先に読んだ『日本という方法―おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)』が私にとってはとても面白かったので、中に出てきたこの本も読んでみた。私自身も「こわれやすいもの」「はかないもの」に惹かれるところがあるので。
タイトルだけ見て図書館で借りたら驚いた。3センチを超えるハードカバーで価格が3200円の大作だった。著者はこの本を“風変わりなエッセイ”と書いているが、とても定義のむずかしい本だ。「フラジャイル」をキーワードに、話は現代から神話まで、ヨーロッパの話から東洋へ、哲学から優生学へと変幻自在に展開する。これだけの知識と情報を自分のものにして書けるとは、いったいこの人の頭の中はどうなっているんだろう、と今回はさらに強く思った。
本の中に出てくる本のタイトルや人名はおびただしい数だ。後ろに索引が載っているエッセイなんて他にあるだろうか。
これを全部押さえようとするととても最後まで読めないので、あまりこだわらずにどんどん読み進んだ。それでも充分面白い。
ぼんやりと思っていることを言語化して差しだしてもらえるとうれしいし、新しいものの見方を知るのは楽しい。
フラジャイルとは実にたくさんのものを内包しており、弱さは強さであることや、実は強さはあとから定義づけられたものであり、強さを際立たせるものとして弱さが利用された、という考え方は深く共感を覚えた。
こんな知的好奇心を満足させてくれる本はなかなかない。『日本という方法』を読むきっかけをくれたダン・コーガイ氏に感謝。
私はとても楽しく読んだが、一方で「こんな本誰が読むんだろう」とも思ったので、☆は4つ。
関連記事
読書日記:『日本という方法』