今まで「日本人は粗食が一番」と信じてできる範囲で実践してきたが、それがよかったのか自問してしまう内容だった。ちょっとしたカルチャーショック。
この本は、長年にわたり高齢者の栄養状態を疫学調査してきた結果をまとめたものだ。大規模に継続して行った調査は世界的にもあまり例がないそうだ。
あくまで「データからいえること」なので、“多数決の論理”を人の健康の尺度に使うのはどうだろう、と思ったが、読んでみるとなかなか説得力があった。
今盛んに言われている「メタボ対策」は、実は高齢者にとっては逆に健康状態を悪くさせてしまうのだそうだ。なぜなら、年齢とともに吸収力が下がったり、味の好みが変わったりして自然に摂取カロリーが減ってしまうのに、若い時と同じようにカロリーを摂りすぎない、動物性たんぱく質を抑えるなどを続けた結果、「栄養失調」になっているシニアが多いのだという。タイトルの「50歳を過ぎたら」というのは、ここから来ている。つまり、メタボ対策は40代までで、50代からは栄養失調にならない食生活にシフトする必要があるという。
日本人の寿命が一気に伸びたのは、戦後食生活が大きく変わり、洋風のメニューが食卓に並ぶようになった時期からなのだそうだ。
さらに、食事が欧米化した結果ガンが増えると言われていたが、ある程度は増えたものの欧米の水準以下で止まったという。
つまり、「日本流の進化を遂げた食事=長寿食である」というのがこの本の結論。いろんなものを食べている人の方が健康状態が良好、ということが調査研究から言えるのだそうだ。
この本では、あまり断言せずに「このデータの結果、こう言えると思います」という押さえ気味の書き方に好感が持てる。
牛乳が体によくない、という説は長年いろんなところで言われていて、健康に関心のある人ならどこかで見聞きしたことがあると思う。私もなるべく摂らないようにしてきた。ところが、この本では「牛乳を飲まないより飲んでいる人の方が健康状態がよい」とされている。
牛乳そのものがいいとは断言できないが、牛乳を日常的に飲む=洋風のメニューも取り入れている人の方がより健康であると推測できるという。
著者の意見として、「もし本当に体に悪い食べ物なら、淘汰されているのではないか」とあった。長年たくさんの人が摂り続けているものは、牛乳に限らずそれなりにプラスの面があると考えていいだろう、という結論だった。
ここ数年粗食というか、できるだけ和風にすることを意識してきたが、私は体調が長期間戻らず、家族はひどい貧血と判明したばかり。この本に書かれたことがすべて正しいとも言えないが、何かひとつの方法をやみくもに信じて取り入れることの危険性を感じた。
このブログに来て下さる方々にとっては、親の世代の話だと思うがご両親に元気でいてもらうためにも、またご自身の知識のバランスを取るためにも、一読をおすすめします。
私のアクション:食事内容を見直す
以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
老化予防を目指した食生活指針(P94)
1.食事は1日に3回バランスよくとり、食事は絶対に抜かない
2.動物性タンパク質を充分にとる
3.魚と肉は1対1の割合でとり、魚に偏らないようにする
4.肉は、さまざまな種類や部位を食べるようにする
5.油脂類の摂取が不足しないよう注意する
6.牛乳は1日200ml(1本)以上とる
7.野菜は、緑黄色野菜や根菜類など、たくさんの種類を食べ、火を通して調理し、摂取量を増やす
8.食欲がない時は、おかずを先に食べ、ご飯を残す
9.調味料を上手に使い、おいしく食べる
10.食材の調理法や保存法を覚える
11.和風、洋風、中華など、さまざまな料理を作るようにする
12.家族や友人と会食する機会を増やす
13.噛む力を維持するため、義歯の点検を定期的に受ける
14.健康情報を積極的に取り入れる
健康長寿3つの柱(P204)
・栄養
・体力
・社会参加