ずいぶん前にビジネスブックマラソンで紹介されていた本。図書館で予約してかなり待った。難読本3条件*1のうち、価格以外のふたつに当てはまったのではじめはひるんだが、読んでみたら面白く、一気に読めてしまった。
ビジネスブックマラソンの紹介記事はこちら
天才は生まれつき天才である、というのが世間一般の常識だろう。しかし、この本を読めばそれが間違いであることがよくわかる。もちろん、IQは低いより高い方がいいが、それもある程度までの問題なのだそうだ。たとえばプロのバスケットボールプレイヤーの身長が2メートルを超えてしまえば大差はないのと同じことだという*2。
では、何が人を天才にするのか?
一流とそれ以外を分けるのは遺伝子でもIQでもなく、それに携わった時間だという。そのボーダーラインは1万時間。たとえば、音大生で一流のプレイヤーになるのとそれ以外の人との練習時間のボーダーは1万時間だという。
他にも、ある人がブレイクするのは、それをやり始めてからちょうど1万時間経ってからのことが多いそうだ。ビル・ゲイツもビートルズも、モーツァルトですら当てはまるというから驚きだ。
そして、どこに生まれてどんな風に育つかが、天才になるかどうかを左右する。その場所の文化や先祖の人種*3、親の職業まで、本人とは直接関係ないものが実は深く影響しているのだ。さらに、どの時代に生まれたのかも大きいという*4。
こんなことで決まっちゃうの?とショックを受けることも大きい。
まるで、一斉に風で飛び立ったタンポポの種が、どこに着地するかでその後が大きく変わってくるかのようだ。種そのものの優劣はあまり関係がない。
著者に言わせれば、数学オリンピックの上位5つをアジアの国が占めるのにも理由があるそうだ*5。
こんな風に、今までとは違う“天才が生まれる理由”がていねいに解き明かされている。ショックも受けるが、じゃあそれを踏まえて、自分は何をすれば天才は無理としても一流になれるのかが考えられるのだ。
この本は勝間和代さん翻訳で、彼女の解説がうしろについている。彼女曰く著者は学者ではないので、データの根拠などを厳しく追及する学術論文のような読み方はふさわしくないという。厳密さを求める人には向かないかもしれないが、興味深い仮説とデータやエピソードが紹介されているので、ここから自分が何をすればいいのか、学ぶことはできる。
アマゾンのレビューでは、勝間さんの翻訳を酷評する人が多かったが、私はシンプルで読みやすかった。内容を削ったり脚注を省略するようなことをせず、できるだけ原著に近い形で日本語版を作ったそうだが、さすがはこの手の本を読み慣れている人の判断だと思う。
翻訳本が苦手じゃなければ、ぜひ読んでみてほしい1冊です。