はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 田口 元 二見書房 2008-12-24 価格 ¥ 1,680 by G-Tools |
ユニークな海外のウェブサイトを毎日1件ずつ紹介する「百式」の管理人で、ご自身もGTDを続けられている田口元さんの新訳によるGTD入門本。
調べてみたら、以前の本を読んだのは約2年前だった。残念ながら私の場合、しばらくはやってみたものの継続できなかった。システムの維持に何か問題があったのだと思う。2年ぶりに読んでみて、忘れていたことがたくさんあることに気づいた。
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GTDというのは、ToDoを効率よくこなすための手法という風に理解をしている人が(私を含め)多いと思うが、実はもっと大きく包括的なものだ。GTDの手法のいくつかはすでにやっている人もたくさんいるだろう。しかし大切なのは、「人生のすべてをこのシステムで管理する」ことだ。“一部は管理できているが、できていないものもある”という状態ではそれは成功とは言えない。なぜなら、このシステムのポイントは「頭をカラッポにする」ことにあるからだ。
“自分はすべてを把握していて、いつでも必要な行動が取れる”と安心できる状態がストレスフリーなのだ。何かひとつでも「忘れているのでは」とか「あれはどうなってたっけ?」というひっかかりがあれば、脳や心は常に緊張状態を強いられることになる。
そして、このシステムで最も大切なのは「次に取るべき行動は何か」まで考えておく習慣をつけること。リストに書くのは「タイヤの交換」ではなく、タイヤを交換するためにまず必要な行動「ショップに電話して値段を聞く」や「いい店を友人に電話して教えてもらう」なのだ。そこまでやっておいて初めて、時間ができた時にすぐ行動に移せる。
なので、この方法が自然に使えるようになれば、非常にスッキリした気持ちで生産性の高い毎日が送れるようになるはずだ。ただ、新しい方法を取り入れるというよりは、「生き方を変える」に近いので、習慣化されるまで時間もかかるし、維持するにはそれなりの覚悟が必要かもしれない、と今回読んで思った。
とはいえ、この方法は考え方であり、ファイリングや分類の方法に決まりはない*1。自分が使いやすい道具を使い、仕事ややり方に合った方法が使えるので汎用的である。
やらなきゃいけないことはたくさんあるのに、それと向き合うのがおっくう、または怖いという人には最適の方法だと思う。私も再挑戦してみたくなった。
原書が分厚い本なので、細かい文字でびっしり書いてあり、ふだん余白の多い本に慣れているとちょっととっつきにくいかもしれない。ただ、訳者の田口さんはご自身が実践者なので、説明は非常にわかりやすい。前の本が読みにくくて意味がわからないので原書を買ったが、はじめからこの本を読んでいたら原書は必要なかったと思う。
とにかくやってみよう、という方は第2部・第4〜8章をまず読んでみるのがお勧め。第1部は「GTDの基本」となっているが、GTDの考え方だけではなく、理論的な話や一見関係のなさそうな話も出てくるので、あとで読んだり、面白いと思うところだけ拾い読みするというのでいいと思う*2。
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読書日記:「仕事を成し遂げる技術」
※旧バージョンです
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
私がこれまで見てきたToDoリストの多くは、
やるべきことを単に羅列しただけで、実際に必要な作業を書いたものにはなっていない。それは、さまざまな未解決事項の部分的な覚え書きでしかなく、求めるべき結果や次の具体的な行動への変換作業ができていないのである。本来は、それを見れば行動すべきことがパッとわかるレベルにまでかみ砕いておくべきなのだ。
GTD実践のための5つのステップ
- 「気になること」すべてを1箇所に「収集」する
- それぞれの意味と何をすべきかを明らかにする「処理」を行う
- その「処理」の結果を「整理」する
- それらの行動の選択肢を「レビュー」する
- 選んだ行動を「実行」する
ナチュラル・プランニングモデル
脳の働きは一見複雑だが、実際は次の5つのステップで構成されている。
- 目的と価値観を見極める
- 結果をイメージする
- ブレインストーミングをする
- 思考を整理する
- 次に取るべき行動を判断する
例)夕食の計画
- 夕食を食べに行こう。友人のお祝い→ちょっといいレストランにしよう
- あのイタリアンレストランはどうだろう。窓際の席がいい
- 何時にしようか。店は開いているだろうか。天気はどうかな。服装はどうしよう。
- 浮かんだアイデアを整理する。目的を達成するのに必要な要素、どういう優先順位を考慮すべきか、どういう順序で行うべきかなど
- まず店に電話して予約をしよう。
inboxの整理――一度に1件が原則
inboxを処理していると、手に取ったものの「処理」で迷っているうちに、奥にあるものが目に入って先にやってしまいたくなることがある。たとえば、それについて取るべき行動がはっきりしていて、一瞬で処理できるものを見つけた場合などだ。しかし、これには気をつけないと行けない。「処理」の簡単なものや重要そうなものを優先させてしまうと、先に手にしたものをデスクの横に置いてしまいたくなるからだ。
判断基準
「処理」をしていると、これは取っておくべきか迷うものも出てくる。これらについては、次のいずれかの方針を決めておくとよい。
- 迷った時は捨てる
- 迷った時は取っておく
どちらでもかまわない。いずれの方針を選んでもうまく行くはずだ。家やオフィスのスペースを考慮しつつ、直感で判断すればいい。それまでのシステムが不完全だったせいで迷ってしまう人は多いが、行動が必要なものとそうでないものの区別ができて、整理システムがきちんと機能していれば、モノはいくらでも保管しておける。あとは物理的なスペースと出し入れの問題だ。
行動ステップは、次に取るべき物理的な行動でなければならない
目に見える物理的な行動、というところがポイントだ。今やらなくてもいつかは決めなくてはならないし、そもそも私たちがここでやろうとしているのは、それらについて考えずに済むようになることなのだ。次に取るべき物理的な行動を決めておかないと、そのことが意識にのぼってくるたびにもやもやした気持ちになり、ますます行動から遠ざかってしまう。
すべての行動についての分析が済んでいれば、やるべきことがわかっているので、電話やパソコンの前に来た時にもすみやかに行動に移すことができる。
行動のリマインダーの基本カテゴリー
- @電話
- @パソコン
- @買い物・雑用
- @会社
- @自宅
- @協議事項(人または会議)
- @読む/評価
続けられない人の共通点
途中でやめてしまう人の多くは、「次に取るべき行動」のリストが、単なる以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。のリストに逆戻りしてしまっているということだ。これらの人はリストに書き出している点では何もしない人よりましなものの、行動リストに次のような項目が混じっているせいでプロジェクトが停滞していたり、放置されていたりしている。
「食事会の運営委員会」
「ジョニーの誕生日」
「受付係」
「プレゼン」
これらはそれぞれの項目が行動レベルから、“気になること”に逆戻りしてしまっていて、「次に取るべき行動」がわからなくなってしまっている。リストがこんな感じになっている人は、眺めるたびに脳に負荷がかかってしまう。