毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

世界に誇れる「おもてなしの心」☆☆☆

加賀屋の流儀 極上のおもてなしとは
細井 勝
PHP研究所(2006/08/26)
¥ 1,680
家族が借りてきた本。以前読んだ『「最強のサービス」の教科書』で加賀屋には興味があったので、読んでみた。予想したのとまったく違う内容だった。


この本が出たのは2006年。
この本の冒頭で加賀屋は「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100」に26年続けて選ばれたと書いてあるが、この本が出版されたのは2006年。確認したところ2012年現在も1位を続け、32年連続記録を樹立したそうだ。
2012年の第37回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」――旬刊旅行新聞
※加賀屋ではこちらのページで報告されています


最初からすごいインパクトだった。

この宿には「ありません」「できません」とは絶対に言わない伝統があることを知った(P3・「はじめに」より)。

まず登場するのが「陰膳」の話。陰膳とは、亡くなった方も一緒に食事ができるよう、席(やお膳など)をしつらえることだ*1
加賀屋に泊まるのが夢だった家族や友人のために、写真や位牌を持って来られるお客様は多いのだそうだ。何かの折にその話を聞いた客室係は、自分の判断でお花やお食事を用意するという。
それに感激したお客様の手紙やその後の交流などが紹介されていた。

いきなり目頭が熱くなるようなエピソードで、「長年1位を続けるには、どんな秘訣やテクニックがあるのだろう」と思って読んだ私は面食らった。
この本はマニュアル本ではない。著者は前書きに「マニュアルのように読めるかもしれないが、読んでその通りにしても加賀屋のようにはならない」という意味のことを書かれていたが、マニュアルとして読んでもたぶん何も身につかないだろう。
加賀屋にはマニュアル化できない「おもてなしの心」が伝統として息づいているのだ。


加賀屋は、創業した小田家が今も経営する同族企業だ。和倉温泉の旅館としては後発であり、そのハンディを克服しようと女将が死にものぐるいで徹底したのが「心からのおもてなし」だったという。だからこそ、初代女将が培った伝統が受け継がれているのだろう。
同時に、お客様だけでなく従業員にも心を砕いた。離婚して女手ひとつで子どもを育てるために客室係として入ってくる女性が多いので、安心して働けるように寮や保育所を作ったという。
他にも、これは『「最強のサービス」の教科書』にもあったが、重い夕食のお膳を運ぶ労働から客室係を解放するために機械を導入したり、客室係が自分の判断で動けるように、働きやすい環境が考えられている。
だから、マニュアル通りというよりは「自分の判断で動ける客室係を育てる」ことに重点が置かれているのだ。


読みながら「何かに似ているな」と思った。そう、これはリッツ・カールトンの考え方に似ているのだ。
そう思ったら、実は加賀屋では研修として職員にリッツカールトンに泊まらせているそうだ。真のホスピタリティーは「洋の東西を問わない」のかもしれない。


この本を読んだら、泊まってみたくなった。超一流のサービスを提供する旅館なので、お値段も超一流。でもきっと、それに見合うだけの満足が得られるのだろう。
これからの付加価値は「サービス」にあるそうだ。サービスのひとつの答がこの本にはあると思う。
関連記事
読書日記:『「最強のサービス」の教科書』


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

1杯のお茶でも、気持ちを込めて入れると必ずおいしくなるもの(P48)

気持ちを込めるか込めないか、目には見えないその違いから生まれる心地よさが加賀屋の一番の魅力

気持ちの先回りを、いつ、どなたにも、さりげなくして差し上げる(P88)

お客様に言われる前に、さりげなくして差し上げるサービスが、おもてなしなんです。言われたあとなら誰だってできて当たり前、そのうえお客様も感動はしないですよね。

お客様の後ろにもお客様が(P107)

※先代女将、小田孝さんのことば
「私は頭を下げる時、目の前にいるお客様の、目には見えないけれど、その方の後ろにいらっしゃる大勢のまだ見ぬお客様にも挨拶している。加賀屋でいい1日を過ごせたお客様は、きっとご友人やお仲間を紹介してくださる」

てきぱきしているから、ゆったり動く余裕が生まれる(P145)

てきぱきとバタバタは違うんですよ

まず社員を幸せに(P248)

※女将、小田真弓さんのことば
「お客様を大切に思うなら、その方々を接客する客室係やほかの社員たちが何より幸せでなければならない」

*1:留守でその場にいらっしゃらない方の無事を祈って、という場合もあり(ただし、この本での意味は“亡くなった方のため”)