印象派に関する本を集中して読んでいる家族が新たに借りてきた本。タイミングよくこの秋出た新しい本だった。新書だが、たくさんの絵がカラーで掲載され、色が鮮明で高級な美術書じゃなくても充分楽しめた。
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この本では絵が年代別ではなく、セーヌ川の流れに沿って(つまり描かれた場所ごとに)取り上げられている斬新なスタイルだ。時代背景や風俗にも触れられていて、今までとは違う絵の見方を知ることができる。
著者・島田紀夫さんは石橋財団ブリヂストン美術館館長。印象派研究の第一人者だけあって、非常に細かく深い見方が全体を貫いている。
たとえば、カンバスを並べて描いたと思われるモネとルノワールの絵の違い。見たままを描いたルノワールに対し、意図を持って構図や背景を変えたモネ。
他にも、光の具合から季節や時間帯を特定したり、教会などの建物の遠景から、誰のアトリエのどの窓から見て描いたものかを推定するなど、普通に見ていたのではわからないものすごい情報量。美術史とはこういうものなのか、と衝撃を受けた。まるで謎を解き明かすミステリーのようだ。
実はこの本、『セーヌの印象派』として15年以上も前に出された本の改訂版だそうだ。
全体の内容にも手を入れてあるが、大きな違いは最終章「セーヌ川に魅せられた日本人画家」が追加されていること。
でも、これに価値を見出す印象派ファンがどれだけいるのかは、正直言って疑問に感じた。
気軽に読めて楽しめる本。興味の湧いた方はこの機会にどうぞ。
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