毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

運動すれば脳は作り変えられる?!☆☆☆☆

 

医学・科学的常識を覆す本。何しろ、「脳細胞を増やせる方法がある」というのだ。あるものを活性化、ではなく、新しく作ることさえ可能だという。マユツバかな、と思ったが、著者は精神科医ADHDの研究者としても著名な人物。科学的根拠がきちんと説明されていて、引き込まれた。

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運動するだけで、成績を上げ、ストレス免疫をつけられる。さらに、不安症・うつ・注意欠陥障害(ADHD)・依存症・女性のホルモンバランスによる疾患に効果があり、老化を遅らせることもできるという。もしそれが本当なら、運動は万能薬ではないのか。

しかし、その理由はこの本を読めばよくわかる。もともと、人間は動かなければ食物を得られなかった。生きていくためには活動しなければならない。このため、DNAレベルではまだ昔のメカニズムのままなのだ。動くことで達成感が得られたり、気分がよくなったり、記憶力が向上するのも、獲物を捕らえたり、新しい技術を身につけるのは必ず体を動かしていた時だったからだろう。
ところが、この数百年で極端に動かなくてもいい生活が手に入った。そのひずみが、上に挙げたような各種疾患なのではないだろうか。


もちろん、検証中のものもあるし、まだまだ解明されていないことも多いが、著者は「もし運動と同じような効果が認められる薬ができれば、製薬会社が群がるに違いない」と書いている。そのくらい、運動することでさまざまな問題が解消・軽減されるのだという。
しかも、運動はひとつの部位・ひとつの神経伝達物質に働きかけるわけではない。バランスを整えたり、さまざまな所に同時に働きかけるので、どこかひとつを薬で再現できても効用は限定的になる。
また、実際に薬を飲んでいるよりも、運動した方が改善できた患者の例もたくさん取り上げられている。薬には合わない場合があったり、副作用が大きいこともあるからだ。
一方、運動に副作用はない。


と、こんな風にいいことずくめの本だが、問題はこの分厚さと内容がかなり専門的なことだ。うしろに用語解説も載っているが、脳に関する本をまったく読んだことのない人にはかなりハードルが高いと思う。出版社にはぜひもう少しわかりやすい抄訳的なもの(各章にまとめがついているともっとわかりやすいと思う)を出してほしい。

ただ、メカニズムがよくわかっていなくても、どんな運動をどの程度すればいいのかは、問題別に各章のうしろの方に提示されている。たとえばPMSの女性や、パニック障害・うつで薬を飲んでいるがやめたい・減らしたい人、これから介護が必要な年齢の親族をお持ちの方には、自分があてはまる章だけでも読めば役に立つと思う。

この本のもうひとつの効果は、「運動を続けるモチベーション」になることだ。やり始めたけど続かない…という人は、これを読めば続ける気になること確実。3日坊主で…という人は、その目的だけで買っても価値があるかもしれない。


私はADHDに関する章など、学ぶところが多かったし、やはりこの本を読んだら走らずにいられなくなったので、モチベーターとして役に立った。買うかどうか検討中。


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

ランニングの脳に対する効果(P51)

私はよく、ランニングをするとプロザックリタリンを少々服用したような効果があるのは、運動がそれらの薬と同じく神経伝達物質の量を増やすからだ、という話をする。それは要点をかいつまんで説明するためのたとえで、正確に言えば、運動は脳の中の神経伝達物質と、その他の神経化学物質のバランスを保っているのだ。

老後も健全な精神状態を維持している人に共通する3つの要因(P55)

  • 教育
  • 自己効力感*1
  • 運動

私たちは体を動かすようにできている(P67)

元来、私たちは体を動かすようにできていて、そうすることで脳も動かしている。学習と記憶の能力は、祖先たちが食料を見つける時に頼った運動機能とともに進化したので、脳にしてみれば、体が動かないのであれば、学習する必要はまったくないのだ。

ニューロン新生のための効果的な方法(P70)

有酸素運動と複雑な動きはそれぞれ別の有益な効果を脳にもたらすのだ。ありがたいことに、このふたつは互いに補い合っている。
(中略)
そこで私がお勧めするのは、心血管系と脳とを同時に酷使するスポーツ(たとえばテニスなど)をするか、あるいは、10分ほど有酸素運動でウォーミングアップしたのちにロッククライミングやバランスの訓練といった酸素消費量が少なく技能を必要とする運動をするというやり方だ。有酸素運動神経伝達物質を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を生み出す一方で、複雑な動きはネットワークを強く広くして、それらをうまく使えるようにする。動きが複雑であればあるほど、シナプスの結びつきは複雑になる。また、こうしたネットワークは運動を通して作られたものではあっても、他の領域に動員され、思考にも使われる。ピアノを習っている子供が算数を習得しやすいのはそのためだ。前頭前野は、激しい動きをするために必要な知的能力を、他の状況にも応用しているらしい。

神経もいったん壊れて強くなる(P78)

実は、運動によって引き起こされた脳の活動は、分子サイズの副産物を生み出し、それがニューロンを傷つけるが、通常は修復メカニズムが働いてニューロンはむしろ強くなり、今後の問題に対処できるようになるのだ。ニューロンは筋肉と同じように、いったん壊れて、より丈夫に作り直される。ストレスによって鍛えられ、回復能力を増していくのだ。

