毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

記憶の仕組みを知って効率よく暗記する☆☆

ノーベル賞に最も近いと言われている脳科学者・池谷裕二さんが2001年に出した本。鹿田尚樹さんが薦めていた*1ので、図書館で借りて読んでみた。
ブルーバックスは主に科学を扱う新書で、中高生向けとも言われている。そのためか、記憶力を高めるための脳の仕組みがかなりわかりやすく書かれている。といっても、記憶するコツは“学校卒業後”についてもくわしく説明されているので、大人でも役に立つ。


よく“脳細胞が減るので歳を取るほど記憶力は悪くなる”といわれるが、著者によればそれは間違いなのだそうだ。記憶力よりも、加齢とともに意欲が下がることが大きな要因になっているという。
このような「常識の間違い」をただしながら、希望が持てるさまざまな話が展開する。


ただし、この本を手に取った人が最も読みたい内容は第6章「科学的に記憶力を鍛えよう」まで待たなければならない。5章まではひたすら脳の機能の話なので、そういうジャンルが苦手な人には少し辛いかもしれない。5章までの内容が6章の前提になっているため、いきなり6章を読んでもむずかしそうだ。ななめ読みでも5章まで目を通したいところ。
私は脳科学系の話が好きなので抵抗なく読めたが、著者の書く文章は頭のいい人独特の難解さがあり、好みが分かれそうだ。


個人的には、参加していたビジネスセミナーの主催者が著者の学外弟子だそうで、聞いたり読んだりした内容がこの本で深く理解できたので面白かった。
また、よく「ティッピングポイント」とか「ブレイクスルーの法則」と言われる“ある時点で爆発的に成果が出る”しくみは、実は「べき乗」というもので説明できることがわかったので、それだけでも読んだ価値があった、と思った。それがわかっていれば、何かをやり始めてすぐに成果が出なくても辛抱できる。


効率よく記憶したり、身につけるにはコツがある。そのコツを知っているのと知らないのとでは結果が大きく変わってくる。がんばっているのに結果が出ない、という人はぜひ読んでみてください。
私のアクション:忘却曲線を考え、復習する機会を増やす

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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

刺激の多い環境は記憶力を強くする(P35)

…できれば刺激の多い環境で、常に脳を活気づけることがよいと思います。もしそれが無理であれば、積極的に周囲の出来事に興味を持ち感覚のアンテナを張り巡らせましょう。それはおのずと海馬を活性化させ、記憶力の向上につながるのです。

シータ波を有効に使う(P82)

記憶力を高めたければ、覚えたいものに興味を持ってシータ波を発生させ、海馬をより強く活動させるよう心がければよいのです。

海馬の顆粒細胞を増やすには(P88)

※顆粒細胞の増殖能力が高い方が記憶力が強くなる
…顆粒細胞の増殖を高める因子として、適度に体を動かすこと(ランニングなど)や軽いダイエットなどが知られています。反対に増殖を低下させる要因としては、心身へのストレスや麻薬などが挙げられています。

なぜ歳を取ると記憶力が低下するのか(P191)

歳を取ると、しばしばものごとに対する情熱が薄れてきます。ひとつのことに集中できなくなります。感動も薄くなってきます。すると、記憶力はてきめんに低下します。じつは、歳を取って記憶力が落ちたように錯覚してしまう最大の原因はここにあるのです。…常に環境の刺激に対して敏感になり、海馬にシータリズムを作るだけの緊張感を保ち続けなければ記憶力は増強しません。

ものごとの奥にひそむ真理を発見すること(P198)

が、学習にとって重要なのです。法則性を見抜くこと、そして、法則性を見つけ出す能力が必要なわけです。…理解していなければ、仮に覚えたとしてもまったく役に立ちません。理解するということは、自分なりに消化するということです。

声に出して覚える(P200)

語呂合わせにもコツがあります。ただ見て覚えるのではなく声に出してみるということです。なぜなら、目の記憶より耳の記憶の方が心に残るからです。
(中略)
…長い歴史進化で、動物は目よりもむしろ耳をよく活用してきたわけです。したがって、歴史が長い分、耳の記憶は目の記憶よりも強く心によく残ります。

忘却曲線を考慮に入れた復習スケジュール(P208)

科学的に最も能率的な復習スケジュールは、まず1週間後に1回目、次にこの復習から2週間後に2回目、そして、最後に2回目の復習から1カ月後に3回目、というように、1回の学習と3回の復習を少しずつ間隔を広くしながら2カ月かけて行うことです。そうすれば、海馬はその情報を必要な記憶と判断してくれます。

学校卒業後の学習のコツ(P208)

本人が意識していなくても、学校の授業にはそれなりの復習効果があります。ですから、学校を卒業したあと、何かものごとを習得したいと考えている人は、くり返し学習をするという習慣を身につける必要があるでしょう。

失敗したら「後悔」ではなく「反省」(P214)

大切なことは、失敗して「後悔」することではなく、失敗して「反省」することです。失敗を次に活かせることが、曖昧な記憶をする(ファジー率の高い)人間の脳の素晴らしいところなのです。

学習手順を踏んで覚える(P214)

一見、遠回りに感じるかもしれませんが、しっかりと学習手順を踏んだ方が失敗の数も少なくてすみます。ですから、いきなり高度なことに手を出すよりも、基礎を身につけてから少しずつ難易度を上げていった方が、結果的には早く習得できるのです。
(中略)
授業に頼らず何かを独学で習得しようとする人は、学習手順には慎重に気を配った方が賢明です。

まずは大局を理解する(P214)

一般にものを習得する時には、まずは大局を理解しておくことが大切です。はじめは細部を気にせず、大まかに理解するのです。細かいことは、その後で少しずつ覚えていったらよいのです。
(中略)
とにかく、大まかに似ているものを区別せず一緒にまとめてしまうのが記憶の性質ですから、はじめは区別できなくても当然です。それは決して恥ずかしいことではありません。わからなくても気後れする必要はありません。手順さえきちんと踏めば、誰でも、いずれ細部まで理解できるようになるのです。

脳は使えば使うほど性能が向上する(P216)

…ひとつのことを記憶すれば自然と、他のことの法則性を見出す能力も身につくというわけです。つまり、記憶には相乗効果があるのです。したがって、多くのことを記憶して使いこなされた脳ほど、さらに使える脳となります。

*1:『10分間リーディング』読書日記はこちら