毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

思ったほど人は賢くない?☆☆

しまった! 「失敗の心理」を科学する
ジョゼフ・T・ハリナン
講談社(2010/01/26)
¥1,575
この本も、以前ビジネスブックマラソンで紹介されていたもの。土井さんの評価がかなり高く、「失敗学」に興味がある私は期待して読んだが、考えていたものとはちょっと違うジャンルの本だった。
ビジネスブックマラソンの紹介記事はこちら


サブタイトルに「失敗の心理」とあるが、どちらかというと認識学とか行動学といった方面の話なのではないだろうか。ヒヤリハットをどう防ぐか、という内容を期待して読むと肩すかしを食らった気分になるので注意が必要だ。

だが、土井さんも勧めるだけあって、知的読み物としてはなかなか面白かった。
特に、「マルチタスクは幻想」というところが、私にはとても響いた。マルチタスク人間にならなければ、という強迫観念のような気持ちを持つ人も多いと思うが、この本の該当ページを読めばそれは無理だ、と潔くあきらめられる(下のメモに一部抜粋してあります)。人の頭はパソコンとは違う。

他にも、人は外見や思い込みや条件といったものに判断を左右されているとか、いわゆる常識が音を立てて崩れそうな内容が次々と出てくる。しっかりしているようで案外いいかげんなものだな、と半ばあきれながら思った。脳は自分の都合のいいように記憶を変えると聞いたことがあるが、自分を守るためにそういった各種機能があるのかもしれない。

内容は多岐にわたるので*1ビジネスブックマラソンの紹介記事を読んでみて、気に入った方はどうぞ。
私のアクション:作業はできるだけシングルタスクを心がける


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

人はめったに考えを変えない(P87)

そもそも考えを変えていても、そのことに気づかない。そして大多数の人は、考えを変えたあとに過去の意見を修正してしまい、自分は昔からずっと同じ考えだったと思いこむ。

マルチタスクで得をする」は幻想(P114)

作業を一度に複数こなそうとすると、脳の回転は遅くなるのだから。たとえば階段を二段おきに上がっても、余分に苦労したあげく一段ずつ上がるのと同じ時間がかかったら、ちっとも得にならない。要するに、ふたつの知的作業を同時に実行しようとすればそうなるのだ。

作業から作業へとスイッチする問題点(P114)

そのひとつが自分のしていたこと、しようとしていたことを忘れてしまうことだ。この脳内行動予定リストは「作動記憶」と呼ばれている。短時間、記憶すべきことを、たとえば人がいま口に出したメールアドレスを記憶する。だが作動記憶の内容は、砂漠の水のようにすぐ消えてしまう。
(中略)
もうひとつの損失は、「不稼働時間」である。ひとつの仕事をしていて、いったん中断をして別の仕事をしたあとで、もとの仕事にまた意識を戻すのには、多少の時間がかかる。職場問題の研究によれば、電話などで気を散らされたあとに深い集中力を取り戻すには、最長で15分ほどかかるという。

利益を考える時、人は保守的になる(P134)

このパターンは、一部には人間のリスク認知のしかたから生じているようだ。
(※以下、オレゴン大学心理学教授ポール・スロヴィックのことば)
「人がリスクを分析するシステムはふたつある。無意識で直感的なシステムと周到に考えるシステムだ。リスク認知は概して感情に関するものだから、たいがいは無意識のシステムを使っている」

人はマルチタスクには不向き(P112)

ちなみに、コンピュータにもマルチタスクはできない。実は、1秒間に数千回もの速さでタスク間を行き来し、すべてが同時に起きているように錯覚させているだけだ。
私たちの脳も同じ錯覚は与えるが、残念ながら同じ成果はもたらさない。ふたつの作業に同時に意識を振り分けることはできない。決まった条件の下で、ふたつのことに同時に気づくことはあっても、ふたつの意識的な決断を同時に下すことはあり得ない。

人は得意ことほどスキムしがちである(P154)

※スキム=情報の表面的な理解
初見視奏という言葉がある。楽譜を初めて見て練習なしで演奏することをいう。初見視奏の得意な人は、楽譜の音符をひとつずつ見てはいない。知っているパターンや、そのパターンのきっかけを探す。なるほど、いくつかの認知単位にまとめて、処理しているように見える。こうたとえてもいい――「星のひとつずつではなく、星座を見ている」。このおかげで、他の音楽家であれば練習を積まないと得られないスピードとなめらかさで、視奏することができるのだ。
(中略)
この傾向は、私たちがなぜ自分のミスに気づかないのかを理解するために大きな意味を持つ。ものを見慣れるにつれて気づくことは増えず、むしろ減りがちである。ものごとをありのままにではなく、あるべき(と思う)ように見るからだ。この深く根ざした行動のせいで、音符のような小さなものばかりか、驚くほど大きなものも見逃しかねない。

記憶されたものは記憶する人の性格を反映する(P173)

同じ場面を目にした異なる人たちの記憶は異なるかもしれないが、それは記憶力のよしあしというより、見た人自身の性格にもよる。
バーレット(ケンブリッジ大学心理学者。古い原住民の民話を話して聞かせ、時間をおいてから思い出したことを書き出させる実験を行った)が言うように、合理化のプロセスとは「その作用をもたらす個人に特有の性質を持ち、その人の気質や性格に直結しがち」である。

結局のところ、人の幸せは、どこに住むかで決まるのではない(P295)

時間をどのように使うかだ。

*1:私のメモは興味のあるところだけにしたため、偏りがあります