毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

これからの社会のカギはアドボカシー(顧客支援)☆☆☆

家族が借りてきたので読んでみた。ソーシャルメディアって何?という疑問に答えてくれる良書だが、それ以上にこれからの世の中の流れを予感させてくれる本だった。先に書いた『小さなお店のツイッター繁盛論』と向かおうとしている方向が同じだったのだ。“合わせ技一本”のようだった。同時に読めてよかった。


著者は、ソーシャルメディアと企業を結びつけるコンサルティングファームを経営している人だそうだ*1。基本的なことから、こんなことができるのか!ということまで、日米の豊富な事例を織り込みながらていねいに説明されている。

中でもおどろいたのは、積極的なユーザーサポートをしている、という例(ソフトバンクなど)。ツイッターで不満をつぶやいた人がいれば、企業の方からコンタクトを取るというシステムが広がってきているそうだ。
また、フェイスブックなどもどうすれば企業が生活者と結びつき、お互いにプラスの結果が得られるのか、具体的な例があるので取り入れやすそうだ。


やはり、これからは人と人の結びつきが大事になってくる、企業の場合はいかに顧客に貢献できるかが重要、という結論は『小さなお店のツイッター繁盛論』と同じ。この本では、三河屋さんが例として載っていたので衝撃を受けた。ITと御用聞きの三河屋さんがどう結びつくのか。これからはだますような商売では行き詰まり、いかに相手を大事にするか、信用で商売をする時代になるようだ。
「日本的なビジネス」がこれからの流れになると書いてあったので、明るい気持ちになれた。


欲を言えば、サブタイトルに「グルーポン」と書いてあるのだから、今年の初めに話題になったおせち*2のことも専門家がどう分析するのか読んでみたかったが、残念ながら何も記述がなかった。年初に出版されているので間に合わなかったのだろう。
著者の解説によれば、グルーポンのシステムはアメリカと日本では大きく違っているそうだ。その辺に問題があるのかもしれない。

IT関連の本といえばたいてい理系の人が書いていて、読みづらい文章のイメージがあるが、この本はとても読みやすく、理解しやすかった。よくある使い方のノウハウだけではなく、こういう使って何ができるのか、どこを目指せばいいのかわかる本は貴重だと思う。
ソーシャルメディアと聞いて、どういうものかよくわかっていない、と感じた人は必読です。
私のアクション:Web上で人間性をアピールしてみる
関連記事
読書日記:『小さなお店のツイッター繁盛論』
参考:著者のブログでのこの本の紹介記事です。目次もあり、かなりくわしく内容がわかります


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

実名コミュニティはリアル社会と同様の感覚で交流できる(P30)

実名コミュニティでは、ペルソナをかぶった社会性の高い人間の集まりになるため、誹謗中傷が少なく、穏やかな会話が交わされる。そして、これがコミュニティ文化といわれるものを形成していきます。

ソーシャルメディアは自己アピールに最高のツール(P32)

ブログで専門分野を、ツイッターフェイスブック人間性をアピールすれば、パンフレットの静止文字よりはるかに生き生きと見えることは間違いないでしょう。

江戸時代の商人、三河屋がビジネスのヒントになる(P71)

江戸時代の三河屋は、ご近所の1人ひとりについてどんなものが好きか、どんな悩みを持っているのかを日ごろのつきあいで自然に把握し、それを商売に生かしていました。そこには、売り込むための過剰な宣伝や厚化粧のブランディングは必要なく、顧客1人ひとりの好みに合ったものを適宜、提供していたのです。
町中で会えば挨拶や時には雑談を交わし、愛想がよく、町内の誰もが非常に好ましく思っています。もちろん、三河屋で扱う品はどれも質がよく安心して注文できることから、たとえば新しく町内に引っ越してきた人に、「買い物するなら三河屋がいいよ」と、ご近所さんがすすめてくれる。
相手が常連さんなら、好みも把握しているので、
「梅さん、やっといきのいいサンマが入ったよ。持って行きなよ」
こんな自然な会話で商売の輪が広がっていく。
(中略)
売り手と買い手が対話しながら、ともに良いサービスを作り上げ、誠実で思いやりある売り買いが行われること。

