経営コンサルタント・小宮一慶さんのベストセラー。「ABCを大切にする」という、この本のコンセプトはもともとある経営者から教わったことばだそうだ。
たとえば、皿を洗う、コピーをとる、電話をとる、食事をつくる……。自分にとってあたりまえの日々の単純作業を、型どおりにこなしているだけでは、ただ時間を消費しているだけで、何も見えてきませんし、何かが生まれてくることもありません。
でも、真剣に、バカになって、ちゃんとやることで、普通なら気づけないことに気づけ、他の人には見えないことも見えてくる。そして、人生そのものがどこかいい方向へ進んでいくように思えてならないのです。(P5)
著者は銀行勤務中に海外留学を経験、その後ふたつの会社を経て独立したそうだが、著者自身の人生がABCによって大きな結果を生み出したことがよくわかる。
コツコツと英語の勉強をしていたから海外留学に抜擢された。システム部に配属になった時、経理について一から勉強したおかげで本が書けた。さらにその本が大学教授の目に留まり、会計大学院で教える機会が得られた…など。
そのポイントは、勉強すること。著者はご自身でも認めているとおり勉強が好きで、いまだに休日の勉強を続けているそうだ。
わずか3時間程度の努力を惜しんで、長い人生において損していることがないかどうか。(P63)
著者によれば、時間はそれほどかけなくてもよい。ただ、「本質をつかむ」ことが大切なのだ。
目の前の仕事を本質まで掘り下げられるかどうかで、その道でプロになれるかどうかが決まります。(P65)
得意な分野で人よりもちょっとがんばる。本質まで踏み込む。それわずかな差を大事にする人が、プロになっていくのです。(P97)
著者が人生がうまくいくための原理・原則と考えているのは次のようなことだという。
「何が起きても、前向きにとらえる」
「人間として、正しい考え方を持つ」
「仕事を深めるための勉強をする」(P7)
以前読んだ著者の他の本では、自慢話が多く感じてあまりピンと来なかったが、この本は著者自身がそうやって結果が出ていることなので、とても説得力があった。
結果を出したいすべての人に一読をお勧めします。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
正しい理想・考え方を徹底できるか(P36)
理想を持ち続け、現実を理想に近づけることを決してあきらめない。そうすれば、不思議とエネルギーが集まってきます。
なぜだと思いますか?
それは、まわりの人が応援してくれるからです。現実を理想に近づけるべく行動する人を応援したくなるのが、人間という生き物なのです。その「理想」に共感する人が多ければ多いほど、たくさんのエネルギーが集まってきます。
何を手に入れるかよりも、どのように生きるかを徹底した方が成功する(P50)
モノやお金は正しい生き方をした「結果」、手にいれるものなのです。つまり、「ご褒美」なのです。…まずは正しい考え方、正しい理想や夢があるのが先。
欲はエンジン、欲がないのはダメ(P52)
「欲は車のエンジンです。欲がないのはダメです。でも、エンジンに見合うハンドルやブレーキをつけなさい」(円福寺・藤本老師のことば)
エンジンは欲望。
では、ハンドルやブレーキは?
