著者の平野敦士カールさんは、日本興業銀行からNTTドコモに転職、おサイフケータイを開発した「ミスターおサイフケータイ」と呼ばれる人だ。転職→ベンチャー→会社設立→大学で教鞭という異色の経歴の持ち主が、自分の経験を活かして“今の世の中でやりたいことをやる方法”を教えてくれる本なので、非常に説得力があった。
「大企業に入れば一生安泰」の時代は終わったと言われながらも、やはり大企業志向は根強かった。しかし、昨年のリーマンショックから、いよいよ“転職も含めたキャリア形成”を考える時代になったのだ、とこの本を読んで思った。
この本の対象は、今はビジネスパーソンとして働いているが、将来は自分らしく生きていきたい、と考えている若手の人だ。私にとっては復習のつもりで読む部分が多かったが、とても具体的なので新たな発見もたくさんあった。当たり前のように書いてあるが、実際にはまだまだできてないな、と反省しながら読んだ。
アライアンスというのは本来、「同盟」とか「連合」という意味だ。ここでは「周囲の人から長期的な信頼を獲得し、その人たちの力を借りて成長していく」ことだ。つまり、全部自分でやろうとしないことが新しいのだ。自分ひとりの力では限界があるので、周りに助けられる人になることが必要になる。
さらに、「寄り道がキャリア形成につながる」という考え方も新鮮だ。一直線にやりたいことに進むのが必ずしも成功とは限らないという。たとえば、著者は銀行と携帯電話会社、という一見まったく関係のない業種に転職しながら、それを結びつけた新しいサービスを生み出している。つまり、両方の業界を経験したことが強みになったのだ。
このように、あらかじめ「自分は将来どうなりたいのか」を明確にし、戦略的に考えて必要な実務経験を積んだり、弱い部分を補ってキャリアを作っていく方法だ。
無理なく今日からできる方法なので、気軽にはじめられる。この本1冊で基本的な部分はほぼカバーできていると思うので、いつ会社が倒産するかわからない、今の世の中にはとても役に立つと思う。たとえば「起業に向けて準備中」という人も、思わぬ弱点がないかチェックできる。この本が1575円で読めるのは素晴らしいことだ。私にとっては☆3つだが、必要な人にはきっと☆4つつけたくなる良書。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
周りのニーズに敏感になる
自分の軸はブレてはいけませんが、かたくなに自分の主義主張をするばかりでなく、ときに周りのニーズをよく見て、柔軟名選択によって活路が開かれることも少なくありません。
得意分野を2つ以上持つことを目指す
たとえ「部署内でナンバーワン」「グループでナンバーワン」というレベルだとしても、2つ以上掛け合わせると、独自性が高まり、競争相手が一気に減ります。
情報には3種類ある
- 本当の情報
- 嘘の情報
- 人の意見
「目利き力」を鍛え、自分の得た情報がどれなのか判断できることが大切。
目利き力を高める人脈の作り方
- あくまでもビジネスとして相手に貢献する
- 仕事上でいろいろな人と会う機会を増やす
- モチベーションの高い人を大事にする
- 波長が合う人を大切にする
- 見返りは求めず、まずgiveから始める
- takeは10年タームで考える
3つの短い文章で、自分がどんな人間か説明できるようにしておく
- 現在の自分
- これまでの自分
- 相手に与えたい自分のイメージ
という構成。1と2は逆になっても可。
9つの行動規範
- 嘘をつかない
- 勇気を持つ
- 時間を守る
- 他人を褒める
- 嫉妬しない
- きちんと謝ることができる
- 素直な気持ちでものごとに臨む
- 謙虚さを忘れない
- わからないことはわからないと正直に言う