ビジネスブックマラソンでかなり前に紹介されていた本。“儒教、仏教、道教という三大思想の道理を含んだ傑作”とあり、興味があったので読んでみた。
ビジネスブックマラソンの紹介記事はこちら
もともとの著者は明代の大学者・洪応明。科挙に合格し、世が世なら出世をほしいままにできたはずの人物だが、世の中はは腐敗しており、主流派になれなかったため隠遁生活に入ったという。
古くから日本に紹介されている本だが、この本は中国の作家独自の解説文が長いのが特徴だそうだ。『三国志演義』をはじめ、中国古典からのエピソードなどが盛り込まれており楽しく読める。“金言”を最大限に活かすために大胆に料理されている、と思えばいいのではないだろうか。
ひとつひとつの言葉が心に染みる。だが、読み進めるうちにだんだん疲れてきた。ストイックすぎるような気がするのだ。
何となく「徒然草」に似ているな、と思った。俗世にまだまだ未練のある人物が隠居しながらあれこれと語っている。それだけに、仙人や悟りきった人とは違うものごとのとらえ方が今の時代にも響くのだろう。
また、解説部分が面白い。翻訳によるものかもしれないが、本当に中国の人が書いた本?とうくらい現代社会にぴったりの事例が出ていたりするのだ。
たぶん、はじめから全部読むよりは、手元に置いておいて必要な時に必要なところを読むのに向いている本だと思う。全部読んでいると説教臭く感じるかもしれない。
この本もまた、人によって心惹かれる部分は違う本だろう。経験豊富な年上の人に生き方を聞いてみたくなった時には役に立ちます。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
逆境にある時は、すべてのことが良薬となる(P28)
逆境は辛く苦しいが、冷静に自己分析できる者なら、逆境から自分の弱点を知り、弱点を強化することで自己鍛錬に結びつけられる。
過去の過ちを根に持たない(P30)
人の小さな失敗を責め立てない。
人の秘事を暴かない。
人の過去の悪事を蒸し返さない。
この3つを守ることで、人から恨みを買うこともない。
貧しくても、落ちぶれない(P40)
貧しさには物質的なものと精神的なものがある。物質的に満たされないことで精神が萎えてしまうことはある。だが、物質よりも精神の充足感を大事に考えれば、生活を楽しむことができる。ここに、品格が生まれる。
陰口を言わない(P52)
本人に隠れた悪口を言わないようにするには、自分が気をつけることに加え、いない人の話は極力しないことである。
理不尽なことは断る(P81)
相手から信頼されたら全力を尽くすべきであるが、損得勘定で考えてはならない。道理に反するものや自分の力ではどうにもならないものに対しては、明確に断るべきである。同じように、こちらからも友人に対して理不尽なことを求めてはならない。
能力をひけらかさない(P84)
自分の能力を自慢することに慎重になり、すべきことを黙々と実行することに努めるならば、降りかかってくる災難を最小限に抑えることができる。
要するに、才能のある人間はその能力を隠し、無用な攻撃から自分を守ることだ。
欲張りすぎない(P117)
何をするにしても、ある程度やるところとある程度控えるところがある。何にでも手を出そうとする人は、最終的に何もできていないことに気づくであろう。
力は7割にとどめる(P118)
問題には余裕を持って対処し、知恵を使い果たしてはならない。
こうして、解決策の幅を広げておいて不測の事態に備えるのである。
自分を信頼する(P123)
冷静な判断力を保つにはまず自分を信頼することだ。必要な力が不足していることを理由に可能性のある考えや構想を否定してはならない。逆に、自分の考えをあきらめずにいれば、さまざまな難題を克服できるのである。
人生に多くを望まない(P142)
ただ、過去の過ちにくよくよせず、未来に不安を抱くことなく日々すべきことを淡々と行っていけば、いずれ無の境地が訪れることになろう。
心の重荷を下ろす(P147)
生きていれば不本意な場面に遭遇することも多いが、万事思い通りにやろうと思うならば、過去の不愉快なことは忘れ、心の中から放り出して忘れる方がよい。
(中略)
重荷を下ろし、忘れることができる人は賢明である。重荷を忘れることができれば、心理的に解放され、本来の自分が取り戻せるし、人生を心の底から楽しめるようになる。
荘子の言葉(P153)
世間体を気にしなければ肉体的に疲れることはなく、肩の力を抜いて生きるならば精神的に苦しむこともない。
争わない(P154)
人と先を争えば小道はさらに狭くなるが、一歩退けば、その分道は広くなる。
(中略)
人と争わなければ、人と親しくなることができる。名声を争わなければ、名声は向こうからやって来る。利益を争わなければ、利益の方から自然に寄ってくる。
他人の言葉に惑わされない(P161)
もっとも大切なことは自分が他人からどう見られているかではなく、自分はどの方向に向かって、どういう歩き方をすればよいのかを考えることなのである。
(中略)
谷間に吹くつむじ風のように、耳にした噂や中傷などはすべて聞き流してしまうことだ。自分が信じる道を歩むには、他人の言葉に惑わされてはならない。自分の生き方を人に恃むのでは、自分の生き方ではなくなるからだ。
他人を気にしない(P186)
自分が何も間違ったことをしていないのであれば、他人から笑われようと気にすることはない、と。
(中略)
自分が考えるほどに他人は自分に関心など寄せていないものである。
(中略)
誰もが満足するように動くことは極めて困難である。実際、半分以上の人に満足してもらえたら充分であろう。周囲の人の自分に対する評価は半分以上が違っていることは知っておいた方がよい。
不遇の時こそ平然とする(P198)
ただ、君子のような人は不遇であってもそれを平然と受けとめ、何も起きない穏やかな日々に災厄への備えに余念がない。
苦境が人を鍛え上げる(P205)
苦境は必ずしも悪いことばかりではなく、素晴らしい恩恵を与えてくれるのである。苦境は人の頭を働かせ、精神力を鍛え上げ、のちに人格を育むのである。