それは理性です。エンジンが大きければ大きいほど、エンジンにあったブレーキやハンドルが必要です。それが理性だというのです。
目の前の仕事に関わる分野について、現象の本質や物事の根本を深く掘り下げて理解しようとするかどうかで、その後の人生に深みや広がりが出てくると思うのです。(P66)
30時間、バカになって勉強してみる(P67)
だいたいどんな分野のことでも、3時間もあれば、入門書を1冊読むことができます。
もう少しがんばって、30時間、バカになって、ちゃんと勉強すれば、基本的な考え方の枠組みを身につけることができます。つまり、これまでとはまったく別のものの見方やものさしを手に入れることができるのです。
(中略)
目先の効率だけを求めて、仕事を流れ作業で早くこなしていけば、仕事の早い人にはなれるかもしれません。でも、はたしてそれで、人生の階段をもう1段、もう2段と上っていくことができるかどうか。「ただ仕事の早い人」で終わってしまうと、せっかくの人生がつまらなくなると思います。
とにかく目の前の仕事を、気を抜かずに全力でやる(P70)
自分で選んでわけではない仕事こそ、わき目もふらず、バカになって取り組む。自分で選んだわけではない、すなわち、天が与えてくれたチャンスだと思うことが大切です。
(中略)
それが一見遠回りのように見えて、もっとも確実に、一流になる道だと思います。
雑事を雑にやるのではなく、ていねいにやる。そうすることで、それは雑事ではなくなるのです。雑事を雑にやっている人は、結局雑な生き方しかできない人になります。
人は理屈ではなく、心を受け取りたいのです。(P85)
頭がよくても成功しない人がいるのはなぜか(P88)
頭のよい人は、人よりうんと掘り下げて物事を考えられるからです。そのためよい面だけではなく、ネガティブサイドもどんどん深掘りしてしまいます。その結果、落ちなくてもよい穴に落ちてしまうのです。
(中略)
頭はよいに越したことはありませんが、その頭をポジティブに使えるかどうか。自分の人生を切り開けるかどうか。世の中の役に立てるかどうかの鍵はそこにあるのです。
休みの日を勉強に使う(P96)
銀行員時代も今もそうですが、私は休みの日を勉強に使っています。といっても、せいぜい数時間のことです。それでも、それが10年、20年と積み重なると、自分でも驚くほど、力がついてくる。まさに、ちりも積もれば山となるのです。
仕事を資産化する(P98)
仕事をただオンザジョブとしてとらえ、仕事の時間をいくら増やしたところで、それだけでは右から左へ流れていく。経済用語でいう流動的な「フロー」に終わってしまいます。残業して長時間労働したとしても、オフに勉強する時間がなければ、その仕事の本質が身につかず、フローの仕事となってしまうのです。
(中略)
ストックとは資格を取れ、という意味ではありません。資格を取るために勉強する、その勉強が大事なのです。情報処理の特種を取るためには、コンピュータの仕組みから知らなければなりません。証券アナリストの資格なら、経済理論や財務分析から勉強する必要があります。
つまり、本質的なことを勉強するわけです。そうするとそれがストックになっていきます。
「正しい考え方」を持っていないと仕事が荒れる(P101)
よりよい仕事をしようと考えている人は、もっと仕事の質を高めようとするので、1段ステップアップします。それが生業を超えさせるのです。
そして、仕事を通じてお客様に喜んでもらえると、仕事を社会貢献と考えるようになっていきます。そしてもっと多くの人に喜んでもらいたくなります。すると結果として、収入も増えていきます。
それはそうです。お客様は自分を満足させてくれる人が好きですから、その人のところにはどんどん仕事が来ます。
自己実現とは「なれる最高の自分になること」(P108)
「なりたい自分」になれるかどうかはわかりませんが、「なれる最高の自分」にはなれるはずです。潜在的に持っているものを全部使いきればいいのですから。
自分が光り、まわりも光らせる(P111)
そこで目いっぱいエネルギーを出して、光って、いい仕事ができたり、人から評価されたりすると、もっともっと光が増していきます。
(中略)
自分が光っている時は、まわりにいる人をきらめかせたいと思うことが大切です。そうすると人から好かれるようになる。
(中略)
人生はいつもよい時ばかりではありません。光が弱くなることもあります。人生には浮き沈みがつきものです。
