毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

グローバルに活躍する人の仕事術☆☆

著者の今北純一さんは、東大大学院を卒業後大手企業に就職するが、没個性的な生き方に不安を覚え、単身欧州へ渡る。それからはヘッドハンティングでさまざまな企業を渡り歩いたという華々しい経歴の持ち主だ。ひとりで道を切り開いてきた方なので、今までどこでどんな仕事をしてきたのかを読むだけでも楽しい。嫌でも日本人であることは意識させられるし、ヨーロッパの人との違いを感じることも多かったという。そのエピソードひとつひとつが比較文化論のようで面白かった。

ただ、それは私が以前海外相手の仕事をする業種にいて、代理店にほとほと手を焼いていたからかもしれない*1。この本を借りてきた家族は「自慢ばかりでつまらなかった*2」と言っていた。なので、海外で働きたいとか、海外に興味がある人向けかもしれない。


しかし、著者が書いているのはただのグローバルな働き方だけではない。いかに自分らしく仕事をするか、いかにやりたいことを見つけるかというテーマもくり返し出てくる。人として生きて行く上のヒントもたくさんあると思う。私は著者の考えるMVP(くわしくはメモをご覧ください)に共感した。

また、最後の章では海外でも活躍する日本人(ラグビーの平尾誠治さん、指揮者の佐渡裕さん、柔道の山下泰裕さん、将棋の羽生善治さん)と著者との交流が紹介されているが、このエピソードがどれも面白い。一流の人はここが違うんだ、という気づきがたくさん得られた。


読む人を選ぶかもしれないが、よりよく生きたい人には価値のある本だと思う。
ちなみに、タイトルの5%はよく言われているような、「セミナーや講演で熱いまなざしを注いでくる人」*3を指しています。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

著者が考えるMVP(P8)

M=ミッション、V=ビジョン、P=パッション
このMVPは…それぞれミッション=個人や組織が挑戦すべき目標、ビジョン=ミッションに至る具体的な道筋、パッション=夢や目標向かって燃やす情熱、にあたります。

誰かをお手本にする限界(P70)

そうした(=脱帽してしまうほど優秀な)人たちの姿を見、経験を積む中で、結局、どんなに優れた人であっても、その人を手本にしている限りは、自分自身の成長がすぐに天井にぶつかってしまうことに気づきました。手本になる人を参考にすること自体はいいのですが、そのままでは自分独自の世界を切り拓くことはできません。ましてや、誰かに憧れるという姿勢はとても危険です。いつその憧れがコンプレックスに反転するかわからないからです。そして、自分自身の成長のためには、自分が好きなこと、自分に向いていること、自分をよりドライブできることに注力すべきだということがわかってきました。

上昇志向より成長願望(P95)

上昇志向というのは、基本的には「ランキング」にとりつかれた考え方です。
(中略)
上昇志向を運命づけられた思考回路に入ると、最終的には非常にみじめな思いをする気がします。上昇にはきりがないからです。
(中略)
これに対して「成長願望」の方は、自らコントロールできるものです。自分なりの目標を設定し、それが達成できたと思えば次の段階に進めばいい。他人と比べる必要もない。これは精神的にとても健康的な志向じゃないかと思います。

必要な時は逃げずに対決(P139)

必要な時はやはり、逃げずにちゃんと対決しなければダメなのです。逃げた方が一時的にはラクかもしれません。でも、逃げたらたぶん、ずっと逃げまくらなきゃならない。小さなことでも、逃げずに対決を続けていると、だんだんと要領を得て、「これならやっても大丈夫」「ここは対決すべきところだ」という瀬踏み*4ができるようになります。

おかしいと思うなら行動を(P145)

まだ若かった当時の私は、個人としての自由を妨げそうな要因すべてに憤慨していたのです。
憤慨するくらいなら、何とかしないといけない。自分がおかしいと思っているのに、何も行動しないのだったら、単なる愚痴と同じになってしまう。行動しないのなら、愚痴は言わない。どちらかにしないと、このままでは自分自身がみじめになってしまう。

一番インパクトのある伝え方(P150)

「何かを伝えたい」と思った時、一番インパクトがあるのは、伝えたいと思っていることに自分がパッションを持っていることだと思います。だから、自分が感動したこととか、自分が悔しかったこととか、それを表に出していけばいいのです。

羽生善治さんのことば(P192)

たとえば、「新しい手を見つけた時は、いつ練習するんですか」と聞くと、「練習はしません。メジャータイトルも含め、大事な試合で試します」とおっしゃいました。そして、「練習で使ったらライバルにわかっちゃいますから」とさらっとおっしゃいました。
でも、これは大変にリスクのある話です。いきなり本番で試すわけですから。羽生さんも現に「そりゃ、リスクはあります。それに、よく負けます」と付言されました。
それでも大事な試合で試すのは、棋士として長く戦い続けていく中で、必ずそれがどこかで力になって戻ってくるからだそうです。「本番で試すということをやらない限り、成長はありません」

勝負すべき時にはする(P193)

本当の勝負というのは…リトマス試験紙的なテストとは別の次元で展開している話です。リスクを取ることを決断するまでには、考えに考え抜く。リスクをゼロにすることはむずかしくても、可能な範囲で最小にして、勝負すべき時にはする、ということなのです。これをやらない限りブレークスルーはあり得ない。このことはビジネスにもそのままあてはまることです。

オックスフォード時代、ノーベル賞を受賞した隣人の研究者のことば(P201)

“人間というのは、自分の才能の10分の1も知らずに死んでしまう動物なんです”
(中略)
…だとしたら、自分にどんな才能があるかがわからないと投げやりになる前に、どんな才能があるかを探すことから始めてみてもいいのではないでしょうか。

パッションは理屈で決めるものではない(P203)

どこか本能的な部分で好奇心をかきたて、ワクワクさせるようなものです。このワクワク感が大事です。夢中になれるものが何もない状態にある場合は、他人がどう思うかなど気にせず、他人の思惑から自由な立場で、自分がワクワクするようなことをまずは試してみる。見つけたらそれを大事にし、雪だるま式に大きくしていく。そして試行錯誤の連続でいいから、このアプローチを継続させていくことです。

著者の最も伝えたいメッセージ(P205)

大それたことを成し遂げようなどと力まず、自分の身の丈にあったミッション/ビジョン/パッションのMVPをもって、仕事に本気で取り組んでいけば、成長は自然について来ます。

*1:トラブルがあったから電話しているのに、何を聞いても「ノープロブレム」としか言わないインドとか、夏になるとバカンスで担当者が休んでしまい、代わりの人もいないのでまったくアテにできないフランスやイタリアなど、頭を抱えることがよくありました

*2:書いてあるのはうまくいったことが多いので、自慢にも読めるのかもしれません

*3:聞いて実践する人は20%、さらにそれを継続できる人はその20%=約5%と言われています

*4:瀬の深さを足を踏み入れて測ること。転じて、前もって試してみること/広辞苑より