<新装版>敵は我に在り 上巻 (ワニ文庫) 野村 克也 KKベストセラーズ 2008-02-20 価格 ¥ 710 by G-Tools |
下巻を先に読んだせいかもしれないが、この本はもともと2年ほどあとに書かれたものなので、「上下」というくくりで扱うのがいいのか疑問に感じた。
というのも、かなりのエピソードが重複しているからだ。野村監督ご本人の話ならともかく、王選手(当時)の打法をそっくり真似したある選手の話や、南海にトレードで移籍してきたピッチャーの起用法の話など、内容もほとんど同じものが多い。2年という時間の経過により、上巻は「捕手、現役の目」であり下巻は「解説者の目」という視点の違いは感じるが、よほど野球が好きか楽天のファンでもなければ、どちらか読めば充分なのではと思う。
個人的には、下巻の方が内容が熟成しているように思ったので下巻がおすすめ*1。
もちろん内容がつまらないわけではなく、リーダーとしての心構えを知りたければより上巻にヒントがある。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
評論家・草柳大蔵氏のことば
草柳さんはおよそ「過去」の話を聞いてくれない人で、ある時「人間それぞれ過去を持っている。みんなが“過去”を口にしだしたらきりがないじゃないか。だから、今日をどう生きるか、それを聞かせてほしいんだ」と強い目をして言われたことがある。
選ぶ=捨てる
意識するか、しないかにかかわらず、何かを選んでいる。「選ぶ」ということは、同時に他の何かを「捨てる」ことでもある。
(中略)
加藤秀俊氏が書いた『整理学』という本に、次のような一節がある。
「捨てるというコトバからゴミ箱のようなものを連想されては困る。われわれが1冊の本を本屋の店頭で買い求めるということは、それ以外の数千、数万冊の本を捨てたということにほかならない」
自分を愛する
「うまくなろう」とするのは、自分をどれだけ愛しているかということではないか。その本質は「大切にすること」だと思う。
自分を愛するということは、自分を大切にすることだろう。人のことはどうでもいいというわけではなく、自分を安っぽく取り扱わないことだ。
「僕はとても、できませんよ」というのは、自分で自分を低く評価していることなのだ。つまり、安っぽく取り扱っている。自分を愛し大切にするということは、自分の中身をよくし内容を高めていくことなのだ。そのためには、人一倍の努力が要求される。練習し、人の意見をよく聞かねばならない。深く考え、精進する姿勢がなければ渇望する心は癒されないと思う。
人間には“弱い人”しかいない
「人間には“善人”と“悪人”がいるのではなく、“弱い人”しかいない」というのは本当だと思う。その“弱さ”からはい上がれるかどうかは、自分自身の問題だ。