悪い時にどれだけ人が支えてくれるかは、自分がよい時にどれだけ人を気遣い、人を光らせたかに比例することを忘れないでください。
散歩のついでに富士山に登った人はいない(P114)
富士山に登ろうとする人も、ただ散歩をしているだけの人も、日々の歩くという行為は同じです。
でも、富士山を目指す人は目標を決めて、コツコツと富士山に向けて歩みを進めていきます。今日という1歩、明日という1歩、その1歩1歩をコツコツと重ねていって、富士山の頂上に到達するわけです。
私は、人が成功するかどうかは紙一重の差だと思っています。0.1ミリあるかないかの紙を、500枚、1000枚と重ねていけば、5センチ、10センチの山になります。
0.1ミリの努力の差、紙一重の努力とは、ひとつひとつは小さくても、バカになって、ちゃんと積み重ねていくと大きな結果を生むのです。
やっていることは一見、人と同じ。人と同じように1歩1歩、歩いている。でもあたりまえの歩みを、どれだけ真剣に、ちゃんとやっているか。
その差が一生の間には、富士山と平地ほどの差になっていくのです。
マクロ全体を見て、ミクロに落とし込んでいく(P120)
ものすごく細かいところまで見る顕微鏡と、世界全体や未来まで見透かす望遠鏡の両面から見ていかないと、正確な判断ができない
(中略)
細かいところまで、究極まで掘り下げて見ていく。それをやった上で、全体像を確認していくという生き方がバランスが取れている
自分にご褒美をあげるなら、結果を出さなければいけない。(P135)
オンザジョブ+仕事の本質を知る(P138)
私には持論があって、技を磨くにはオンザジョブだけではむずかしいと考えています。その仕事の本質を知っていなければいけないと思うのです。
(中略)
オンザジョブでは作業を学び、オフで本質を知るという、その組み合わせが大事
(中略)
たとえどんな仕事についていたとしても、その仕事の本質を、仕事のオフに勉強する習慣をつけておくことが大切です。それが仕事の幅を飛躍的に広げます。仕事の本質はオンザジョブだけでは決して学べないということです。
苦労と努力の違い(P142)
人は宝石の原石です。宝石は磨かなければ輝きません。
その宝石を磨く行為のことを「苦労」と言います。でもただ磨かれているだけだと宝石はどうなると思いますか?
玉はきれいにはなりますが、どんどん削られて小さくなってしまいます。
さて、ここで「努力」が登場します。
努力を重ねると、人間という宝石の玉は大きくなるのです。
(中略)
苦労だけでもダメ、努力だけでもダメ。両方が必要ということです。
(中略)
つまり本で勉強して、自分の技の玉を大きくして、実践で叩かれながらそれをきれいに磨いて使える玉にしていきます。
人生がうまく行かない時は「ためどき」と考える(P152)
もちろん人生にはよい時も悪い時もあります。インプットして実力を蓄えても、それが発揮できない時もあるでしょう。でも、そういう時は腐らずに、実力をためておくことです。そういう時こそ、「ためどき」なのです。
日記で継続する習慣を身につける(P155)
たとえ日記であっても、ひとつのことを続けられない人はほかのことも続けられません。
何かを継続する。これは人生で成功を収める上で大切な訓練です。
何かひとつのことを、バカになって継続できない人は、結局何をやっても成功できません。
(中略)
だから、継続がものをいいます。たかが日記、されど日記です。
継続なくして、真の成功はあり得ないのです。
小さな意志決定を積み重ねる(P160)
小さな意志決定を間違える人が、大きな意志決定を正しくできるでしょうか。
私からすると、小さな意志決定を間違える人に、大きな意志決定を任せたいとは思いません。小さな意志決定をどれだけ積み重ね、精度を高めてきたか。それが意志決定力となり、ここぞという大きな意志決定の場で発揮されるのです。
小さな意志決定ができない人は大きな意志決定もできない。だから、私は小さな意志決定を正しくすることに、とてもこだわるのです。
意志決定をして、その時に反省せずにそのまま流してしまったら、また同じ失敗を繰り返します。でも、意志決定にこだわって、振り返って検証すれば、その結果が次に生きてきます。
失敗を糧にする(P199)
誰でも失敗はします。
ただ同じ間違いを二度としないことが重要だし、間違わない確率を上げていくことが大事だと思います。
長い人生において、失敗しない人はいません。失敗も糧です。ただ本当に糧にしないと、何度も同じ失敗をしてしまいます。