著者の藤沢晃治さんはメーカーに勤務するエンジニアだったが、現在は退職してコミュニケーション研究家として活動されている。著書も多く、以前一日一冊で★5の高評価を得た『日本人が「英語をモノにする」一番確実な勉強法 』は、私も紹介される前から持っていた。働きながら英検1級やTOEIC900点、通訳ガイド資格などを取られた人なので、きっと仕事も効率よくこなしていたんだろうと思い、読んでみた*1。
読んでみて思ったのは、著者は“ものすごく心配性だ”ということだ。その不安を、前もっていかにつぶせるか、というのがこの本の段取りのコンセプトと言ってもいいと思う。
たとえば、出張でホテルに宿泊する時、予約受領証などを前もって送ってもらっていても、必ず前日に予約確認の電話をするのだそうだ。面倒だが、その電話1本でトラブルが回避できる。
他にも、パソコンのハードディスクは3ヶ月に1回は壊れる、と考えて信じられないくらい神経質にバックアップを取っているそうだ。さすがにそのままの方法は勧めていなかったが、こちらも心配性ゆえにできる準備なのだろう。
全体に、広い分野の具体的な方法がたくさん紹介されている。会社勤めの人向けに書かれているので、プレゼンのスライドのポイントや会議のやり方など、私にはあまり必要ないものもあった。しかし、社会人になって日が浅い人などには格好の入門書だと思う。
面白かったのは、さすがはエンジニア、というフローチャートのような進捗チェック表。これを使ってクリティカル・パスとその日数も割り出せるという。
具体的な方法があまり自分に合っていなくても、「段取り」に対する考え方や心構え的なものが学べるので、それだけでも価値はあると思う。何しろ、著者に言わせれば「段取りの正体はサービス精神」だそうだ。読んでみたくなりません?
人によって効くところはかなり違うと思う。ぜひ読んでみてください。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
なるべく並行処理を増やす(P53)
複数の仕事を抱えていたら、まず、どれを終えた後でないと、どれを始められないかの前提関係を整理しましょう。次に、他人に振れる仕事か振れない仕事かを分類しましょう。こうして整理しながら、「なるべく並列処理を増やす」という大原則で仕事の手順を決めていくのです。
メモは自宅で書き写す(P62)
自宅においているテーマごとの企画ノート(=母艦ノート)をすべて持ち運ぶのは大変です。そのため私は、屋外では小型のメモ帳を胸ポケットに入れて行動します。いろいろな異なる企画のアイデアを書き留めるため、その1冊の共通のメモ帳で間に合わせるわけです。
ある日の1日にメモ書きした内容が乱雑であっても、帰宅してからカテゴリー別の企画ノートに書き写して整理するので問題ありません。
嫌なことは早く終わらせ、事前確認を徹底せよ!(P71)
「完成図」のイメージを持つ(P74)
「このように整理したい」というゴールとしての完成図をテンプレートと呼ぶことにしましょう。
そのテンプレートと現状を重ねてみる。そうすると、テンプレートとの差分が自ずと見えてきます。そこで、その差分を単純に処理していけばいいという、非常に当たり前なことがわかります。
テンプレートと現状の差分を処理して解消するという単純なことを繰り返していけば、最終的には、テンプレート通りに片付けられるわけです。
(中略)
まずは、ゴールと現在地の差分を知る。その差分を解消するためのアクションを知る。そして、あとは、そのアクションを淡々と処理していけばいいわけです。
クリアファイル&A4封筒の二段構え(P80)
A4版の封筒に、たとえば確定申告なら「平成○年度確定申告」と書いておきます。その中に、1年間の支払書類、領収書、請求書などもろもろの関連書類、伝票を一気に全部放り込んでおくのです。
(中略)
ひとつのA4封筒に入れる書類や資料はサブ・カテゴリ別に複数のクリアファイルに分類します。つまり、ひとつのA4封筒にカテゴリ別の複数のクリアファイルを入れるのです。
そして、各々のクリアファイルには、カテゴリ名を示すラベルを貼っておきます。
「平成○年度確定申告」というA4封筒の中には「支払明細書」や「領収書」や「支払調書」などのラベルが貼られたクリアファイルが保管されています。
まず冒頭に力を入れる(P108)
人間の脳は、「たぶん、こういうことが書いてあるんだろう」という仮説によって思考の節約をし、スピーディーに文章を理解できるのです。つまり、読み手は文章の大枠を最初にほしがるのです。
ですから、文章の読み手の脳が本能的にほしがる大枠を文章の冒頭で与えることが重要なのです。それだけで砂漠の乾いた砂が注がれた水をスーッと吸い込むように、読み手の脳は文章が伝えたい意図をスーッと吸収できるのです。
アクションプランを作成する(P122)
会議での決定事項が完全に実行されるよう、会議終了後、アクション項目と実行責任者と実行期限の3点が含まれたアクションプランと呼ばれる表が作られました。このアクションプランが添付された議事録が、会議出席者全員に配布されるのです。
そのため、曖昧なことは一切残らず、会議で決めたことが本当に、効率よく実行されていくことになります。
*1:この本でも、勉強法が簡単に紹介されています