「調べる力」と聞いたら当時のふがいなさを思い出し、読みたくなった。イメージとは違ったが、内容の濃い本だった。
著者の関沢英彦さんはコピーライター出身で、博報堂生活総合研究所長もつとめた、言わば調べるプロだ。
ネットで検索して、上位に表示されたサイトだけでまとめてしまうと、レポートやプレゼンの内容が他と一緒になる危険が高くなってしまう。
さらに、ネットではさまざまな情報が混在しているので、それが本当に信頼できる情報なのかがわからない。
どうすればそれを防ぎ、確実な情報にたどり着けるのか。それがこの本のテーマだ。
ネットももちろん使うが、大切なのは「リアル」でどう動くか。
ネットとの組み合わせ方や、調べる順序などが具体的に示されている。
この本はマーケティングや新商品開発など、専門的な人向けの内容になっているが、学生や一般の人でも使える方法がたくさんある。
具体的なネットの使い方や役に立つサイト、リアルでの動き方・足の使い方などは、長年リサーチを続けてきた著者にしか書けないものだと思う。
五感を大切にすること、五感が働かなくなっている場合は、まず情報断食をしてみること、というのが新鮮だった。
何かを知りたいと思ったらネットで見ておしまい、という人すべてにぜひ読んでもらいたい本。さらっと読めるので、自分が必要なところをチェックするだけでも、発見があるはずです。
私のアクション:外に出た時、自分の五感を意識してみる
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
「調べる」には2種類ある(P6)
1.かかわっている要因を見つける=「糸口さがし」
2.要因を絞る=「犯人さがし」
情報の種類は3つ(P87)
1.2次情報=新聞・雑誌・テレビ・書籍などから得られる情報。「他人が情報収集してまとめた資料」
2.1次情報=自分がまとめたもの。生情報
3.0次情報=自分の過去の生活において蓄えられてきた記憶
新聞の切り抜きは使える(P89)
新聞は、毎日配達される情報源として、もっと活用すべきである。…(当日は)「目を通す」程度にすませておけばいい。
ためておいて、週末にでも「切り抜き」をしよう。
(中略)
まとまった新聞を読むと、見えなかったストーリーが見えてくる。…といったパターンを見出せる。
こうしたパターンを見つけたあとにインターネットで検索すると、精度が高い。
1次情報はナマで自分が仕入れることに意味がある(P90)
人に会う、町を歩くことで手に入る。
0次情報は、井戸をイメージするとよい(P91)
意識的にモノを感じるとか考える層よりも、もっと深いところに潜っていく。…井戸を降りていくとは、意識から無意識へと心の中を潜っていくことになる。
自分の井戸に言葉を投げ込んでやる(P93)
そうすると、いろいろなイメージが浮上する。
(中略)
…0次情報で…イメージを広げておくと、1次情報を集める時も、質問が具体的になる。あるいは、2次情報の資料を読んでいても、その分析者のレベルがよくわかる。
「ああ、この人は、アタマだけで考えたプランを語っている。これでは、うまくいかない」といった識別能力が高まるのだ。
0次情報は「糸口さがし」に使える(P96)
0次情報は、マーケティングにおいて、消費者の無意識が求めているものの「糸口さがし」に役立つ。他の2次情報・1次情報と組み合わせていくことで、新商品を開発する時や、訴求力のあるコミュニケーション戦略を考える時に有効である。
マーケティングで言う「価値」には2種類ある(P102)
「S(ソリューション)型価値」…消費者が問題であると感じていたことを解決する
「D(ドリーム)型価値」…消費者に新しい夢を与える
イメージ検索を使おう(P124)
イメージ検索をして、その後で、その画像を含むウェブ本体に行くと、ウェブ検索とは違うサイトが上がってくるのである。
(中略)
イメージ検索の場合は、検索結果の画面は、ずらっと画像が一覧できる。
それを見ていくことで、信頼度の高さについて検討がつくという利点もある。
(中略)
このようにイメージ検索は、ウェブ検索しかしていない人に比べて、発想が大きく広がる。
SNSを使う3つの調査法(P149)
1.波紋法…(特にツイッターで有効)意図的に何かをつぶやくと、同意や反対の意見が集まってくる。
2.傍観法…ひたすら検索をして、内容を読み込んでいく方法。
3.質問法…端的に質問を投げかけてしまう。
調べることに速度が求められる時には、最適。
調べる「4つの動き」(P256)
アナログで、半日でもいいから調べる。
それからウェブサイトを本格的にチェックする。
そのことで、1次情報を集める場合の「焦点」も見えてくる。動詞で言うなら
「(本のページを)めくる」
「(パソコンのキーボードを)たたく」
「(街を)歩く」
「(人と)話す」
*1:ずいぶん前なので。当時はそういうものがちらほらありました