が、内容はちょっと微妙。
おそらく、コンセプトは「今の時代、改めて貧乏について考える。貧乏でも生き抜く力を身につける」なのだと思う。
著者は今では知らない人はない有名な大学教授だが、実は『声に出して読みたい日本語』がベストセラーになるまでかなり大変な生活をされていたそうだ。大学院を卒業できず30代になっても定職なし、でも妻と子供2人を食べさせなければならない。
この時の苛烈な体験がこの本のベースになっている。
著者曰く、貧乏を力に変えるパターンは2つあるという。
- 貧乏長屋のように貧乏そのものを楽しむ
- 貧乏を二度と味わいたくない、その思いをバネに成功をめざす
確かに、どちらも一理ある。だが、本1冊を貫く主張に乏しいと感じた。寄せ集め感がぬぐえないのだ。
コンセプトは素晴らしいと思うが、貧乏の楽しみ方の例として将棋を覚えるとか、卓球(公共施設なら安いそうだ)をするというのは今の時代どうなんだろう(齋藤先生すみません)。
ただ、本そのものの評価は☆ふたつだが、キラリと光る記述はあちこちにあった。
「貧乏人の財産は時間だけ。その貴重な時間をインターネットで失うのはもったいない」というくだりは非常に耳が痛かった。
「貧乏10ヵ条」の中の“誇りを持ってプライドを捨てる”はこれから重要なことだと思うし、その項に出てくる「自己実現はリスクが高い。他者実現を目指せ」という学生へのことばは心に響いた。
他にも、貧乏なのに明るくたくましく生き抜くイラン人のエピソードが出てくる。ノート1冊で英語や日本語を覚えたり、どんどん相手の懐に入っていくやり方は「こういう人が生き残っていくんだな」と思った。
結局私のメモは、ほとんど貧乏と関係ないものになってしまった。気軽に読んでピンと来たものだけを取り入れる、という読み方ならいいかもしれない。シンプルライフや「貧乏でも心豊かな生活」の具体的ノウハウを求めて読むと期待はずれに終わりそうなのでご注意ください。
私のアクション:手帳に「今週のテーマ」を書く
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読書日記:『貧乏入門』
読書日記:『シンプルに生きる』
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
「一点集中」突破法(P35)
倹約するのはもともと好きだった。倹約してできたお金を本に使う。すると、一点豪華主義になる。服なんて買わず、食べ物もご飯に納豆でいい。そういう生活の中でほかを整理していくと、意識が一面化する。シンプルになり、研ぎすまされるようになる。そうすると、すべてのエネルギーが一点に集中していく。すると初めて、越えられなかった壁を突破できるようになる。
貧乏でも心を貧しくしない(P42)
そういう人は人から信頼される。だんだん金銭的にも豊かになっていくだろう。心が貧しくなく明るいというのは大切なことだ。犯罪に手を染めてしまうような貧しい地域のスラム的な雰囲気とはぜんぜんちがう。
それを分けるものは、学ぶ意欲だ。
テーマを明確にするには、手帳が有効(P134)
手帳を開き、自分の一週間のテーマを上に書く。1週間、1ヶ月で何を成し遂げたかを書くのだ。
(中略)
ここで運動したとか、仕事でこの人に会ったとか、予定の前に準備しておくことを書いておく。書いておくと、この1週間こんなテーマで、と見えてきやすくなる。手帳は予定を書くだけのためではなくて、1週間単位の仕事のシミュレーションをしたり、仕事のテーマをはっきりさせて、1年のイメージをもったりすることができる。
書くことを通じて、1年後には絶対こうなっているぞという強いイメージを持つことが大切だ。
手帳を持って、テーマを書き込み続けると絶対変わってくる。
情報を得る本と、血や肉、骨格にする本は別(P196)
血や肉にする本は、身銭を切っていつも持って歩く。そして、空き時間に必ず読む。
