毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

実用書の文章はこう書け☆☆☆

タイトルの通り、“理系の、理系による、理系のための文章論”。野口悠紀雄著『「超」文章法』で紹介されていたので読んでみた。1981年に出た本だが、今も毎年重版されるほどロングセラーになっているという。それも納得といういい本だった。

理科系の仕事の文書を書く時の心得(P6)
1.主題について述べるとき事実と意見を充分に精選し、
2.それらを、事実と意見とを峻別しながら、順序よく、明快・簡潔に記述する

この心得についてまとめられた本だ。あくまで理系の人が論文などを書く時にどうすればいいか、が中心になっている。ただし、説明書やマニュアルなどもこれに含まれるため、理系の論文とは縁のない人も、実用文書の書き方として参考になる点はたくさんある。


著者は英語も堪能だったと見え、欧米の書物からの引用が多い。欧米では“正確に情報を伝え、筋道を立てて意見を述べることを目的とする”訓練が充実しているそうだ。アメリカの大学でのレポートの多さやテーマの大きさなどを考えれば、それも当然のことだろう。そういった日本ではあまりなじみのない考え方やノウハウが簡潔に示されているので、目から鱗が落ちることがいくつもあった。

さまざまなところから取った“よくない例”を著者自身が書き直した「Before/After」が数多く出てくるが、これがびっくりするくらい読みやすく、わかりやすくなっているのだ。まさか物理学者の書いた本で文章術を教わるとは思わなかった。


私は今まで前後の語句によって漢字/ひらがなを使い分ける*1という方法が好きになれなかった。いくら敬愛する糸井重里さんが川上弘美さんとの対談で「そんなの当然だよね」と(注・あくまでニュアンスです)とうなずき合っていても、私は一度「初めて」と書くと決めたら、その文章では前後に何が来ようと「はじめて」は使いたくない、と思っていた。
だが、この本を読んではじめて納得した。案外、理系の人は理路整然と説明するので受け取りやすいのかもしれない。

ひとつ残念だったのは、「演習」というものが何回か出てくるのに、答がないこと。模範解答がないとやる気になれない。

理系の人には素晴らしい本だし、そうじゃない人にも、読めるところだけでも得るものは多いはず。
英語と日本語の違いなど、言語学的な部分もたくさん出てくるので、そういう楽しみ方もできます。
著者はこのほかにも日本語に関する著書を出しているそうだ。他の本も読んでみたい。
私のアクション:漢字とかなの使い分けを「字面の白さ」で考える
関連記事
読書日記:『「超」文章法』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。

トピック・センテンス(P63)

パラグラフは…内容的に連結されたいくつかの文章の集まりで、全体として、あるひとつのトピック(小主題)についてあるひとつのこと(考え)を言う(記述する、明言する、主張する)ものである。
(中略)
パラグラフには、そこで何について何を言おうとするのかを一口に、概論的に述べた文が含まれるのが通例である。これをトピック・センテンスという。
(中略)
トピック・センテンスは…パラグラフの最初に書くのが建前である。

事実と意見を分ける(P103)

…読者諸氏はしばらくの間、新聞を読み、雑誌を読むたびに、「どこまでが事実か、どこからが意見か」を読み分ける努力をして頂きたい。
(中略)
文章を書く際に
1.事実と意見をきちんと書き分ける
2.仕事の文書では、事実の裏打ちのない意見の記述は避ける
…その前提となるのは事実と意見とを峻別する鋭い感覚である。

わかりやすく簡潔な表現:3つの心得(P120)

1.まず、書きたいことをひとつひとつ短い文にまとめる
2.それらを論理的にきちっとつないでいく
3.いつでも「その文の中では何が主語か」をはっきり意識して書く

明快な文章を書くためには(P123)

文の途中で<頭>(主語)がすげ替えられていたり、あるべきことばが抜けていたりする時に、すぐそれに気づく敏感さが必要である。そのためには、文章を読んでいて「ちょっとおかしいな」と感じるたびに、必ず読み返してどこがおかしいのかを突き止める習慣をつけるのがいい。

漢字の使い方(P149)

私は、字面の白さを考えに入れて、原則として表8.2(省略。初めて→はじめて/再び→ふたたびなど、どの漢字を開くかをまとめたもの)の記法に従う。<原則として>とことわるのは、かなばかりが続く文――白すぎる文――は読みにくいから、時には<ふたたび>を<再び>と書き、<おぼえる>を<覚える>と書くこともあるという意味だ。約言すれば、私はいつも<適当な白さ>で書くことを最大の要件とするのである。
(中略)
漢字の使い方について私が気をつけていることのひとつは
<漢字だけで書くことば>をベタにふたつ続けるのは避ける
ことだ。
(例:比較的少ない→比較的すくない)

*1:例:「初めて」と「はじめて」を両方使う