大和書房(2002/07)
¥ 1,400+税
著名な精神科医・斎藤茂太さんの本。「グズ」をキーワードにした本をたくさん出されている。ご自分も以前は「グズ」だったそうだが、戦争中の兵役の経験がグズ改善にはよかったという。そんな元・グズだからか、グズの人に対する視線はとても温かい。
著者によれば、グズにはいろんなタイプがあるそうだ。この本では、それぞれのグズに対する処方箋がいろいろと紹介されている。とても具体的ですぐできることばかり。しかも、グズだとこんなところで損をする、という厳しい現実もズバッと書いてあるので、何とかしなきゃ、という気持ちを後押ししてくれると思う。
ただ、何となく全体が古い感は否めない。Amazonの書評で“おじいちゃんの説教”と書いてる人がいたが、的を射ていると思う。極めてオーソドックスな内容なので、斬新さを求める人にはあまり必要がないかも。
私が困ったのは、第1章にある“グズのいろいろなタイプ”(P16)というのに、自分が当てはまらなかったこと。自分はグズだと思うから読んでいるのに、ここでひとつも当てはまらなかったら意味がない。
- 動作がのろい
- 手際、要領が悪い
- 何ごとにも慎重すぎる
- 内気である
- どちらかというと融通がきかない
- マイナス思考である
- 周囲の状況を把握せず、頑ななまでにマイペースを守る
- 人の目がいつも気になる
- 何でも自分で解決しようとする
- 落ち込むと、くよくよと悩む時間がとても長い
…強いて言えば最後が当てはまるかな、くらい。
しかも途中で出てくる“優柔不断な人リスト”(P138)にも該当なし。
- 自信がないように見える
- 提出物は、催促されないと出さない
- 決断を迫るとだまり込んでしまう
- 物事は人まかせだ
- 失敗をいつも恐れている
じゃあ、いったいなぜ私はやることが遅かったり、ギリギリまで取りかかれなかったり、やるべきことほど残ったりするんだろう。家族にも「グズじゃないと思うよ」と言われたが、“グズじゃないけど結果が出せない”タイプの人がいるんだろうか。
上のテストでグズ、または優柔不断に当てはまった人はぜひ読んでみてください。ただし、当てはまらなくてもいろんな人にヒントになることばがたくさんあります。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
自分を素直に受け入れる(P76)
「自分は自分以上のものでも、自分以下のものでもない」と心に念じ、「失敗したとしても、それが自分なのだ」と、あるがままの自分を素直に受け入れることが必要だ。
容貌とは(P90)
「心」と「教養」と「顔かたち」から成り立っている。「顔かたち」を整えれば美人にはなれるが、「いい顔つき」にはなれない。「教養」を磨き、「心」を安定させて初めて、自分らしい美しさを感じさせる容貌が手に入るのである。
77の資格を持つ黒澤眞次さんの10のポイント(P123)
- 明確な目標を持つ(実現性のある目標を具体的に設定する)
- 失敗を悔やまない(発想の転換も必要)
- 他人の幸福に役立つことを誇りとする(ねたみは自分の可能性を閉ざす)
- 常に成長を望む(今自分にできることは何か、という気持ちを忘れない)
- 可能性を信じる(過去の経験は判断の手助けになっても実作業の手助けにはならない)
- どうしたらできるかを考える(いい結果をイメージして各方面から検討を加え実行する)
- 時間の概念を持つ(1日の中で、仕事と休憩、緊張と弛緩などメリハリをつける)
- 使命感を持つ(困難に耐える心を支えるのが使命感である)
- 自分に投資する(自分自身のために資金と時間を費やす)
- 自信と誇りを持つ(積極的な人間として生きる)
本番に強くなる(P129)
人に「本番に強い」と思われる結果を出すことは、人生の勝ち組になる条件のひとつである。
