ずいぶん前に家族が買ってきて、そのままになっていた本。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の100回記念スペシャルをまとめたものだ。
この時の放送は見ていたので、読み返して懐かしいな、と思った。
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ただ、見た記憶はあるが忘れていることもたくさんあった。スタジオのお客さんの質問に答えるところから、さらにくわしい解説もまとめられていて、とてもわかりやすい。番組もかなり見たし、茂木さんの本もずいぶん読んでいるが、“なるほど、そうだったのか”と思ったところがいくつもあった(くわしくは下のメモをご覧下さい)。
たとえば、小さな成功を積み重ねる意味。脳を集中モードに切り替えるには「体を動かす」というのも、知っているようで意識したことがなかった。
また、この番組のもうひとつの醍醐味はプロフェッショナルの体験から出た言葉が聞けること。この本では特に「成功」や「自信」に関する言葉をたくさん知ることができ、読んでいて楽しかった。
形を変えて続いている「プロフェッショナル 仕事の流儀」。今でも良質なドキュメンタリー番組なのは間違いないが、時々あった「脳スペシャル」も含め、初期の形式の方が面白かったな、と少し残念な気持ちになった。
今となっては貴重な番組の記録、ピンと来た方はぜひ読んでみてください。
※続編もあります『プロフェッショナルたちの脳活用法〈2〉(生活人新書)』
私のアクション:無条件に自分を信じる
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
脳は“何も情報がない”状態は苦手(P18)
…情報が入ってこない状況に置かれると、脳は淋しくなって、何か情報はないだろうかと必死になって探し始める。
脳は仮説を持っている(P35)
見えるもの、また見ようとしているものに対して、われわれの脳の中にはあらかじめ「世界はこうなっている」という仮説ができあがっている。脳は、仮説にあった素材だけを選んで集めて、像を結ぶ。そのため、いらないものは見ていない。見えているのは、欲しい情報だけといっても過言ではない。
脳を集中モードに切り替えるための大事なポイントは「体を動かす」(P65)
吉高まりさん(環境金融コンサルタント)のことば(P71)
「やはり、自分から求めて動かないと、やりたいものは見つからない。悩んでいるだけでは絶対に見つからないので、無駄でもいいから行動してみるとか、とにかく心の底から求めていかないと、おそらく何も出てこないのではないでしょうか」
じたばたする(P73)
前例がなく、答を自分で生み出さなければならないような問題は、じたばたすること自体が答を導くヒントになる。大人になっても、新たなことにチャレンジしようとするならば、もっとじたばたするべきだと私は思っている。
「喜び」の大きさは成功に至るまでの負荷の大きさに比例する(P83)
困難な仕事をやり遂げた時の達成感や充実感は、誰もが一度や二度は味わった経験があるはずだ。その「喜び」をもたらしてくれる方法が…「ちょっとした背伸び」なのである。
楽な道を行けば、苦労もせずにすむ。背伸びをすれば、ふだんよりも「つらい」と感じる。しかし、人間の脳というものは、辛いことを乗り越えた先にうれしいゴールがあることがわかっていると、そのつらさに耐えられるようにできている。
加藤博義さん(日産自動車・テストドライバー)のことば(P85)
「仕事中の冗談も、余裕を生むためといえるかもしれませんね。やはり人間が一番余裕を持てるのは、笑う時でしょう。仕事だからとピリピリするよりも、笑えるぐらいの方が、私も周りの人間も実力が出せるような気がするんですよ。プレッシャー、プレッシャーの連続では、やっぱり萎縮してしまいますよね」
“小さな成功”を積み重ねる意味(P113)
たとえ小さな課題でも、「これをクリアできたらうれしい」と思えることが見つかれば、脳はやる気モードを立ち上げることができる。小さな成功でも、「クリアできた」ことによって、脳の中ではドーパミンという報酬物質が放出され、脳は「快感」という喜びを得る。そして、苦しみを乗り越えれば快感が待っているという図式が脳に刻み込まれれば、逆境の中でもやる気を出すことができるようになるのだ。
古野隆雄さん(アイガモ農家)のことば(P118)
「私は、実力が自信を作るのではなく、自信が実力を作るのではないかと思うんです」
上田義彦さん(写真家)のことば(P120)
「自分を信じるのは、当たり前のことだと思うんです。人はみな、いろいろなことに出合ったり、経験したり、巻き込まれたりしていきますが、自分を信じていないと、翻弄されて思わぬ方向に行ってしまうのではないでしょうか。僕にとって自分を信じるというのは、原始的なものです。言うなれば、生命に似ている。それがなければ生きていけないというか、あって当たり前だろうという感覚です」
山口千尋さん(靴職人)のことば(P120)
「挑戦し続けるためには、自分を信じる力が必要です。自分を信じられなくなると、とたんに人は辞めていくんですよ。信じるというのは、自分の実力を信じるということではないんです。昨日の自分があこがれたものが間違っていないと信じることです。昨日の自分を一度でも否定してしまった人間は、その先、自分をもう一度信じ直すことができなくて苦労するんです」
吉田憲一さん(漁船内で加工するファクトリーマネージャー)のことば(P142)
「…私は自分のやっていることで後悔したくないんですよ。やるだけやらないと後悔しますよね。その時のつらさの方が、がんばるつらさよりも耐えがたいと思うんです。そういうことって、ありますよね。『あの時に、もうちょっとがんばっていればよかった』と、思ったりすることが」
「1勝より、一生」(藤澤和雄さんのことば)(P159)
レースで勝つことのむずかしさと重要性を誰よりも知っていながら、藤澤さんは目先の一勝よりも、1頭1頭の一生を考えて育てていると話していた。
茂木式:“だるまさんがころんだ仕事術”(P185)
…ごくごく短い細切れの時間でも、その瞬間だけ「エイヤッ!」と集中して、できる作業をやってしまうのだ。これを習慣にすると、たとえばメールの返信などは2〜3分の細切れ時間で充分にできるようになる。むしろ、2〜3分という制約があるおかげで、瞬発力と集中力が発揮できる。
大きな成功は、試行錯誤と、小さな成功体験の延長線上にある(P189)
…鉄棒の例で説明すれば、2、3回逆上がりができた程度では、大車輪は無理だということだ。ましてオリンピッククラスの体操選手にしかできないような鉄棒の大技をマスターしようと思ったら、逆上がりレベルの小さな成功を何千回、何万回とくり返し、技の難易度を地道に上げていく苦労が絶対に必要になってくる。大きな成功をつかみたかったら、大言壮語を並べる前に、小さな成功を積み重ねる努力を忘れてはならない。
自分の成果を振り返ることに意味がある(P189)
成功体験を振り返ることは、脳内に構築されている神経回路を使って体験をシミュレーションすることであり、イメージトレーニングと同じ作用がある。これによって強化学習のサイクルが回り、技術のレベルアップを促すことが可能になる(=将棋の感想戦に同じ効果有り)
佐藤可士和さん(アートディレクター)のことば(P209)
「自分は競争の最前線にいるから、いつも何がよいのかをすごく考えているんです。そうすると、いろんな意味で、『自然にしている』『自分の気持ちに嘘をつかない』ということが一番強いのかな、と。デザインも人間も同じで、大切なのは無理をしないこと」