以前読んだ清水久三子さんの2冊目の本。コンサルタントならではの視点や考え方が新鮮だった。そして、それは今やコンサルタントだけに求められるものではなく、すべてのビジネスパーソンが身につけておくべきことなのだ。
「課題」というと、「問題」と同じもののように捉える人が多いが、この本では「課題設定」とは
「現状」と「あるべき姿」を正確に把握し、「現状」を「あるべき姿」になることを阻む優先順位の高い「問題」を見極め、「現状」を「あるべき姿」に近づける方法を考えること。
と定義している。課題を正しく把握しないとその後の対策や行動が大きくずれてしまう。現代は自分が何を求められているのかを知り、その期待を上回る結果を残さなければ評価されることはない、厳しい時代だと著者は書いている。そのためにも、まずしっかり「課題を設定する」ことが必要になるのだ。
組織で働く人向けに書かれているため、私のような個人で仕事をする人にはすべてが役に立つわけではないが、考え方や切り口は学ぶべきところがたくさんあった。個人的には第4章のプロセスが特に勉強になった。
今や市民権を得ている「フレームワーク」だが、実はフレームワークに代表されるロジカルシンキングはそれだけでは欠点もあり、自由な発想ができるラテラルシンキングと組み合わせて使うのがベストなのだそうだ。その理由や、具体的にどのように考えていけばいいのか、ステップごとにくわしく説明されているのでとてもわかりやすい。
この本を読んだだけでもかなり結果が残せるようになると思うが、おすすめはやはり自分で試行錯誤してみること。この通りの処理ができるようになれば、ずいぶん評価が上がるのではないだろうか。
がんばっているのに結果が出ない、評価されないという人にはヒントになる本。
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
課題設定力が一番上流
上流・下流という視点で見ると、一番上流に位置するのが課題設定力で、その下に問題解決力、目標達成力が続く。課題を達せているには、達成を阻害している問題を見つけ出し、その問題を解決する必要がある。解決すべき問題がわかれば、やるべきことの目標値を設定し、達成する。そういう位置関係にある。
3点セットで考える
課題とは「現状」「あるべき姿」「問題」の3点セットで考える必要がある。「現状」を「あるべき姿」にしようとすると、障害となる様々な要因や事象が出てくる。これを「問題」と呼ぶ。そして重要なのは、「あるべき姿」の実現の障害になるものだけが「問題」だということだ。
課題設定の3つの「視方」(みかた)
- 視座――誰がどんな目的を達成するための課題なのか。
- 視野――どのような広がり(空間軸)と長さ(時間軸)で課題を捉えるのか。
- 視点――どのように課題を切り出すのか。
「視座」を高め、「視野」を広げ、「視点」の鋭さを磨く。
高い「視座」から収集した情報を、
広い「視野」で自分なりに考え、鋭い「視点」で課題を設定する。これが課題設定の理想だ。「視座」「視野」を「高い・低い」「広い・狭い」と表現するなら、「視点」は「鋭い・鋭くない」だ。
「シックスハット」で見方を変える
- 白い帽子(中立的視点[事実やデータ])
- 赤い帽子(感情的視点)
- 黒い帽子(批判的・消極的視点)
- 黄色い帽子(希望的・積極的視点)
- 緑の帽子(創造的視点)
- 青い帽子(冷静的・思考プロセス的視点)
それぞれの帽子をかぶったつもりで意見を述べていく。充分意見が出てから、最後に青い帽子をかぶって冷静な視点からの結論を出す。
ロジカルシンキングとラテラルシンキングの組み合わせ方
1.(ロ)MECEやフレームワークで切り口を整理する
- どの切り口で整理するか?
2.(ラ)前提を疑う
- 本当に問うべき問題か?
- ルール、前提を変える(無視する)
3.(ロ)イシューツリーで原因と施策を整理する
- 原因は何か?
- どうすべきか?
4.(ラ)見方を変える・組み合わせるで3以外の可能性を模索
[見方を変える]
- シックスハットで、違う立場で考える
- チェックリストで考えを広げる
- 逆から見る(例:売上げを向上するには?→売上げを下降させるには?)
[組み合わせる]
- ランダムカードで考える(いろいろな単語が書かれたカードを2枚引き、その組み合わせでアイデアを出す)
- アイデアワードで考える(できるはずがない、という突拍子もないアイデアをまず考え、そこから実現可能案を考えていく)
- 問題をたとえてみる(例:「研修の受講率を上げることは、歯医者に子供を通わせることと似ている」とたとえ、歯医者が子供を通わせるためにやっていることを考える)
5.(ロ)ピラミッドで現実的な結論にまとめる
課題設定のための6つのフォーマット
- 現状とあるべき姿
- 目的とゴール
- アプローチ(手順)
- スケジュール
- 体制・役割
- リスク・前提条件
「目的」をいくつか小分けにしたものが「ゴール」
「目的」を達成するための小さな目標、「ゴール」を設定する。この「ゴール」はだいたい、3つぐらいにしておくのが妥当。各ゴールでは、具体的な目標数字を示すようにするとさらによい。
4つのC
1.Cut(やめる)
- 目的を明らかにし、文字通りやめる
- 重複業務等をやめる
- 情報化により自動化する
2.Convert(移管する)
- 本来それをよく知っている人にやってもらう
- 取引先や顧客等、自社外での重複を排除
3.Combine(統合する)
- 工数の標準化を行う
- 専門化することで効率や品質を向上する
4.Create(作り出す)
- 上流工程に管理機能を設定し、問題発生を防ぐ
- そもそもその業務を不要にするように工程を作る