家族が借りてきた本。面白そうだったので読んでみた。価格は2000円以下だが、ハードカバーで翻訳もの、なかなか“噛みごたえ”ある本だった。
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著者ふたりは、大学で人間の記憶やメタ認知について研究している。
ご存じの方もあるかもしれないが、次のビデオがふたりを有名にしたものだ。
白いシャツを着た人と黒いシャツを着た人がそれぞれバスケットボールのパスを行っている。黒いシャツのバスは無視し、白いシャツのパスだけをすべて数えてください。
http://youtu.be/vJG698U2Mvo
【以下ネタバレ】
私はこの映像そのままではないが、どこかのテレビ番組で見たことがある*1。
実はこれ、パスを数えるのが本当の目的ではない。一生懸命パスを数えている時に、実はゴリラの着ぐるみが右から出てきて胸を叩き、左に消えていく。それが気づいたかどうかが本当の質問なのだ。
性別や年齢、学力レベルに関係なく、気づくのはほぼ半分だそうだ。
人は見たものをきちんと認識していて、もし何か変わったことがあれば気づくと思っている。しかし、それは錯覚・思い込みなのだ、というのがこの本のテーマだ。
この本に寄れば、日常的な錯覚は6つに分類できる。
- 注意力
- 記憶力
- 自信
- 知識
- 原因
- 可能性
読み進むうちに、自分は大丈夫と思っていることや当たり前と感じている常識・判断などがゆらぎ出す。行動経済学の本を読んだ時にも感じたが、人間は実はとても頼りない生き物なのではないか、と思ってしまった。
正しく何をどう「錯覚」するのかがわかれば、対処できる。いかに人間がふだん根拠なく過信しているかを知れば、謙虚に冷静に考えて判断することもできる。知っておいて損はないと思う。
著者はアカデミックな立場であり、「科学的」ということに非常に重きを置いている。
ただ、私はこの本で「単なる思い込みに過ぎない」と判断されたある考え方を確信している人たちの話を聞く機会があり、信頼できると感じたことがある。確かに根拠にできるデータは少ないのかもしれないが、こんなに簡単に断言していいのかと疑問に感じたので、☆はふたつにした。
思い込みゼロというのはなかなかむずかしいのかもしれない。
知的読みものが好きな人、読みごたえのある本が好きな人には楽しめる1冊。
私のアクション:確信している時ほど自分を疑ってみる
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