テレビなどでもよく見かける、東京諏訪理科大学教授・篠原菊紀さんの本。あまり脳科学の本らしくない、イラスト入りのさっぱりした作りなので、面食らう人もいるかもしれない。でも、日常に取り入れやすいトレーニング方法がいろいろ紹介されているので、気軽にやってみようかな、と思える。
この本で、私が画期的だと思ったのは2点。
ひとつは、脳のどの部位がどの能力を司っているかが図解されていて、どの部分を鍛えているのか意識しながらトレーニングできること。意識することでその箇所が活性化する効果がアップするそうだ。私はいろいろな本を読んだおかげで、おおざっぱな部位は何となくわかるようになったが、やる気を司る線条体の場所は今まで知らなかったので、そこを意識するようになった。
そして、もうひとつは「心をこめる」ことが脳にいいということ。もちろん、それに触れた本は今までにもあったが、「心をこめて○○をする」という脳トレのメニュー(例:心を込めて玉ねぎのみじん切りをする)は初めて見た。とても新鮮な感じがした。心を込めて日々を過ごすだけでも、脳にとってはいいことなのだ。
メニューは9つの分野ごとにさまざまだ。体を使うもの、クイズ的なものから、あえて慣れないことをやったり、これが脳トレ?と思うようなことまで。いわゆる脳トレのイメージとは少し違う、ハードルの低い本だと思う。
何かやってみたいけど、いわゆる脳トレはちょっと、という方はこの本から読むのがお勧めです。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
脳にとっての「リアル」は「実際」よりも「イメージ」(P20)
動作を含むフレーズを覚えてもらう実験をしました。調べたのは「言葉で覚える」「動作をイメージして覚える」「実際に動作をして覚える」の3つ。すると一番活発に脳が動き、よくフレーズを覚えていたのは、動作をイメージして覚える場合でした。動作をして覚えるよりもイメージした方が脳は活性化し、記憶にも残るのです。
スポーツの上達にイメージトレーニング(P56)
たとえばダーツ。毎日50本投げるより、10本くらい投げて、あとは投げるフォームや筋肉の動きを具体的にイメージする方が、成績がよくなります。
(中略)
イメージができたら、実行です。当たり前ですが、実際の練習なくして技は身につきません。技の記憶を定着させる、繰り返しの練習が必要です。
耳から入る情報にはメリットがある(P80)
見る以上に集中しやすく、疲れにくいのです。聞いて覚えるソフトを使っている時も、聞くだけで、何となく全体像をつかむことができます。
ただし、きちんと覚える、あるいは聞くことで脳を鍛えようとするのなら、しっかりと脳にメモするように意識して聞く必要があります。音韻ループ*1を働かせ、それによって頭の中で写真的メモが誘発されるようにワーキングメモリーを使わなければなりません。
*1:言葉や音の情報を、聴覚メモとして反復処理し、利用する能力。聞く時にも働くが、頭で考える時にも働く