結果として感じたのは「必要な人にとっては役に立つ本」ということだ。
◆目次◆
第1章 本当は恐ろしい職場のIT
第2章 世代で異なる副作用
第3章 「IT黒船襲来」に躍る人々
第4章 依存症克服への「処方箋」
著者の一人、山本孝昭氏は、株式会社ドリーム・アーツという“元”パッケージ・ソフトウェア会社の代表取締役だ。「元」と書いたのは、山本氏自身が「卒業しました」と「トップメッセージ」のページに書いているから。
IT関連会社の社長が、仕事で感じた“このままではまずいのではないか”という危機感を、早稲田大学ビジネススクールの遠藤功教授のもとに持ち込んだことがこの本のきっかけだという。
手っ取り早く言えば、この本はパソコンひとり1台が当たり前になった企業で、実はパソコン・ITは効率化・高収益化に貢献していませんよ、と警告したものだ。そのさまざまな原因をIT導入の歴史からひもとき、最終章では「処方箋」も示される。いかにして過剰なIT環境を整理し、コピペだけで流しがちな仕事を創造的なものにしていくか、実例も紹介されている。
…「ヒト」は「情報」と「対話」に対し、本能的に極めて強い欲求やこだわりを持っているのだ。
(中略)
それがITの進展により、たったここ20〜30年で、対処できないほどにあふれかえり、ICF=情報と対話の洪水になってしまった。
これこそがIT中毒の元凶だ。IT中毒とは、ITにより対処不能な量の情報や対話を抱え込み、逃れられないことが根本原因にある。容易に逃れられない、止められないのは、「ヒト」の本能が強烈に働いているからだ(P122)。
パソコンを全員に支給し、使わせただけで結果が変わることなどあり得ないのだ。むしろパソコンという新たな道具を使うことに夢中になり、結果に影響を与えるほかの要素がなおざりになるのが関の山である(P140)。
最終的な目標には、
「業務時間の○割以上を、顧客対応にあてる」
「パソコンに向かう時間は、1日の業務時間の○割までに抑える」
「1日に必ず○時間以上は、顧客サービス向上のアイデアを考える時間にあてる」
など、できるだけ具体的な時間の使い方を挙げる(P171)。
つまり、この本は企業レベルの話がほとんどで、残念ながら個人レベルで役に立つ話はなかった。
仕事でがんばっているのにはかどらない、前に進んでいる感じがしない、という人は、この本に出てくる職場全体の「IT中毒」「過剰摂取」を疑った方がよさそうだ。
年代・立場別の問題と解決法も紹介されているのが親切だ。立ち位置によって問題は大きく変わってくるからだ。例として出てくる人の名前がセンスが悪くていただけない*2が、そこをぐっと堪えて読み進めば、得るものも多いはず。
ピンと来た方はぜひどうぞ。
※この本のメモはありません