この秋から再開されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」。司会者がスタジオで話を聞くスタイルから完全なドキュメンタリー形式になった。何となくまだなじめていないが、今日の放送は前々から楽しみにしていた。
絵画修復家・岩井希久子さん。世界的に著名な方だ。以前ニュースか何かでちらっとお仕事ぶりを見たことがある。その時もすごいプロ意識と絵に対する責任感のようなものを感じたが、番組を見て普通の感覚ではできないな、と改めて思った。
相手にするのは世界的な名画ばかり。失敗は許されないのだ。いろんな時代にいろんな手法で描かれた絵を、手探りで修復していく作業は緊張の連続。薄い麻のキャンバスの劣化が激しい、ピカソの絵を新たに貼り替える作業をされていたのだが、そのシーンではこちらまで緊張してしまった。
その仕事ぶりも素晴らしかったが、圧巻だったのは仕事も、育児も、家事も完璧を目指していた、ということだ。娘さんが2人いて、ご主人は画家。それでも仕事はセーブすることなくずっと続けていたという。40代に入って、全部完璧にやるのは無理だ、と考え方を変えたそうだが、それまで完璧にしようと努力し続けていた、というところがすごいと思う。
岩井さんがお仕事を始められた頃は、結婚していたり子どもがいるとそれをハンディと取られる時代だった。一人前の仕事を頼めるのか、値踏みされることが続いたそうだ。それをはね返したくてがむしゃらに働いたのだという。
番組中でも「覚悟」という言葉が出てきたが、覚悟の質が違うというのか、スケールが違うというのか、「一流の人は考えることもやることも違う」と痛感した。生半可な考えでは、生半可な結果しか出ないのだ。
すごい人の生き方を見たからといって即すごい人になれるわけではないが、時々こんな風に活を入れてもらえるのはありがたい。自分が目指すゴールにたどり着くには何をする必要があるのか、改めて考えてみよう。