著者・菅原 美千子さんは元仙台放送のアナウンサーで、フリーを経てコーチングを学び、現在は企業研修などを手がけている。
その経験から、「人が動いてくれる話し方」について教えてくれる本だ。理屈は正しくても、相手が納得してくれないと結局うまく進まないことが多い。
著者が長年のキャリアから導き出した共感で人を動かす方法とは
「ストーリー」+「会話反射神経」+「プレゼンス」
だという。
この本では、それぞれについてくわしく説明し、具体的な練習方法も載っているので、自分の苦手な部分から取り組むことができる。
しっかり身につけるには時間がかかるかもしれないが、この理屈を知っているだけでもコミュニケーション能力は格段に上がると思う。
著者がコーチングのトレーナーをされていることはもちろん、アナウンサー時代に報道部記者を兼任していたこともこの本が素晴らしい内容になっている大きな理由だと思う。しゃべり方だけではないということがよくわかる。
今年のはじめ、自分についてプレゼンテーションをする機会をもらった時に散々だったので、紹介されている方法を練習してみようと思う。
人前で話す機会がある人、部下がいる人、営業職には特におすすめですが、すべての人に必要なスキルなので、ピンときた人はぜひ読んでみてください。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
仕事の質は、コミュニケーションの質に大きく左右される(P8)
人を動かす3つの条件(P24)
1.論理(ロゴス)
2.感情(パトス)
3.信頼(エトス)
説得の公式(P24)
行動(または、考え方の変化)= 論理 × 感情 × 信頼
どれかひとつの要素でも「ゼロ」になってしまうと、行動や考え方の変化は起こらない
物語の役割(P43)
自分の経験を言語化することによって、経験に「形」を与え、それを明確な輪郭を持った出来事として描き出し、他者の前に差し出すことができる。本人にしかわからない経験も、言葉を通じて、「公共的」な経験となり、伝承可能、あるいは蓄積可能な知識として生成される。
スティーブ・ジョブズ氏のスピーチより(P68)
繰り返しますが、未来を予測して、点と点をつなぐことはできない。できるのは、過去を振り返ってみた時だけなんです。
だからこそ、今はバラバラな点であっても、将来それが何らかの形で必ずつながるだろうと信じなくてはならないのです。
結果的に、人と違う道を歩くことになっても、信じることで、間違いなくすべてのことが変わるのです。
人は、未来への希望のイメージを鮮明に描けば描けるほど、「何としてもそこにたどり着きたい」というエネルギーが高まり、実際に行動に移す可能性が高くなります。(P76)
ひとつのストーリーを5分以内で収める練習(P92)
限られた時間の中で、いかに効果的に、「相手に伝わるように、伝えることができるか」を意識することはとても大切です。
もっと言うと、「短く話せない」というのは、まだ自分の中で伝えたいことがまとまりきっていない証拠です。目安としては、ひとつのストーリーを、長くても5分以内で収まるように練習してみてください。
人を動かす目的で使うストーリーや会話は、日本酒の「大吟醸」であるべき(P93)
大吟醸は、酒米を極限まで削って磨き上げ、中心部分だけを用いてつくり上げる、日本酒の最高峰です。だからこそ、にごりがなく、文字通り「研ぎ澄まされた味わい」になります。
ストーリー・ボードの活用(P94)
これは、もともとディズニー社が考案した方法です。ストーリーライターが描いた話に沿って、キャラクターの感情やアクションなどを、実際に絵に起こします。
それらを順番に大きなボードに貼りつけ、ウォルト・ディズニー氏を含む主要スタッフたちがそれを見ながら、討議を重ね、実際に制作するシーンを構築していったのです。
私の場合は、スケッチや絵コンテではなく、それぞれのストーリーのタイトルと、そのストーリーで伝えたいことを1行程度にまとめて、ポストイットに書き、ホワイトボードに貼っています。
それを眺めながら、自分の伝えたい構成に合わせて、ストーリーの順番を入れ替えたり、整理していきます。
ストーリーをつくり、語ることは、右脳と左脳の両方がフル回転する非常にクリエイティブな作業です。脳みそに汗をかかせることで、ストーリーは確実に洗練されていきます。
信頼を満たす3つの条件(P110)
1.その人の話を信じられる
2.言行一致
3.一貫性がある
つまり、言っていることと実際の行動が一致していて、かつ、言動の軸がブレない時に相手から信頼を得ることができる。
プレゼンスの3要素(P117)
※プレゼンスとは…言語・非言語の総合的な印象のことを指す
1.言葉の意味・内容(バーバル)
2.声のトーン、大小、抑揚、リズム、間(ノンバーバル)
3.表情、しぐさ、態度、姿勢(ノンバーバル)
よいサービスができる人は、どんな人か(情報誌『東京カレンダー』編集長・藤井雅彦氏)(P199)
「今、自分に求められていることが何かをしっかりと見極めて、その瞬間、そのことに集中できる人」のことといいます。そして、その場に応じた自分の動き方を「イメージ」できていることが大事だと。
つまり、よいサービスができる人は、「こういう動き方をすれば、このようなよい結果になる」というイメージがきちんと湧いているのです。
エジソンが教えてくれること(P237)
起こってしまった事実をどう解釈するかによって、物事の見え方は180度変わるということです。「解釈の質は人生の質」という言葉の通り