「本番に弱い」体質を露呈して、同じ失敗を繰り返すグズにならないために、ふたつの方法――「ベストを尽くせば、結果はあとからついてくると開き直れる目標を設定し、リラックスして本番に臨む」「難易度の低い小さな勝ちを積み上げ最終的に大きな勝ちに結びつける」ことを進言しよう。
要するに、「ここ一番」のレベルをどうとらえるか、それ次第。
プラス思考のポイント(P145)
プラス思考の力を120%発揮するためには、やはり苦しんだり悩んだりすることも必要なのだ。ポイントは、悪いことを予測しながらも、いい結果を思い描くことだ。
「これだけの困難が予想される。でもきっと抜け出せる。その先には、明るい未来が開けてくる」と信じ、どう行動すればいいか考えることこそがプラス思考なのである。つまり、苦悩の泥沼にズブズブと引き込まれないよう、水面に浮上する方法を考え、その時に広がる素晴らしい風景を思い描くわけだ。
「もう駄目だ」ではなく「まだいける!」(P126)
困難に直面した時には、「もう」ではなく「まだ」で発想することをお勧めする。
「もう駄目だ」ではなく「まだいける」、「もうおしまいだ」ではなく、「まだこれからだ」、「もう疲れきった」ではなく「まだ元気だ」といったふうに。
チャンスは「今、輝いている」人にやって来る(P148)
仕事で成功していなくてもいい。たとえ、人生における“不毛な時期”にあっても、やりたいことを心に持ち、それを実現させようという強い意志と情熱があり、積極的に行動する人は輝いているのだから。
仕事の効率を上げるポイント(P176)
・疲労を感じたり、集中力が途切れたりした時は、思い切って休憩を取る。あるいは日を変えて、新たな気持ちで取り組む。
・やる気が起こらない時は、とりあえず簡単にできる仕事を“実行”する。
・行き当たりばったりに、複数の仕事に手をつけず、優先順位に従ってひとつの仕事が完了したら次という具合に仕事を進める。ただし、どうしても進まない仕事は、可能なら後回しか翌日回しにする。
・単純な仕事は、「頭の回転が鈍る」と言われる昼食後の1時間や、終業前の夕刻に回す。もっとも能率よく仕事が進められるのは午前中の3時間の時間帯であることが多い。
・締め切りがない仕事も、自分でタイムリミットを設け、目標にする。
相手の第一印象をよくする、こんな方法(P185)
世の中には、「いやな人」より「いい人」の方が格段に多いはず。初対面の人に会う時には「きっといい人に違いない。絶対に好感を持てるはずだ」と自己暗示をかけるといい。そうすれば、不思議と相手を受け入れる心の準備ができて、会話はスムーズに運ぶはずだ。
人に会う前に情報を仕入れ、捨てる(P187)
初対面の人に会う時、相手がどんな人かわからないから不安になることは多い。可能なら、どういう人物か“予習”をしておいた方が、未知の部分が減る分、気持ちはラクになるので、調べておいて損はない。
(中略)
ただ、仕入れた情報は、会う直前に捨て去ることをお勧めする。どうしても相手を“色眼鏡”で見てしまうから、評価の目が曇るのだ。現実以上に「いい人」に見えてしまったり、逆に意外といい人なのにそれに気づかない、なんてことも起こりうる。
(中略)
初対面の人に対する時には、「できるだけ先入感を排除して、自分の第一印象を大切にする」ことと、「“予習”した情報は話題の参考にする程度にし、詳細については知っていても知らないフリをする」ことが大切。
好かれる人の行動――よく笑う(P204)
人から好かれる人は、めったに“ご機嫌ななめ”な表情を見せない。おおむねいつも“上機嫌”で、よく笑う。
(中略)
そのためには、「私は元気だ」と言い聞かせることが大切。元気なフリをしていれば、そのうち本当に元気になってくるものなのだ。
(中略)
彼女はまた、悩みがある時もひとりになった時にとことん落ち込み、心の痛みが過ぎてから笑って人に話し、解消するという。「かわいそうな私に同情して」ではなく、「かわいそうな私を笑って」という話にすると、気持ちがぐんとラクになるから。