ダイナミックレンジ(情報の受信範囲)が広いこと
  5. イノベーション(改革・革新)を忘れないこと

何と、少し前から繰り返し登場している「セレンディピティ」が5つに入っていたのだ。まさか脳科学者の本にセレンディピティが出てくるとは驚いた。この5つはまさに「いくつになっても柔軟で知的好奇心を失わない人」の共通項だと思うので、ふだんちょっと意識しておくだけでも生き方が変わってくるのではないだろうか。

非常に具体的で取り入れやすいものがたくさん紹介されているので、どんな人にもいくつかはヒントになると思う。ぜひ読んでみてください。

以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

脳の「感覚系学習の回路」と「運動系学習の回路」

「感覚系学習の回路」とは、見る・聞く・感じるなどを通した情報の入力を司る領域で、「運動系学習の回路」は、実際に手足を動かして情報を出力することを司る領域。問題は、このふたつが脳内で直接、連絡をとっていないところにある。感覚系と運動系にコミュニケーションを取ってもらうには、一度、頭の中の情報を出力しなければならない。「いいものがわかる」のに「実現できない」のは、この感覚系と運動系のバランスが悪いことが原因だったのだ。

「脳を活かす仕事術」の神髄は

喜びの中で「脳の出力と入力のサイクルを回す」ことにほかならない。好奇心を持ってさまざまな「いいもの」を見て感覚を鍛え、インプットした情報を運動系から、“作品”として外部に出力し、そして成長していくことが大切。

人が成長するきっかけは「背伸び」

そして、背伸びをするときに欠かせないのが「他人の目」。そういう意味では、ブログは究極の「背伸びマシン」と言える。

簡単な動作で無意識・集中力をコントロール

集中することは、無意識の行動のひとつ。人は自分の無意識を操ることはできない。しかし「無意識」は「運動系の回路」と非常に密接に関わりがあるため、身体を動かすことで間接的に無意識をコントロールし、集中力を高めるきっかけを作ることができる。
脳の身体を動かす回路と無意識を司っている回路は、実は太い結合で繋がれている。日常の中で最も多い運動は「ドアを開ける」「椅子に座る」「目の前のコーヒーカップを手に取り、飲む」など、無意識のうちに行う動作が圧倒的に多いからだ。子のため無意識をコントロールするには、身体を動かすことが一番よい。
こうした動作は単純であることが大切。複雑な行動を取ろうとすると、脳のセットアップを切り換える必要があるため。ただし注意しなければならないのは、「思考を止めないこと」。思考を止めて動作をすると、やはり前頭葉のセットアップが崩れてしまうため。

すきま時間には、身体に任せて集中力を発揮し、ある程度の時間があるにもかかわらず集中がとぎれそうになった時には、無意識にできる動作で集中力を喚起する。

創造性(クリエイティビティ)の必要性

創造性は「周囲が自分に求めること」と「自分がやりたいこと」とのギャップを埋めるために必要である。「社会の需要を満たしつつ、自分の欲求も満足させるためにはどうすればいいか」が大切になる。つまり、自分と社会の関係性を新たに「創造」しなければならないのだ。

ひらめきを得るために

インスピレーションを得るためには、日頃から「準備」をしておくことが大切。そのひとつが「思考のリフティング」を続けることだ。
思考のリフティングとは、すなわち「ふだんからどれだけ勉強しているか」、そして「どれだけ自分の頭で考えているか」といった、日々の基本的な努力のことだ。これはスポーツ選手がやるトレーニングとまったく同じ。
サッカーでいえば、ボールコントロールの感覚を養うために、日頃からリフティングという練習をする。日頃からこうした基礎トレーニングをしていないと、いざ試合に出ても活躍できない。

無意識を膨らませる

たとえば原稿を書く時は、常に、無意識の中に浮かぶ氷山の頭だけを探す。この氷山の頭さえつかむことができれば、あとは書き始めてしまうことによって、それに付随した無意識の塊がわぁーっとやってきて、その力に乗って書きききってしまうことができる。
講演会も同じ。あるテーマで話をしてほしいと言われた時に、そのテーマと、自分の中で折に触れて練り込んでいるテーマとを、どう結びつけたらいいかということを考えてみる。これが氷山の頭を探すという行為。
それをつかむことができたら、あとは、テーマに沿って無意識の塊から湧き上がってくるものを組み立てればいいと考えることができる。

