著者はプロデューサーであり、自ら「対談師」を名乗るおちまさとさん。どうやったら9割もしゃべってもらえるのか興味がわいて読んでみた。
著者はあまり本音をしゃべらないイメージの政治家や多くの有名人と対談し、いろいろなことを聞き出してきた才能の持ち主だ。
そう、才能なのだ。読んで思ったのは、「まったく質問力のない素人がやるには高度すぎるのでは?」ということ。
著者がしているのはインタビューや対談なので、ワザもそれがベースになっている。一般の人が1対1で話す時にそのまま使うのはむずかしい気がした(事前の質問の作り方など)。
また、おべっかや社交辞令を言うのも時間のムダ、と書いてあったが、後半に矛盾するような内容も。「対談師」を名乗るそのワザに興味があっていくつか実際の対談をネット上で探したが、「これ、おべっかじゃないの?」という発言もあった*1。
Howtoものとして読むとむずかしいが、人のありよう、心がまえとして読めばいろいろと学べる点がある。
質問力の基本はブレないこと、いつもフラットであること。
相手に純粋に興味を持ち、リスペクトと理解したいという気持ちを持つこと。
質問することで相手に気持ちよくなってもらうこと。
小手先のテクニックに走るのではなく、まずその基本をしっかり身につけること。その後はじめてこの本に書いてあるさまざまなやり方が活きてくるのだろう。
巻末の質問エクササイズ集も、質問力だけを上げるのではなく、人間力をまるごと上げてくれそうなものだ。
ある程度人とはしゃべれる、基本はマスターできた、というタイミングで読むのがお勧め。相手の懐に飛び込む、対話を深めたいといった時に役に立ちそうだ。
私のアクション:“ブレない自分”をつくる
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
常にフラットでいる(P28)
ここで言うフラットとは、本当のことを言い続けるということ。周りの意見や状況によって、自分の考えをコロコロ変えないということです。
(ツイッターなどで)「おかしい」と指摘されたら、「どんなところが?」と質問して、本当に納得したら「なるほど、そうか」と答えればいい。もちろん「いま迷っています」や「もう少し考えてみたい」もあり。大切なのは、その瞬間、瞬間がすべて本心であることだと思うのです。
言い換えれば、ブレないということでしょうか。
プロデュースの仕事も同じ(P35)
プロデュースは“未来”を仕掛けていく仕事。でも、「この先、何が流行るか、何が売れるか」と時代を予想し、そればかりに合わせて企画を考えると、たいてい失敗します。時代に合わせようと思った時点で後追いになるからです。
(中略)
ところが、何がウケるかではなく、何をやりたいかだけを貫いていると、時代の方が追いかけてくれることがあります。
質問力をつけるには、フラットな自分という確かな根っこが必要(P36)
いつも変わらない自分の背骨がないと、疑問を持つことがむずかしくなってしまいます。自分の尺度がなくなり、何が起きても「まあ、そんなものか」と大多数の意見に流されがちだからです。
相手に合わせたキャラ作りは時間のムダ(P45)
…自分を変えないノーボーダーを目指すのも、相手に合わせていちいちキャラ作りをするような、そんな時間がもったいないと思うからです。
バカだと思われるくらいの質問でいい(P48)
初心者が陥りやすい落とし穴は…“自分をちょっと上に見せたい”心理です。
(中略)
どう思われるかなど気にせず、相手に興味を寄せて「これを聞きたい!」と思ったことを素直に質問すればいいのです。
大切なのは「リスペクト」と「理解」(P51)
自分の心の根っこに、相手に対する尊敬の気持ちをしっかりと置いてさえいれば、いちいち「これは失礼か、そうじゃないか」などと考えなくても、相手を傷つけたり茶化したりする言葉は自然と出てこなくなるもの。
(中略)
…もうひとつ大切なのが、相手を理解しようとする態度です。
(中略)
いくら聞いてもわからないかもしれない。でも、なんとか理解しようとするから質問が生まれるんだと僕は思います。
心理テストを作るつもりで質問を考える(P53)
…質問は、精神分析とか性格診断のような側面もあるのですね。
(中略)
…事前に質問を考える時は、こうした心理テストを作るつもりになるといいかもしれません。また、最後の“○○型”から逆算すれば、そこにたどり着くためにどんな質問が必要か想定できるのではないでしょうか。
80パーセントの自分でいいや、と開き直る(P76)
緊張するのは、自分以上の自分を見せようとするからです。それをやめれば余裕が生まれるし、あがったりしない。
“そもそも力”で相手の核心に近づく(P95)
「そもそも、なぜこの会社に入ったのですか?」
「そもそも、この作品の発想はどこから生まれたのですか?」
このような「そもそも」で始まる問いは、その後の会話をどんどん広げてくれる、かなり使える質問です。
(中略)
以前から僕は、この“そもそも力”を活用しています。…自分で自分に問いかける時、この「そもそも」を使うのです。
「そもそも、オレって何でこの仕事始めたんだっけ?」
すると初心に返って、自分の夢や目標に改めて気づく。「あ〜、そうだった」とブレかけていた自分を立てなおし、もう一度、自分を初期化することができるのです。
相手を上機嫌にする質問術(P117)
質問に答えることで、相手がどんどん気持ちよくなっていく。それが、僕が考える質問術のコンセプトです。
理想は、相手に上機嫌で帰っていただくこと。最初に会った時よりも表情が明るくなって、「君と話したら、元気になったよ」などと言われれば、もう最高です。
「現在→過去→現在→未来」の順で聞く(P132)
映画の構成でよくありますね。
(中略)
時間軸を飛び越えていったん過去に戻ることで、観客の興味を引きつける。
「過去→現在→未来」と時系列で淡々と物語が進むよりドラマチックな効果が出せる。
(中略)
この構成の中心は、あくまでも現在です。過去は現在を盛り上げる小道具、そしてまだ見ぬ未来はしょせん空想の話なので、あまり長く時間を取る必要はありません。
相手がデジタル派かアナログ派か見抜く(P134)
よくしゃべる人は、時計でいえばデジタル派だと考えてください。連続的に時間を表示するアナログ時計と違い、要するに非連続でOKということ。
たとえば映画の話をしてしても、途中で「好きな食べものは?」と聞かれたら、カチッと反応して「オレ、バナナ」なんて答えてくれる。前と後の話題がつながっていなくても気にしないのです。
(中略)
相手がアナログ派の場合、そうはいきません。
映画といえば芸術の秋→秋といえば食欲の秋→食欲といえば好きな食べものは?
このように、きれいにつながりをつけて聞かないと、なかなか満足してもらえない。
「こんなバラバラな話でいいの?」と、“話した感”を持ってもらえないのです。
*1:ご本人は心からそう言っているからおべっかじゃない、と言われるのかもしれません