毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

数字のからくりを検証する☆☆☆

 

 

どっぷり文系で数字が苦手な私が経済学の本を読むなんて、と自分でも驚いたが、この本は理系でなくても、数字が苦手でも読める。それもかなり面白く。

この本を読もうと思ったきっかけはメルマガ「ビジネスブックマラソン」。紹介されていたのは続編『世界は感情で動く』だったのだが、面白そうだけど先に1冊目を読んだ方がいいと思い、まずこちらを読んでみた。

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「経済学」という学問に、感情はまったく関わりがないとされる。しかし、本当にそれで正しい数値や予測が得られるのか?そういう疑問に答えるのが「行動経済学」という新しい分野だ。経済=お金は人が使うものであり(企業や組織であっても判断するのは人間)、そこには必ず感情がつきまとう。つまり、心理的なことが大きく関わるのだ。それがどういうしくみなのか、ひとつひとつていねいに教えてくれる。また、次々に出される質問(問題)を解くことで、心理的バイアスがどうかかるのか、どこで判断を誤るのかがよくわかる。質問は数字を使うといっても算数程度、それより心理的な面を問われることが多い。

読み進むうちに、「これは脳も関係しているな」ということがわかってきた。たとえば、「2者択一ならどちらを買うか簡単に判断できるのに、選択肢が増えるほど迷いも増え、結局直感で決めてしまう確率が増える」ということも、複雑さを嫌うという脳の性質から説明できる。じっくり考えればわかることなのについ反射的に決めてしまうところなど、伊東乾さんの本『「笑う脳」の秘密!』に出てくる「ウサギ・メッセンジャーとカメ・メッセンジャー」で考えればすんなり理解できた。

また、同じことを説明するのにどういう数字を使えば消費者にアピールできるのか(たとえば、乳脂肪分5%のヨーグルトと無脂肪分95%のヨーグルトなど)、そこには意識的な操作がよくあるのだという。治療法や新薬の説明などで死亡率○%と書くのと、5年後の生存率○%と書くのではどちらがいいと人は判断するか。また、「50%アップ」という表現は、実数に直せばそれは何人が治療・新薬の恩恵を受けられるのか。このあたりは近藤誠医師の『成人病の真実』にも書かれていたので、改めて数字は意識して読まないと引っかかるな、と思った。

著者はこのように数字を見る時にはそれが絶対評価なのか、相対評価なのか、またパーセンテージで表されているものは実際にはいくつになるのか、自分で直してみることをすすめている。そうすることで数字の罠にはまるのを防げる。


この本はイタリア人の著者が書いたものなのだが、翻訳は大胆に手を入れているようで、質問の金額も円表示だし、日本人にイメージしやすい内容になっていたり、経済の素人でも読めるよう用語専門の説明も随所にある。原書の内容をきっちり知りたい人には違うと思うが、経済初心者にはかなり読みやすくなっていると思う*1

「数字に弱い」と思っている人こそ読んでほしい本。読んで数字の罠を避けられるようになってください。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

選択には感性も必要

しかし私たちの中に住むちっぽけな分身は、選択の邪魔ばかりしているわけでもない。実は適切な選択をするためには、するべきことを「知っている」以上に、身体がそれを「キャッチし」なければならないからだ。合理性という機械がうまく機能するには、それを応援する少しの感性という、特殊な助っ人がいるということだ。

後悔したくないから?

要するにいろんなケースで、後悔したくないから決心を後まわしにし、自信がないから縮こまって、現状を変えることができても変えようとしない。選択しないでいることもそれなりの選択であることには気がつかない。

恐怖を利用する

リスクについての情報を感情的にあるいは自分に都合のいいように判断すること、ふだんから持っている考え方、家計の状況などは、私たちの感情的反応を左右して、合理的判断を遠のけてしまいやすい。リスクにまつわる感情のうち、もっとも抵抗しがたいのは恐怖である。狂牛病鳥インフルエンザ、核エネルギー、大量殺戮兵器、コレステロール……。こういうものへの恐怖を利用することは、説得のための実に有効な手段になり、時には、個人の自由を集団の名によって抑圧したり、公益に反する方向に導いたりすることもある。

*1:たとえの多くがサッカーになっているのはそのままですが