出会いを活かすためのふたつの要素

出会いを活かすためにふたつの要素が欠かせないと考えている。ひとつは偶然の幸運に出会う力「セレンディピティ」。もうひとつは、巡り合った偶然をつかみ取るために必要な力「コミットメント」だ。

コミットメントとは

自我の意識すらなく、目の前の仕事に没頭する。これが仕事と自分を一体化させる「コミットメント」という感覚だ。これはいわゆる「忘我の境地」で、こういう状態の時こそ、人間の脳はフル回転しているのだ。

ネガティブな感情に名前をつけ、無意識を意識化する

人間の恐怖の源泉は、多くの場合、「どうなるかわからない」という不確実性だ。行動に移すためには、その不確かなことを確実なことに変換すればよい。恐怖から目をそらさず、見つめることをおすすめする。
具体的には「最悪の事態をできるだけ詳細に想定する」ということだ。そこで対処法まで考えておけば、その時点で脳の中では確固としたものになる。
ここで大切なのは、シミュレーションした内容を家族や友人に話してみたり、文字として書いてみること。精神分析の分野でもよく使われるが、これを「無意識を意識化する」という。最も手っ取り早いのは、言葉を与えられていない感情や出来事に名前をつけることだ。
言葉になっていない情報や意識化できていない感情には、人間の脳を非常に不安定にするという特性がある。逆にいうと、こうした情報・感情に名前をつけてラベルを貼ると、脳はその情報をひとかたまりのものとして扱えるようになる。それによって、脳や感情が安定を取り戻すことは意外に多い。

クオリアの問題は、

僕の中ではそれが一番価値のあることだと信じているからやっているだけで、それが脳科学なのか哲学なのか、それとも他の何なのかは、僕にとってはまるで問題ではない。

真のプロフェッショナルは、

その専門性を追求し続ける一方で、総合的な人間力も兼ね備えていた。核となる部分はしっかりと持ち、それ以外の部分は柔軟に、かつ、自分の価値観はしっかりと反映させるという姿勢だ。これがつまり、ダイナミックレンジが広いということ。

総合力を強化するには

まず、「雑種性」「雑菌性」を身につけると言うこと。
これは、さまざまな文化や未知の世界に触れて経験することで、身について行く。ひとつのカルチャーしか知らない人は弱い。たとえば、自分が所属している組織の文化しか知らない人というのでは、どうも頼りなく、細い。

行動範囲を広げるには

まず自分の中にある制御装置、リミッターを解除しなければならない。それが「脱抑制」だ。抑制をはずして、自分自身を「本気」にさせること。命を生き生きと輝かせる仕事術のひとつだ。
脳を本気にさせるためには、リアル(現実)に触れることが大切。なぜなら人間の脳には「リアルに触れると本気になる」という特性があるからだ。

時々アウェー戦をやると脳は鍛えられる

自分の得意分野、あるいは専門として豊富な経験がある領域の仕事は「ホーム」。一方、自分の苦手な分野、あまり経験を積んでいない領域における仕事は「アウェー」。もちろん、ホームでの闘いに確実に実績を上げることは大切だが、その一方で、アウェーでの闘いを重ねることで、自分の幅を広げ、さらなる成長を望むことができる。
脳は苦しみを乗り越えられた時に、つまりアウェー戦を闘い終えた時に喜びを感じ、その時、脳の中では大量のドーパミンが放出されている。そうすると、その前に取っていた行動(=アウェーでの仕事)が強化されるというわけだ。

「なりたい自分」になる唯一の方法

人間としてのより高い状態を目指すこと。そのために学習し続け、行動し続ける。それこそが「なりたい自分」になる唯一の方法なのだ。そして、「なりたい自分」になった時、「感覚系学習」で思い描いていた憧れ、夢が、「運動系学習」によるアウトプットを通して、生命力が輝く理想の仕事として結実するのだ。