本田直之さん監訳なので、期待を持って読んでみた。知的好奇心をくすぐられるような、なかなか面白い本だった。
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著者のジョン・ネスビッツは新しい社会の全体像をつかむ、いわゆる未来予測の方法を編み出したことで有名な人だ。
この本では具体的に未来を読み解くものの考え方(=マインドセット)を教えてくれる。これは実際に本田さんが、毎年末に翌年以降の社会の流れを予測する時に使っている手法だそうだ。
この「ものの考え方」は11にまとめられている。
- 変わらないものの方が多い
- 未来は現在に組み込まれている
- ゲームのスコアに注目せよ
- 正しくある必要はないということを理解せよ
- 未来はジグソーパズルだ
- パレードの先を行きすぎるな
- 変わるか否かは利益次第である
- ものごとは、常に予想より遅く起きる
- 結果を得るには、問題解決よりもチャンスを生かすべし
- 足し算は引き算の後で
- テクノロジーの生態を考える
(著者によれば、最も重要なのは「正しくある必要はないということを理解する」、2番目は「パレードの先を行きすぎるな」)
第1部がマインドセットそのものに関する記述、第2部がそれを使って実際に世界の情勢を予測する内容になっている。
原書が出たのが2006年なので、第2部には少しずれていたり、残念ながらはずしているものもある。だが、当てずっぽうでカンに頼るよりも、はるかに精度の高い手法だと感じた。
こういう考え方は学ぶ機会がないし、ふつうに生活していて身につくものでもない。
著者ほど具体的に、明快に予測することはできなくても、少なくとも自分に直接関係のある分野だけでもある程度の予測がつけばこんなに素晴らしいことはない。
ものの見方が少し変わる本。予測が楽しくなるかも。
予測の必要な仕事の人はもちろん、単なる好奇心から読んでも面白い本だと思う。
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
自分の得になるとわかれば、人は変化を受け入れる(P97)
…強情や無知から変化を拒む場合もあるが、人生の進展を好む人々は変化に対応できないからというだけで変化に反対したりはしない。逆に、人は自分の得になると気づけば変化を受け入れるものだ。
「情報の墓場」を作らない(P133)
空腹の時に買い物に行ってはいけない、と昔から言われている。使い切れない食べ物をカゴいっぱい積み上げることになる。
知性を養うことでは、私たちはしばしばこれと同じことをする。私たちは情報のスーパーマーケットの中で、圧倒され、本当に必要としているものを選び出すことはなかなかむずかしい。私たちがめざすべきは、情報の墓場を作ることではなく、知識とインスピレーションのゆりかごを作ることでなければならない。
一度に7つ以上のことを抱え込まない(P133)
もし7つのことを追求しようと決め、新たに追求すべきものが現れたら、あなたないし世間が関心を失っているものをひとつ捨てること。それが変化するのは、世界が動いているからである。
老子のことば(P134)
「知識を得るには、日々、物事を加えよ。知恵を得るには、日々、物事を捨て去れ」