でもとても楽しい。少しずつ読み、読み終わる頃にはもったいないような、少し淋しい気持ちになった。
「作家・村上春樹」が世間でどのように評価されているのか私にはよくわからない。初期の頃から読んでいるので*2、村上春樹ブームと言われた時も逆に読んでいる、とおおっぴらに言えない雰囲気の時も、「へぇ、そうなんだ」と横目で見ていた。
あれだけ長い間作家活動をされていたら作風も変わるし、いろんな作品があるので「これが村上春樹だ」と感じる作品も人によってたぶんバラバラだと思う。
私にとって一番村上さんを身近に感じられるのがこのシリーズのメールの返事だ。
実にさまざまなメールがある。深刻な人生相談みたいなものからファンならではの質問、逆にまったく質問ではなく「ただ村上さんに聞いてほしかったのです」というものまで。
それに村上さんはひたすら答えていくのだが、人となりが伝わってくる。ユーモアがあり、人生の教訓みたいなものもあり、時々すごくチャーミングだ。
別に村上さんは人生訓として書いているわけじゃないと思うが、私には励ましになる言葉がたくさんある。
こういうのを日めくりにしてくれたら買うのにな、といつも思う。
今となっては「村上春樹を読みたいんだけど」と聞かれても、小説はどれからすすめたらいいのか難易度が高そうだ*3。
意外にこういう本から読み始めるのも、村上さんってこういう人なのか、と思えていいかもしれない。
私のアクション:「40歳を過ぎてなおかつ素敵な女性」を目指す
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以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。
『ノルウェイの森』より(P31)
「物事と自分との間にしかるべき距離をおくこと」
村上さんの基本的な考え方(P31)
「腹が立ったら自分にあたれ、悔しかったら自分を磨け」
いくつになっても「男の子」でいるために心がけていること(P46)
1.愚痴をできるだけ言わない。
2.好きなことをただ一生懸命やる。
3.お腹の肉をなるべくつけない。
4.新しい音楽を積極的に聴く。
いちばん大事なのは、自分の心に耳を澄ませること(P50)
だという気がします。他人の言うことにふりまわされないように。人生にマニュアルはありません。自然に生きていくことがいちばんだと思います。
スペインのことわざ(P52)
「優雅に生きることが最良の復讐である」
どんなひどいことを言われても、されても、柳に風と受け流し、「知ったことか」と楽しく優雅に生きていくことが、最良の復讐なのだということです。含蓄のある言葉ですね。
クールに生きるためには(P82)
常日頃から感情の「仕込み」をしておく必要があります。心の奥の部分に「非常食」みたいなのをしっかりと貯めておくわけです。そうすれば、いざというときにクールな顔でしのげます(もちろん限度はありますが)。
さて、「仕込み」はどうやってやればいいのか?いちばんいいのは、予行演習をしておくことです。本を読むのもそのひとつです。あなたがやっているように。もうひとつは、自分のした失敗から教訓を学ぶことです。僕はたくさん失敗しますので、学ぶことがたくさんあります。
自己陶酔はしない(P135)
でも自己陶酔ってないですね。いちいち陶酔していたら、仕事になりません。自己チェックも甘くなりますし。アドレナリンはどんどん出てくるけど、その一方で頭はクールに保たれている、というのがプロの世界です。なんか猫マーロウさんの世界ですね。
人生には無駄なことって必要なんです(P208)
最短距離を進んで、無駄のないことばかりしていたら、人間の心はやせ細ってきます。僕だってこれまで、読むだけ時間の無駄という本をたくさん読んできました。だからこそ優れた本の価値というのもわかってくるわけです。
大事なのは情報量ではなく、情報の質(P222)
後ろから追いまくられるような生き方は疲れます。自分の好きな本をじっくりと時間をかけて読めばいいのです。ほんとに。
(作者にとって)いちばん大事なのは(P239)
自分がやるべきことをやったという確かな実感だと思います。そういう実感さえあれば、あとは時がすべてを解決してくれるだろうと思っています。時間にしか解決できないことが、世界にはけっこうたくさんあります。そして僕はそういうものごとをいちばん信頼したいのです。
健康の秘訣(P241)
いちばん大事なのは、ものごとをあまりむずかしくくよくよと考えないことと、いろんなことを適当にすらすらと忘れちゃうことですね。それからいやなやつとはやるべく顔を合わせないようにすること。健康にはそれがかなり大事だと僕は思います。サプリメントなんかよりもずっと。
腹が立つことへの対処法(P253)
気持ちはよくわかりますが、そういうことって日常的にいっぱいあります。生きていれば生きてするだけ、その数は増えていきます。そのたびにいちいち真剣に腹を立てていたら、身がもちませんよ。
そういうときには「気の毒に、この人はたぶんやりたくない仕事をいやいややっているんだろうな。毎日がきっとつまらないだろうな」と思って、相手に同情してあげたほうがむしろいいような気がします。僕はなるべくそうするようにしています。
文章を書く時に気をつけていること(P310)
…まず気をつけるのは「この文章は誰かを傷つけてはいるまいか」ということです。それから次に「こんなことを書くことによって、僕は自分を損なっているのではないか」ということです。
スランプのときって(P347)
スランプを一生懸命やるしかないと僕は思います。「どこまで落ちるか見てやろう」というくらいの覚悟を決めた方が上手く行くような気もします。世の中には、時間がある程度経過しないと解決しないことってありますよね。だから時間と友だちになろうと思われるといいのではないでしょうか。
自分の存在理由がわからなくなった高校生へのアドバイス(P351)
原理的なことを言えば、今の君が感じているのと正反対のことをやれば、人生はもう少し滑らかに流れるようになります。つまり日常的にやっていることを大事にして、つまらないことは「これはつまらないことなんだ」と適当にやり過ごし、「現実はしんどいけど、まあひとつひとつ順番にこなしていこうか」と自分を励ますことです。
お金で買える最高のものは(P357)
時間と自由だと思っています。それ以外のものは、極端に言ってしまえばほとんどつけたしに過ぎません。
「村上の基本的世界観」のひとつ(P364)
人間というのは2年先のことまでは考えられるけど、3年より先のことはとても考えきれない、というのが僕の基本的世界観です。
だからもっぱら2年先までのことだけを考えましょう。