ミトコンドリア、という名前は知っていても、その役割を理解している人は少ないのではないだろうか。
もっとも有名なのはATP(アデノシン三リン酸)を作ることだろう。これはエネルギーの電池のようなもので、筋肉を動かす時に必須の物質だ。ミトコンドリアはこれを脂肪やブドウ糖から作る。このしくみがうまく働かなくなる、つまりミトコンドリアの劣化がそのまま体の老化につながるそうだ。
では、ミトコンドリアを活性化するにはどうすればいいのか。その答は、ごくごくまともなことだった。腹八分目、ちょっとキツイくらいの運動、規則正しい生活。「なんだ、たったそれだけ?」と思うが、私は今まで言われている「健康によい心がけ」が、すべてミトコンドリアで説明できることに感動した。
そもそも、著者がそれに行き着いたのは、先天的にミトコンドリアがうまく働かない患者さんの症状がメタボリックシンドロームの経過に似ていると気づいたのがきっかけだったそうだ。
しかし多くの人は先天的に問題があるのではなく、生活習慣でミトコンドリアを自ら劣化させているのだ。年齢に負けずイキイキと生きるのも、実年齢より早く老け込むのもある意味ミトコンドリア次第、と言える。
なぜ運動が体にいいのか、なぜ腹八分目がいいのか、きちんと説明されているので納得できる。体のメカニズムについてしっかり記述してある分、解剖学の専門用語に慣れていないととっつきにくい面はあると思うが*1、その辺りは適当に読み飛ばしても、後半をしっかり読むだけでも意味があると思う。
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読書日記:『糖尿病最新療法』
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
肥満になるしくみ(P40)
ATPの原料は、主に脂肪とブドウ糖である。ミトコンドリアの元気がなくなると、エネルギー源である脂肪やブドウ糖がだぶついてしまう。われわれの体では、だぶついた脂肪やブドウ糖は、すべて脂肪(中性脂肪)として蓄えられる。そして肥満になってしまうのだ。
活性酸素が発生するのは(P118)
(ミトコンドリアの働きを水力発電所のダムにたとえて)そもそも雨不足で水が貯められなかったり、水を貯め込むダムの貯水量が少なかったり、またダムの壁に水漏れがあったりすると、うまく電力が生み出せない。つまり、ミトコンドリアの数が少なかったり、その機能が落ちると、充分な量のATPが作れなくなる。
(中略)
…ミトコンドリアの機能が悪いと、この[=ATP合成の]プロセスがうまく進まず、酸素が水になれず、一部の酸素は、活性酸素になってしまう。
「古いものをいかに捨てるか」が大切(P121)
われわれにとって、どうやらものを生み出すことより、なくしていくことの方がはるかに難しく、そして生命の維持には「古いものをいかに捨てるか」が大切なようだ。この仕組みの異常、なくなるべきものが存在し続けることこそが、メタボ、そして老化の大きな原因である問い新しい考え方が最近示されている。
カロリー制限はミトコンドリアの力を高める(P144)
カロリー制限によって長寿遺伝子サーチュインが活性化しミトコンドリア力がアップすることが、メタボエイジングにブレーキをかけ長生きする鍵となる。ミトコンドリア機能が低下すると、エネルギー代謝が乱れ、メタボリックドミノが進んでいく。そして、動脈硬化に陥り、脳や心臓などの重要な臓器の障害が起こり、死の訪れも早まる。
しかし、ミトコンドリアの大切さはそれだけに留まらない。ミトコンドリアは、メタボ関連以外の病気、たとえば、がんや感染など、もっといろいろな病気が起こることに対する全般的な抵抗力を作り出してくれる。そうして、最終的な寿命を決定するのだ。つまり、カロリー制限は…ミトコンドリアの力を高めて、生きるための“底力”を与えてくれるという意味で重要なのだ。
*1:この本を借りてきたのは家族だったのですがギブアップしていました…