イチローの脳を科学する―なぜ彼だけがあれほど打てるのか (幻冬舎新書) 西野 仁雄 幻冬舎 2008-03 価格 ¥ 756 by G-Tools |
本書は、イチロー選手の活躍を可能にし、また野球に取り組む彼の姿勢を制御している脳の働きについて、脳生理学的な立場から考察します。(「はじめに」より)
文中にも何度か出てくるが、著者は「心の持ち方とそれに基づく行動で、脳を創り変えていくことは可能だ」という考え方を持っており、イチローの活躍を分析することで、それを検証した本と言える。
イチローが幼少時代に元高校球児の父親からスパルタ教育を受けたことから、バッターボックスで必ず行う一連の動作まで、すべて脳科学的に意味のあることだと書かれている。イチローの父・宣之さんやイチロー自身がそれを知って行っているとは思えないが、結果的に脳の働きを味方につけた成功とも言えるのが面白い。そのあたりの解明は非常に細かく、綿密に行われているので、なるほどな、と納得した。
脳科学をベースにした本としては、とてもわかりやすいと感じた。私は専門の勉強のためにいろいろ医学系の本を読んだので、ごく一般的な知識を持った人が同じように思うかはわからないが、もともとこの本のベースは「出前授業」という、小中高校生に大学の研究内容をわかりやすく伝える課外授業にあるため、非常にわかりやすくなっている。直接イチローとは関係ないが、授業では釈然としなかったことが、3つもこの本を読んでスッキリ理解できたのは収穫だった。やや医学的な内容が好きな人の方が面白く読めるかもしれない。
脳科学はさておき、この本で得たことは
- 「鉄は熱いうちに打て」ではないが、鍛えるのによいタイミングを逃さないことが大切。
- イチローはただの天才ではなく、努力する天才なのだということ。
- やはり脳と心は別のものではなく、密接な関係がある。だからこそ、心の持ち方で脳を創り変えられる。
の3つ。
イチローがただの高慢な天才バッターだと思っている人にこそぜひ読んでもらいたい本。むずかしい脳の仕組みはとばして読んでも充分面白く読めます。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
イチローのすごさとは
- 自分の目標をしっかりと設定していること
- その目標の達成に向けて、日々、人一倍、努力し、準備していること
ニューヨークタイムズのイチロー評
イチローは、パワーが全盛の米野球界で独特のスタイルで安打を放ち続けている。独自のスタイルをしっかりと持つことによって、大きな成功を手に入れることができるということを、イチローは私たちに教えてくれている
思わぬことを成し遂げる脳の力
私たちの脳はすごい容量で、それこそ膨大な情報を蓄えている。意識し、焦点を当てて見ているものはほんの一部であって、その背後にはふだんは意識に上ってこない情報がぎっしりと詰まっているのだ。
この無意識に支えられている情報量が多いか否かが、いわゆるプロかアマチュアか、名人か名人でないかの違いとなるのではないだろうか。
自分のスタイルを追求しよう
脳は、私たちひとりひとりが持っているたった1300g強の臓器だが、
*1:生理学は生体の機能とそのメカニズムを解明する学問だそうです。生理学研究所・NIPSサイトより