興味を持ったきっかけは、ユニクロの柳井正さんがNHKの『仕事学のすすめ』で愛読書はドラッカー、とずらりと並べていたのを見たからだ。いったいどんなことが書いてあるのだろう、と初めて読んでみたくなった。
この本はドラッカーの遺作にあたり、共著という形式になっているが、大学の同僚であるマチャレロ教授が編集、コメント執筆をしたものだ。たくさんの著書の中からダイジェストされた95の智慧をコンパクトにまとめてあり、私のような初めてドラッカーを読む人にも入りやすいと思う。
この本では、成果を上げるための5つの習慣が紹介されている。
- 時間をマネジメントする。
- 貢献に焦点を合わせる。
- 強みを生かす。
- 重要なことに集中する。
- 効果的な意志決定を行う。
この本もこの流れに沿って編集されている。ひとつひとつの項目ごとに、「とるべき行動」と「身につけるべき姿勢」が書かれており、取り組みやすい。
私は個人で仕事をしているため、組織や会議、人事、上司などの部分はさっとしか読んでいないが、組織で働く人には魅力的なヒントがたくさんあると思う。たとえば、「上司をいかにマネジメントするか」。この発想はなかなかないだろう。また、いかに成果を出して組織に貢献するか、というテーマは「貢献」という言葉のイメージとは少し違う成果の上げ方が述べられている。
すべてではなくても、自分にとって苦手な分野をいくつか取り組むだけでも大きな成果が得られるのではないだろうか。
実用的というよりは、まるで箴言のようなので、そこからどう実際の仕事に生かすか、少し工夫はいるかもしれない。だが、これを知っていればどんな時も冷静に結果が出せる人になれるに違いない。すべての職業人必読の本です。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
まず「何がなされるべきか」
何をなしたいかではなく、何がなされるべきかから考えなければならない。しかる後に、何が自らの強みに合うかを考えなければならない。強みでないものを行ってはならない。他の者に任せなければならない。
なすべき貢献は何か
とくに知識労働者たる者は、なすべき貢献は何かを自らに問わなければならない。この問いに答えるには3つの視点が必要となる。第1に、状況は何を求めているか。第2に、自らの強み、仕事の仕方、価値観からして自らのなすべき最大の貢献は何か。第3に、いかなる成果が必要かである。
ヒポクラテスの誓い
知りながら害をなすな、である。プロたる者は、知りながら害をなすことはないと信じられなければならない。
成功するには
多くの領域で卓越することはできない。しかし成功するには、多くの領域で並以上でなければならない。いくつかの領域で有能でなければならない。ひとつの領域で卓越しなければならない。
自らのマネジメント手順
- 自らの強みを明らかにする。
- 自らの仕事の仕方を明らかにする。
- 自らが価値ありとするものを明らかにする。
- 仕事上の人との関係に責任を持つ。
- 第2の人生の可能性を増大させる。
自らの仕事の仕方を知る
成人する頃には、誰でも朝と夜のどちらが仕事をしやすいかを知っている。チームの一員としてかひとりでか、どちらの方がよい仕事ができるかを知っている。
ある人は読む人であり、ある人は聞く人である。
生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義
仕事上の関係において成果がなければ、温かな会話や感情も無意味である。
常に最も重要なことを最初に行う癖をつける。
新しいことを始める時は、必ず何かを捨てる。
何がなされるべきかについては、3つ以上のことを考えてはならない。
できるのは同時に1つか2つである。1つよりも2つの方がよいかもしれない。単調にならずにすむ。その2つを片付けたら、次の2つを考える。前回第3位の候補だったものを自動的に繰り上げてはならない。その時には、もう古くなっている。
必要条件を明らかにする
決定が満たすべき必要条件を明確にしなければならない。意志決定においては、決定の目的は何か、達成すべき目標は何か、満足させるべき必要条件は何かを明らかにしなければならない。
何がなされるべきかを考える
第一に身につけるべき習慣は、なされるべきことを考えることである。何をなしたいかではないことに留意していただきたい。なされるべきことを考えるのが成功の秘訣である。これを考えることなくしては、いかに有能であっても成果を上げることはできない。
行動を組み込む
意志決定を行動に変えなければならない。決定において最も困難な部分が必要条件を検討する段階であるのに対し、最も時間のかかる部分は、成果を上げるべく決定を行動に移す段階である。決定を行動に移すことを最初の段階から組み込んでおかなければ、成果は上がらない。