とはいうものの、やはり将棋がわからないともうひとつ理解できないことも多かった。しかし、この本は将棋がわからなくても読めるし、役に立つ本だ。
なぜなら、「プレッシャーのかかる状態でいかに結果を出すか」について羽生さんが語っているから。おそらく、羽生さんは今の日本において、“極限状態で最も結果を出してきた”ひとりだろう。
私にとっては待ち望んでいた本だったとも言える。そして、その内容は期待を裏切らなかった。
もちろん、将棋がわかればもっと楽しめるんだろうと思う。たくさんある可能性の中からどうやって次の一手を絞るのか、その方法について語られているところは、わからない私には想像するしかない。
しかし、それ以外にもミスをどう受け止めるか、不調の時の考え方と対処法、リスクとは何か、そしてリスクを取る時の考え方など、珠玉の言葉が並んでいる。対局ほど極限状態ではなくても誰にでもプレッシャーのかかる状態はあるはずなので、ほぼすべての人にヒントになると思う。
羽生さんは7冠という偉業を成し遂げて圧倒的に強かったが、その後苦しい時期もあったようだ。その頃の気持ちの持ちようや切り替え方はとても参考になった。プレッシャーにつぶされるのではなく、プレッシャーに鍛えられたという印象を持った。
迷いやすい、なかなか決断できない人には素晴らしい参考書になると思います。ぜひ読んでみてください。
私のアクション:完璧主義にならず、現実を受け止める
関連記事
読書日記:『決断力』
読書日記:『勝ち続ける力』
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
勝負で大切なこと(P19)
1.恐れないこと
2.客観的な視点を持つこと
3.相手の立場を考えること
結果が出るまでにはタイムラグがある(P25)
その時期をうまく使って、生活や仕事のサイクルに変化をつけ、停滞しないようにすることです。不調は、必要な充電期間なのです。
「もうひと息」の努力が結果につながる(P41)
…「もうダメだ」と思った時は、けっこういいところまで来ていることが多いものです。そこからもうひとがんばりできるかどうかが、明暗を分けます。もうひとがんばりしてから、「やっぱりダメだった」と、判断すればいいのです。
自分の気持ちが軽くなるかどうかで判断する(P45)
…いろいろな人の話を聞いて、それを取り入れるかどうかを決める際に、自分の気持ちが軽くなるかどうかを判断基準にすることです。人が何を言っているかではなく、自分自身がその話を聞いたあとにどういう気持ちになるかを見極める。
選ばなかった選択肢を検証する(P53)
…次の展開がわからずに迷っていても、実際に何手か進めてみると、はっきりすることがあります。思いつかなかった選択肢は仕方がないのですが、検討した結果として自分が選ばなかった選択肢を検証することは、非常に大切です。
なぜなら検証では、質よりも量をこなすことで見えてくることも少なくないからです。
自分自身の調子を測るバロメーター(P63)
たくさんのことを考えられる、記憶できる、速く計算できるということよりも、いかに「スパッと迷わずに見切って手を選ぶことができるか」になります。
多くの選択肢は後悔しやすい(P64)
人間はたくさんの選択肢があるほど、行った選択について後悔しやすくなります。選択肢があればあるほど、あとになって「ああしておけばよかった」と思いやすいものです。
だからこそ、後悔しないための考え方、割り切り方を心に持っている必要があります。
知識を知恵に高めていくには、自分の頭で考えるしかない(P72)
プレッシャーがかかっている時は8合目まで来ている(P80)
つまり、あともう少しで、ブレイクスルーできる、壁を打ち破ることができる、結果を出せる。そういう状態の時にプレッシャーがかかることが多いということです。
(中略)
だからこそ、プレッシャーがかかっているということは、その状況自体、けっこういいところまで来ている、最後の段階まで来ていると思うようにすればいいでしょう。
結果が表に出ないのは、力を蓄積している状態(P102)
「今、負けが続いているのは、力を溜めている、充電している時だからだ」と思うようにしています。
結果が出ていない時こそ現実を直視する(P103)
…結果が出ていない時にこそ、自分が至らないところ、ダメなところが明確に浮き彫りになってくるので、現実を直視することです。
現実が出ていないということは、必ず何かしらの原因があります。それを見つけるいい機会だととらえ、どんどん掘り下げていって、原因がわかれば、それに対して対策を立てればいいことになります。
(中略)
今至らないところがあるのは仕方ないので、完璧主義にならず、今を受け止めて次に進むことです。そして、その部分について、弱点を克服するようにしています。「自分の弱点が明らかになってよかった」ととらえるのです。
犯してしまったミスへの対処法(P112)
1.ミスをどのように割り切るか、受け止めるかというメンタル的な要素
2.ミスをしてもそれ以上傷を深めない、大きなダメージを被らないようにするというリカバリー、フォローのやり方
リスクを取る恐怖とのつき合い方(P139)
リスクを取ることで何が怖いのかというと、「リスクを取って失敗する」という結果が怖いわけです。ですから、何かリスクを取る時に、「このリスクを取れば、ある程度の確率で失敗する、負けてしまう」という前提、覚悟を持っておくと、恐れはなくなるはずです。
結果だけではなく、「納得できるか」(P141)
…うまく行くかどうかだけではなく、自分自身が納得できるか、満足できるかという視点で、物事を見るとよいでしょう。たとえ結果が出なかったとしても、その選択肢を選んだことに満足できるか、納得できるか、です。