著者の神永正博さんは東北学院大学准教授で、統計に関する本を何冊か書かれている方だ。前著『学力低下は錯覚である』のタイトルはご存じの方も多いかもしれない。
この本では、初級、中級、上級と3つのステップでいかに統計の数字を読みとり、そこから真実を得るかについてわかりやすく書かれている。私のような数字を見ただけでアレルギーを起こすような文系の人でもそれなりになるほど、と読める。数値を算出するための方法やごくわずかに数式も出てくるが、そこは流してしまっても、本質的なことはわかると思う。
個人的には吉本佳生さんの『スタバではグランデを買え!』のような切り口の本だと感じた(扱う数字は少し違いますが)。
副題にもあるとおり、第2章では小泉改革で本当に格差は生まれたのか?を主に検証している。これが面白い。いくつか検証したもののうち、小泉政権の時期に大きく変化しているのはわずかにひとつ。いかに根拠のないことをマスコミや評論家が言っているのかがわかる。鵜呑みにするのは危険だと感じた。
気になるコメントや記事、報道があったら、自分で必要なデータを探し、そこから何が言えるのか考えることは特にこれから大切になってくるだろう。
情報にいたずらに左右されないための能力のひとつ、この本で身につけてください。