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著者はふたりとも、英語が母語ではない人だ*1。だからこそ書けた本だと思う。
世界はすごい勢いでグローバル化が進み、英語を話す人のうち、英語が母語ではない人の人数が圧倒的に上回っているそうだ。しかし、世の中はまだまだ“英語を正しく話せなければならない”と考える英語ネイティブが多い。それではコミュニケーションがうまくいかないので、みんなが使える英語スタンダードを作りましょう、というのがグロービッシュ(=Global English)のコンセプトだ。
簡単に言えば、文章を短くする、使える単語を1500語に制限する(必要な場合は専門用語も使用できる)、受動態は使わずできるだけ能動態にする、など。
そうすることで、意思の疎通をはかりやすくするほか、これから勉強する人に一定のレベルとしてグロービッシュを呈示できる。今までよりも習得が早く、楽になり、かける費用も時間も少なくてすむそうだ。英語コンプレックスで儲けている英会話スクールや、母語が英語だと言うだけで講師の仕事に就いている多くの英語ネイティブにとっては逆風かもしれないが。
言わば、英語のユニバーサルデザインのようなものだ。誰でも使える、簡単に使える、新たに習得する負担が少ない。共通の言語としてグロービッシュを設定してしまえば、もっとコミュニケーションが活発化・深化するというのが著者たちの主張だ。
そのためには、英語ネイティブにも参加してもらわなければならない。ルールを全員が守らなければ意味がなくなるからだ。
ネイティブもグロービッシュのルールを守る。1500語以外を使わず、できるだけシンプルな表現を選択する。もちろん全員がネイティブの時は必要ないし、高度な英語が必要な場もあるだろう。ただし、グロービッシュが求められる場では「英語ができない方が悪い」ではなく、「みんながグロービッシュを使おう」という考えに賛同してもらわなければならない。
理念は素晴らしいが、英語ネイティブが果たして自分たちの優位性を手放そうとするだろうか。数の上ではグロービッシュがあった方がいい人たちの方が圧倒的に多いので、数の論理で浸透するのだろうか。今後の展開を見守りたい。
この本は英日対訳になっていて、読みながらグロービッシュとはどんなものか感じることができる。巻末には1500語のリストも漬いている。
ただし、学習するための本ではない。すでに他の言語では各種教材やインターネットのコースなどが始まっているという。
ぜひ、これがスタンダードになることを期待している。
私のアクション:グロービッシュの教材が出たら試してみる
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