基本的には、希望がなければ、脳はストレス反応を抑制できない。(P95)

体が落ち着けば、脳は心配しにくくなる(P118)

運動すると体の筋肉の張力が緩むので、脳に不安をフィードバックする流れが断ち切られる。体の方が落ち着いていれば、脳は心配しにくくなるのだ。

刺激に対する健常者と不安障害患者の違い(P122)

差が出るのは、恐ろしくない刺激に対する反応の方だ。ほのぼのとした写真を見せられるとたいていの人は扁桃体の活動が一気に穏やかになるが、不安障害患者の扁桃体は、恐ろしい刺激の時と変わらない反応を示した。危険と安全の区別がつかないのだ。

恐怖の記憶は置き換えられる(P132)

私たちは元の恐怖の記憶を消すことはできないが、新しい記憶を作り出し、それを強化することで、下の記憶を脇へ押しやることができる。脳は、恐怖の記憶と平行する回路を築くことで、不安を感じそうな状況でも、無害な代替案の方を示せるようになる。そうやって恐れる必要がないことを学んでいくのだ。不安の種になっていたものと、それへの典型的な反応とが切り離され、正しい解釈の回路につなぎ直される。そうすることで、たとえば、クモを見ると恐怖を感じ、心臓がドキドキする、といった連鎖を弱めることができる。科学者はそれを再帰属化と呼ぶ。
(中略)
不安を克服するには、恐怖を感じても死ぬわけではないと脳に教えこむことが大切なのだ。

体を使って脳を治療する(P135)

じっと座って思い悩む代わりに何かしらの行動を起こすと、思考プロセスは受動的応答中枢を迂回して恐怖を抑え、同時に、脳はその新しいシナリオを学べるよう精一杯働き始める。不安に向き合ったら誰でも本能的にそれを避けようとして、ケージの隅で縮こまるラットのように身動きが取れなくなる。だが、あえてそれとは反対の行動を取れば、認知を再構築できる。

筋肉の緊張をほぐせば不安も和らぐ(P136)

1982年に、ハーバート・デ・ヴリーズという研究者が筋肉の緊張が和らぐと不安も和らぐことを発見した。…それは不安障害の「症状」たけでなく「特質」を克服する上でも重要である。

心と脳と体は互いに影響し合っている(P150)

人間の心を厳密に生物学的に解釈しようとする時、心と脳と体が互いに影響し合っていることは往々にして見落とされがちだ。運動すると気分がよくなるだけでなく、自分を肯定的にとらえられるようになる。そのことがもたらすプラスの効果は、特定の化学物質や脳の特定の部位が生み出せるものではない。気分が落ち込んでいても、体を動かしてすっきりすると、自分はきっと大丈夫で、信頼できると思えるようになり、態度もすっかり変わる。この日課を定着させるだけで、気分は大きく改善する。明らかに変化が起きるのだ。

運動と注意力の強い相関関係(P193)

特に興味を惹かれるのは、運動と注意力の強い結びつきだ。このふたつは、脳内で同じ回路を共有していて、おそらくそれゆえに、武術のような活動はADHDの子どもに効果があるのだろう。新しい動きを覚えるために、彼らは集中しなければならず、その際、運動システムと注意システムの両方が動員され、鍛えられるのだ。

依存症を神経の機能不全ととらえる(P240)

多くの人が、依存症者にとって本当の問題はやる気のなさだと考えている。ある意味でそれは正しい。だが、やる気とは脳の信号によって生まれるものであり、その信号は、確実なメッセンジャー(伝達物質)と、健全な神経回路がなければ送れないということに気づいている人は少ない。依存症をモラルの欠如によるものではなく、神経の機能不全としてとらえると、それは治療できるものとして形を持ち始める。簡単に治すことはできないが、運動を用途の広い道具として利用すれば、治療ははるかに容易になる。運動は必ずしも治療法とは言えないが、ボトムアップトップダウンの両方から脳に働きかけ、依存症の悪循環を迂回して渇望を抑制するように脳の配線を作り直す唯一の方法だ。

PMSや重い更年期障害などになる人とならない人の違い(P245)

ホルモンの量の多寡によるものではないらしい。むしろ、ホルモンの変化が招く神経化学的な変化に対する感受性に起因するようだ。

祖先の日常の活動を真似しなさい(P312)

もちろん今日では、生きるために最終や狩りをする必要はない。しかし、私たちの遺伝子には狩猟採集の行動様式がしっかり組み込まれていて、脳がそれを司るようになっている。したがって、その活動をやめてしまうと、10万年以上にわたって調整されてきたデリケートな生物学的バランスを壊すことになる。簡単に言ってしまえば、脳と体をベストの状態に保ちたいなら、この歴史の長い代謝システムをせっせと使うべきなのだ。DNAに刻み込まれた古代の活動は、大まかにウォーキング、ジョギング、ランニング、全力疾走に置き換えることができる。つまり、毎日、歩くかゆっくり走るかし、週に2、3回は走り、時々は全力疾走で獲物を追うのだ。

私たちは動くように生まれついている(P337)

あなたは遺伝子も感情も、体も脳もすべて、活動的な生活を渇望している。私たちは動くように生まれついているのだ。動いている時、あなたの人生は燃え始める。

*1:ある行動や課題を達成できるという信念や自信