これは、日本文化の底流にある“主客一体”という思想です。

目的をしっかりと定める(P75)

…総合企業よりも先にソーシャルメディアを自社に取り入れるには、先にも述べた「何のためにソーシャルメディアを活用し、コミュニティを構築するのか」を明確にすること。コミュニティをビジネスにどのように活用するのかという目的をしっかり定めることが大切です。

顧客に対する貢献姿勢を明確にする(P88)

自社価値を見直す際に注目したいコンセプトがアドボカシー(顧客支援)という考え方です。これは、一時的に会社の利益に反してでも長期的な信頼を得ようとするもので、今までは高級ホテル、リッツ・カールトンや高級デパートのノードストロームなど、高付加価値企業にのみ許された経営コンセプトでした。

しかし、ソーシャルメディアにより感動が伝播される仕組みができたことで、その広告効果、ブランディング効果は以前と比較にならないほど強力になりました。そのため一般企業、特に高関与商品(よく考えて購入を決める商品)やサービスを扱う企業にとって有効な手法となったのです。

生活者と対話・交流する(P91)

生活者と直接対話することを恐れて、閉じこもっていては何も変わりません。匿名性の薄いソーシャルメディアでは、多くの生活者が善意で企業と接しているのです。その声と向き合い、傾聴し、誠実でオープンな姿勢で対話をすることこそ大切です。
人は交流を重ねれば重ねるほど愛着がわき、好きになっていくもの。それは対人でも対企業でも同じことなのです。

ソーシャルメディア=「生活者のコミュニケーション・インフラ」(P163)

メッセージを伝える主役は生活者です。100人の生活者が、自らの感想や感情を付加して次の人へとメッセージを伝え、そのメッセージを受け取った1万人の生活者(100人×100人)が、さらに異なる情報を付加して伝播する。

炎上を未然に防ぐ方法(P178)

・会員を招待・承認制、条件付きに限定し、匿名の不特定多数が発言できないようにする
・広告明示なしにブロガーに報酬を払って恣意的な記事を書かせない。また判断基準が未熟な子どもたちを利用しない
・独自ルールや文化を持っている他社コミュニティを安易に利用しない
・自社コミュニティのルールを明確にし、告知する
・自らの身元を明かし、透明性を保つ
・ウソをつかない
・コミュニケーションを拒否したり、無視したりしない
・謙虚な姿勢を崩さない
・ユーザーをリスペクトし、感謝の気持ちを持つ
・問題が起きた時は放置せず、迅速に対応する

未曾有の情報大爆発=信頼できる人の情報を重要視する時代(P212)

…人が処理可能な情報の量と実際の情報量は、1994年以降、その格差が急激に広がっています。1995年からの10年間で、実に情報量は400倍にも膨れあがっているのです。
しかも最新のデータは2005年のものですが、この時すでに人がこなせる情報の量は、選択可能な情報のうちの、わずか4%程度しかありません。残り96%もの消費されない情報に囲まれている時代なのです。まさに未曾有の情報大爆発に生活者たちは、苦しめられているといっても過言ではないのです。
(中略)
今、求められているのは情報の量ではなく質、つまり「もっとも信頼できる情報は何か?」「誰から得られる情報なのか?」という点にあります。以前であればその役割は各分野の専門家が担っていました。彼らが情報の良し悪しをチェックし、質の高い情報を生活者に提供していたのです。しかし、専門家というのはごく限られた資源です。しかも、この情報大爆発時代にすべての情報をチェックすることなどできないし、まして今や多様化する受け手のニーズに個別対応することもできません。
そこで、価値が高まっているのが集合知であり、動向と信頼の関係性の中で得られる情報です。

*1:著者ブログのプロフィールより

*2:グルーポンで購入したおせちが内容が写真と大きく違う、傷んでいた、遅配や届かなかったなどの苦情が殺到した件