毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

感動しながらマーケティングが学べる本☆☆☆

著者・魚谷雅彦さんは日本コカ・コーラの会長をつとめる人だ。マーケティングの能力を買われ、ヘッドハンティングで入社後、社長となってさまざまな改革を推進して会長に退くまでの経緯が縦糸、マーケティングのノウハウが横糸になり、素晴らしいストーリーで一気に読ませる。
最近は小説仕立ての成功法則の本も多いが、この話は実話なのだ。小説以上に面白かった。
私はマーケティングに明るくないが、教科書的な本はむずかしくて読み通せたことがない。この本なら感動しながら読む分、わかりやすく記憶にも残ると思う。

また、この本は成功法則としても読める。直前に読んだ本が『あたりまえのことをバカになってちゃんとやる』だったからかもしれないが、意に染まない配属先や、思うような仕事ができない状況の時でも、目の前のことにベストを尽くしてきた姿に感動した。また、感謝の気持ちが伝わってきた。こんな人柄だからこそ、目上の人には可愛がられ、思い切った改革をしてもたくさんの人がついてきてくれたんだろうな、と思う。

読んだあと、すがすがしい気持ちになれます。
マーケティングやブランドに興味がある人はもちろん、そうじゃない人もぜひ読んでみてください。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

ブランドの価値(P37)

ブランドの価値を分解すると、「intrinsic value」と「extrinsic value」に分けられます。コカ・コーラのブランドマーケティング力を伝えるには、この2つの用語を使うとわかりやすいかもしれません。「intrinsic value」とは基本的な価値、すなわち「機能やスペックの価値」であり、「extrinsic value」とは、そこから付帯的に加わる価値、すなわち「エモーション、情緒や感性の価値」と表現できます。マーケティングには、実はこの両方が必要になります。理屈だけではなかなか共感は生まれない。

ベネトレーションとは(P41)

マーケティング用語で商品の浸透率を指します。たとえば100人の20代の男女がいて、30%しかコカ・カーらを飲んだことがないとなると、これを50%まで拡大しよう、とする。週に1度でもいい、まずは手に取ってもらう、選択肢の中に入れてもらう。

フリークエンシーとは(P41)

頻度のことです。すでに70%の人が飲んでいる商品があり、30%の人はまず飲まないとするならば、その頻度を上げていくマーケティングです。70%の人が週1回飲んでいるとするなら、これを週1.5回にするにはどうすればいいかに知恵を絞る。

マーケティングという戦略には、こける時もある(P67)

関西弁でいえば、「しゃーない」ということです。それよりも大事なことは、ベストを尽くすこと。その場その場で、ベストと思える取り組みをする。そうすれば、何かが開けてくるのです。

平均値でのモノづくりは危険(P118)

コロンビア大学のMBAの基礎マーケティングの授業で聞いた、印象的な話があります。モノづくりをする時に、もっとも陥りがちなある危険が潜んでいる、と教授は言いました。それは、これぞ消費者のニーズではないか、と平均的で汎用的なモノをつくってしまうということです。
たとえば、紅茶を飲む時、最適なお湯の温度は何度なのか。熱い紅茶が好きな人もいる。しかし一方で、アイスティーが好きな人もいる。しかし、これを平均するとどうなるか。ぬるい紅茶です。こんなものを飲む人はいない。
ところが、統計を取り、平均値を出してモノづくりに挑むと、こういうことが起こりうるということです。それでは商品は売れない。平均値のマーケティングはダメだということです。

マーケティングとは、「明日」のために行うもの(P120)

必要なのは、今日の人たちをコアなターゲットにし、彼らに受け入れられるものをつくり、ブランド価値を主張してコミュニケーションすること。本当にいいものであれば、その周辺には、商品に対する理解者が確実に増えていきます。まずは小さな器をイメージし、その器に入れることにこだわり続ける。そうすると、いつの間にか器から溢れていることに気づけるのです。

お客さまの満足を達成することが目的(P147)

ビジネスを担っているのは人です。それを担う人が疑念を持ちながら、無理やりに月末に数字をつくるためだけに仕事をしていて、心が入るはずがない。それが、お客さまのためになるはずがない。しかし、お客さまの満足を達成することが目的なのだと言われ、そのためだけに集中していった。そうすることが、結果的に数字も上げていったのです。

重要なのは、新たな価値を提供する意志を持つこと(P165)

それがブランドになっていく。ブランドの価値とは、最初からそこにあるわけではなく、自然に生まれるものでもない。つくっていくプロセスが必要なのです。そして生活者によって評価され、認められて、結果的にブランド価値はつくられていきます。一方的に「つくるもの」ではなく、「つくられるもの」なのです。

優秀なマーケターは機能に徹する(P180)

ブランドマネージャーになっても、成功している人は“上から目線”には決してなりません。一緒に腕まくりして頑張っている、という空気をつくるのです。ひとつのプロジェクトの目的を完遂するための、あくまでコーディネーターになる。車で言えば、車輪になる。リーダーではないけれど、なくてはならない存在になる。そしてここで重要なのが、人を巻き込み、動かしていくということです。

社内からの反発を受けた時ブレないこと(P184)

信念を持って、姿勢を変えないことです。この姿こそ、チームのメンバーは見ているのです。

「お客さま」とどう向き合うか(P218)

どんな企業であれ、企業経営は「お客さま」が存在して成立します。「お客さま」のいない企業はない。では、その「お客さま」とどう向き合うかということこそ、実は経営の中枢である、と僕は思っています。

“市場の変化に対応する”という意味(P230)

市場の変化に対応することが重要だ、という話がよくされます。でも、それが意味しているのは、お客さまが変わったら、自分たちも変化する、というのではなく、何かそのヒントになるような現象を見て、自分たちからその変化を先取りすることです。

ブランドというのは(P231)

単なる識別のためのネーミング、すなわち「アイデンティティ」だけではありません。それは社会に対しそのブランドの氏名や価値を示す「コミットメント」であり、企業の風土や文化、携わるすべての人の行動や取り組みを総称しているものです。

マーケティングとは何か(P232)

世の中は人を中心にできています。人の行動や心理、そういうものに興味を持ち、そこになにかの 新しい価値をつくっていこうという思いであり、こだわり、志だと思うのです。そこから、人の喜びや楽しさ、便利さ、感動など、人の心を揺さぶり、動かすようなものを考えていきたい、と思う気持ちです。
その意味では、優秀なマーケターとは、自然に育っていくものです。人について考え、人について思い、人を喜ばせたい、人の心を動かしたい、そういう思いを持つことこそが大切であり、頭でっかちにマーケティングをとらえ過ぎると、マーケティングの神髄の部分には行き着くことができないと思うのです。

モノが売れない時代?(P236)

モノが売れない時代といわれます。しかし、モノのつくり手、売り手は、もう一度、問い直してみる必要があると思います。自分たちは、本当に買い手のことを考えていたかどうか、ということを。買い手の心を動かすようなモノやサービスを、買い手が思わず買いたくなるようにマーケティングプランをつくってきたか、ということを。