毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

糖尿病治療の前に読む本☆☆☆

最初は別のブログで紹介しようかと思ったが、あまりにいい本だし、現在糖尿病ではない人にも将来の備えや知識として知っておいてほしいと思い書くことにした。


著者は東大卒、東大病院から博士研究員としてハーバード大医学部へ、という超のつくエリート(と思われる)。そんなお医者さんが現在は北海道北見市で内科を開業している。そして、この本では“病院が明らかに儲からない糖尿病治療法”を呼びかけているのだ。こんな医師が世の中にもっとたくさんいたら、日本人の健康は守られていたんじゃないか、と思うくらい感動的な本だ。


糖尿病になったら厳しい食事制限や運動療法で血糖値をコントロールする。それでだめなら内服薬。それでも血糖コントロールができなければインシュリン注射が必要だ。いったん注射を始めたら、一生やめられない…。
これが、世間一般に浸透している糖尿病治療の常識ではないだろうか。

しかし、この本はそれとはまったく違う方法を提案している。しかも、インシュリン注射を長年続けていても、いくつかの条件がクリアできれば、やめることも可能だという*1

日本ではまだまだ厳格な血糖コントロールを言い渡される治療がほとんどだろう。HbA1cの値が理想といわれる5〜6.5%をキープできなければ医師から怒られる。それがいやで、治療をやめてしまったり、糖尿病の疑いがあっても病院に行かず放置してしまう人が多いという。

ところが、2008年に発表されたアメリカの実験では、血糖値を厳格にコントロールした方が、死亡率が22%も上がる、という結果になったのだ。動脈硬化が原因で起きる「脳梗塞」「狭心症」「心筋梗塞」などで亡くなくなる方が多いという。


この本を読んで思い出したことがある。私は今の仕事をする前、総合病院のリハビリ室で受付をしていた。運動療法のために来られる糖尿病の患者さんも多かったのだが、ほぼ毎日のように熱心に通われる人があった。見た目も若々しく、本当に糖尿病?という年配の男性で、気さくに声をかけてくださるので親しくお話しするようになった。
ところが、その方は旅行先で突然、心筋梗塞を起こして亡くなられたのだ。スタッフのショックは大きかった。あんなに熱心に運動し、食事にも気をつけていた人がなぜ…。

その答がこの本に書いてある。厳しすぎる食事制限はストレスがかかり、逆によくないこと、血糖コントロールの結果起きる無自覚の低血糖が心臓や血管を傷めてしまうこと、糖尿病の合併症で怖いのは、よく言われる「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」ではなく、いわゆる大血管病であること。
一般の人よりも専門的なことを知る機会が多いはずの私でも、初めて聞くことばかりだった。


自分や身近な人が糖尿病になった時、何に気をつけ、どうすればいいのか、この本を読めばわかる。そして、もうすでに糖尿病治療をしている人にも役に立つ本だ。予備軍も含め、爆発的に患者が増えていると言われる糖尿病。QOL(生活・人生の質)を高め、健康で長生きを実現するためにも、ぜひ読んでもらいたい本です。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

インスリン抵抗性とは(P18)

インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を全身のエネルギーに変える働きをしています。
私たちが飲んだり食べたりして体に取り入れた糖質は、消化分解されて、最終的にブドウ糖となり、血液中に吸収されます。食べたあとに血糖が上がるのはそのためです。
この血液中のブドウ糖は全身の細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されるのですが、その時にインスリンが働きます。インスリンの働きがよければ、食後いったん上がった血糖値は速やかに下がります。そうやって、私たちの体内の血糖値はほぼ一定に保たれているわけです。ところが内臓脂肪がたまると、悪玉アディポサイトカインが大量に出てインスリンの作用を妨げてしまいます。つまり、インスリンは分泌されているのに働きが悪くなるのです。この状態を「インスリン抵抗性」と言います。

3大合併症より怖いもの(P41)

なぜ厳しい血糖値コントロールが必要かといえば、「糖尿病の3大合併症を防ぐため」だとされています。糖尿病で何より怖いのは、神経や細い血管が傷ついて起こる糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害の3大合併症だというわけです。しかし、糖尿病の合併症は神経や細い血管だけに起こるわけではありません。それよりも、太い血管に動脈硬化が起き、脳梗塞狭心症心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症という大血管病が起きるという重大な問題があるのです。

低血糖のしくみ(P126)

低血糖になると、体はこれに対抗して、副腎からエピネフリンというホルモンが、膵臓からグルカゴンというホルモンが休息に分泌され、血液中に送り込まれます。これらのホルモンは血糖値を上げる働きがあるので、急に血糖値が高くなる時間帯が作り出されてしまいます。まり、低血糖の反動で高血糖になる時があって、血糖値コントロールが狂わされてしまうのです。そこで薬を出しても血糖値コントロールがうまくいかない、だからもっと強い薬が必要だとなって、悪循環を繰り返してしまうことになります。

糖尿病治療の第一課題(P138)

糖尿病患者さんの治療では、動脈硬化を食い止め、脳梗塞狭心症心筋梗塞を防ぐことを第一課題としています。そのために、血糖値だけでなく、コレステロール、血圧を一緒に管理します。悪玉コレステロールは薬で抑え込む、血圧は減塩食と運動でコントロールするよう患者さんにすすめています。

インスリン治療が痴呆症を増やす可能性(P167)

体内にはインスリンを壊すインスリン分解酵素という物質がありますが、このインスリン分解酵素は、アルツハイマー認知症の原因物質であるβアミロイドを壊すものでもあります。しかし、血中のインスリン濃度が高くなると、脳内帆のインスリンの移行も増えて、脳内のインスリン分解酵素がこちらに使われてしまうため、βアミロイドが脳内に残ってしまいます。そこで、インスリン治療をしている人はそうではない人に比べて認知症が多い、という結論が出てきたとされています。

*1:残念ながら、すべての人が可能なわけではありません