(マイコミ新書)
著者は水産学部を卒業後、バイオ系企業の研究所に就職。マグロの鮮度保持剤の開発を任されたが、なかなか成果が上がらないことに業を煮やした上司の「マグロ船に乗ってこい」という命令でいきなり40日以上も漁師とともに生活したという信じられない経歴の持ち主だ。持病*1もあるのにむちゃくちゃだ、と思うが、とにかく実際に乗ってみた体験記だ。
しかし、マグロ船と聞いてイメージする世界と実際は違っていた。もちろん、船は揺れるし、1日17時間もの労働を漁師たちはこなし、話し方も荒っぽいが、そこにはびっくりするような学びがたくさんあったのだという。
特に親方*2の言葉は深く、心に染み込むようだった。なぜマグロ船に乗っている人の言葉が地上で生活する私たちの心に響くのか不思議だったが、それは自然を相手にする仕事だからだと読み進むうちにわかってきた。
マグロが捕れるのも捕れないのも、海が荒れるのも凪ぐのも、すべては海しだい。人間がコントロールできるものではない。そういう達観が根底にあるのだ。自分たちができる精一杯のことはする、それでダメだったらもうしょうがない。何とかしようとじたばたしない。つい自分で何とかしようと思いがちな私たちにはない視点で新鮮だった。
さらに、40日もそれほど大きくない船でずっと寝食を共にするため、実は人間関係の築き方にとても細やかな心遣いをしているのだそうだ。叱る時はきちんと理由を説明して叱るし、愛情があるから叱っているとわかる表現をしたり、あいづちの打ち方ひとつで会話や人間関係まで変わるという教えなど、発見がたくさんあった。どれも長年のキャリアから生まれたものなので説得力がある。
実際、マグロ船に乗った経験で著者の人生は大きく変わった。船を下りたあと鮮度保持剤を完成させたが、その数年後に会社を辞め、現在は会議の運営を円滑にするコンサルタントとして独立したのだそうだ。そこには、マグロ船の「ストレスを溜めないコミュニケーション法」が大きく役立っている。
著者の言葉はとても淡々としているが、冷静な洞察力と素直な心があったからこそこれだけの学びを受け取れたのだと思う。私たちはマグロ船に乗らずにこれらの学びを受け取れるのだから本当にありがたい。
仕事や職場での人間関係に行き詰まっている人、悩んでいる人にはぜひ読んでほしい1冊です。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
(あとで書きます)
