世界一の庭師の仕事術 ―路上花屋から世界ナンバーワンへ 石原和幸 WAVE出版 2009-03-23 価格 ¥ 1,470 by G-Tools |
著者の石原さんはとにかく熱い。熱すぎる。「やりたいことがはっきりしていれば、半分は成功したも同じ」とよく言うが、それを地で行っている人だ。
花に関わる仕事がしたい、と就職先を辞めてお給料は要りませんから、と押しかけで修行をはじめ、独立してたった1畳のスペースで花屋をスタート。その後も数々の試練をアイデアと熱意でクリアしていく。そのアイデアがすごい。
たとえば、著者の店は長崎なのに、地元の花市場に入れず、出入りを許されたのは福岡県南部にある市場。往復7時間をかけて仕入れに通ったという。しかし、著者はそのハンデを逆手に取って商売をする。軽トラに山積みした花を、あちこちに寄って売りながら長崎に戻る。店に着いた時には花は半分になっていたそうだ。
そんな風に情熱を傾けて取り組んでいた仕事が、やがて大きくなるにつれて目的を見失う。フランチャイズシステムをやらないか、という大手商社の誘いに乗って東京進出を果たすが、全国にある花屋を今までの支店のように回って指導することもできず、あっという間に借金を抱えて地元に戻ることになる。
しかし、そのせっぱ詰まった状況で著者は昔の情熱を取り戻すのだ。借金を返すために必死で働き、たまたまお客さんの依頼で引き受けた庭を作る仕事がウェイトを占めるようになる。そして、その頃著者はイギリスで開かれる権威あるフラワーショーのひとつ「チェルシー・フラワーショー」を知る。
何としてもそれに出たい、と思った著者は借金があるのに必要な資金をかき集め、店を3ヶ月も休み、英語も話せないのにフラワーショーに出展する。初めての年は銀メダル、そしてその後3年続けて違うジャンルのガーデン部門で金メダルを取ったのだ。「世界一の庭師」という称号はここから来ている。
面白いのは、金メダルを3年連続で取ったあとも、大きな庭から数万円の小さな庭まで請け負っていることだ。ヨーロッパで権威あるフラワーショーに出られるガーデナーはセレブであり、何億単位の大きなプロジェクトしか手がけない。しかし、著者は「お客さんの喜ぶ顔が見たい」というのが情熱の原点だ、と気づいたので頼まれたらどんなに小さな庭でも引き受けるそうだ。
紆余曲折がたくさんある人生だと思うが、これだけはっきりと自分に合うやり方、目指す方向がわかっているのは幸せだ。
ここまで情熱的に仕事に取り組める人は少ないと思う。しかし、「だから自分はダメだ」とか「こんなことができるのは一握りの特別な人だけだ」と思わず、自分がのめり込めるものは何なのか、何があれば仕事に情熱を注げるのか、自分に問いかけてみるきっかけにすればいい。
「好き」という気持ちの大切さを強く感じる1冊だ。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
夢を語れば実現する
夢は、人に語った方がいいのです。いや、語らなければダメなのです。人に言うことによって自分にプレッシャーがかけられる。それがいいのです。
途中で「言ってもダメだった」とやめることなく、実現するまで言い続ける。実現しないなら死ぬまで言い続ける。
そうすれば、嘘にはなりません。「ああ、この人は本当にやりたかったんだな」とみんなから思われて、人生を終えることができます。
ギリギリまであきらめない
仕事をしていく中で、「やったことがない」「状況が整っていない」という事態になった時、多くの人はあきらめてしまいます。でも僕は思うのです。自分の中で勝負をしてみろと。
「必ず自分で満足だと思える仕事をするんだ」と毎日思ってやっていれば、絶対に腕は磨かれていきます。「まあ、こんなもんか」と手を打ってはいけないのです。
あきらめるのか、あきらめないのか。その積み重ねで変わってくるのだと、僕は思います。