伊丹の書店「ブックランドフレンズ」さん主宰の喜多川泰さん講演会に参加してきた。会費わずか千円。いいんですかこんなお値段で、と思ってしまうくらい喜多川さんの話は濃く、感動的で、しかも面白かった。
4月に聞いた(ある会のクローズドな)講演会では、対談形式だったせいか淡々と話されていた印象だったので、そういう人なのだと勝手に思っていた。こんなに熱く、しかも笑いを取るようなお話をされる方とは思わず驚いたが、どんどん話に引き込まれた。
よく考えれば、なかなか話を聞かない高校生相手の塾を経営し、しかも勉強は教えずに話をしている人なので、夢中にさせる話術はお手のものだったのかもしれない。
今回のテーマは著書『「福」に憑かれた男』にちなんだ「福の神養成1日講座」。あなたもこれで福の神になれる、という話だったのだが、それは「ものに命を吹き込むこと」。かけがえのないもの、他にはないものにするという意味で、そのたとえ話が秀逸だった。
中学時代、運動部に所属しているあなたはランニングを終えてゼーゼー肩で息をしている。ここでふと顔を上げると、いつも気になっている「あの子」が飲みもののペットボトルを投げてくれる*1。「あの子」が走って去ってしまったあと、あなたはそれが飲めますか?と喜多川さんは聞いた。「僕は飲めません。持って帰ってとりあえず机の上に飾っていつ飲もうか考える」と言われていた。「あの子」が投げてくれたその飲みものは、コンビニや自動販売機で売っているそれともう同じものではなくなっている。同じ商品だとしても、交換したくない。――それが、“ものに福の神が宿る”ということだ、と説明されていた。
ものを売る仕事でも、どんな思いを込めて売るかで変わってくる。それができる人は、いつの時代でもどんなに不況でも困ることはない、とも言われていた。
他にもたくさんの素晴らしい話があり、ずっとメモを取り続けていたのだが、一番私の心に残ったのはこの話だった。
そして、ものを売る人の気持ちで商品は変わる、自分はそういうお店でしか買いたくない、と話され、喜多川さんはこの辺だったら今日の講演会を主催してくれたブックランドフレンズでしか本は買いません、とまで断言されていた。
同じ商品ならどこでどうやっても同じもの、と今まで何となく考えていたが、自分の考え方ひとつでたくさんの魅力をつけたり、価値を上げたりすることもできるのだ。大切なことを教えてもらったと思う。
今回の講演会を聞いて、ますます喜多川さんのファンになった。それほど講演の機会は多くないかもしれないが、チャンスがあればぜひ!聞きに行ってみてください。あんなにたくさんの人がいたのに、1冊1冊ていねいにサインをし、その後の懇親会*2でもさまざまな質問にていねいに答えてくれたそうです。書いている本の内容と、ご本人がここまでびったり合っている方も少ないと思う。