毎日「ゴキゲン♪」の法則

自分を成長させる読書日記。今の関心は習慣化、生産性、手帳・ノート術です。

人生だって「とりあえずnullを突っ込んでコンパイル」☆☆☆☆

ソーシャルもうええねん (Nanaブックス)
村上福之
ナナ・コーポレート・コミュニケーション (Nanaブックス) (2012/10/26)
¥ 980
家族が借りてきた本。ソーシャルメディアに関する本を最近続けて読んでいるので、考え方が偏らないためにいいかと思って何気なく読んでみたら、想像以上に深い本だった。


◆目次◆
はじめに
第1章 ソーシャルもうええねん
第2章 動いているものを見せれば大人は納得する
第3章 世の中、金ではどうにもならないことがたくさんある
第4章 最後によかったと思える人生を
あとがき 個人の時代

著者は、家電メーカー勤務の後独立・起業したしたWebプログラマー
技術系サイトなどで書いたブログが評判になり、5年分の記事をまとめたのがこの本。


とにかくいろんな意味で型破りな本だし、著者自身が型破りなのだ。
会社を辞め、旅行で行ったオーストラリアで永住権を取ってしまうし、あちこちで災害があるたびにネットで多額の義捐金を集めて届けに行くし(それぞれの顛末がまとめられている)。
この本だって表紙はあの漫画家・佐藤秀峰さんが書いている。それも、著者がツイッターで「書いてもらえませんか」と頼んでみたところ、帯のキャッチコピーまで付いてすぐ原稿が返ってきたというものだ。


最初に思ったのは「どうやったらこんな人ができるのか」ということだった。著者自身の話はこの本の後半にたくさん出てきて、どれも興味深い。


タイトルにもなったソーシャルメディアの話は第1章にまとめられている。
ネット業界の内幕をどんどん暴露してあるので、著者の立場を心配してしまった。そのくらい包み隠さず書いてある。
Twitterのフォロワーも、Facebookのいいね!も、実はお金で買えること。クリック広告の実に80%がコンピューターで自動的にクリックされたもの、という説があること。Facebookのユーザー数が実は架空の可能性が高いこと。

また、食べログやらせのからくりや*1ソーシャルゲームの課金の仕組み、ソーシャルメディアコンサルタントを名乗る人たちの嘘などもどんどん暴いていく。

みんながいいと言ったから、流行だからと安易に何でも受け入れてしまうと危険ということがよくわかる。

2章以降は、IT業界で働く人、それを目指す人にとって役に立つ話題が多い。
でも、それ以外の人にとっても意味のある、生き方の核のようなものもある。

僕は、Webプログラミングは、漢字の書き方を覚えるのと大差ないと考えています。最初の最初は、「写して、書いて、覚える」しかありません(P113)。

実はこれは応用が利き、著者がオーストラリアで永住権を獲得する時に英語の例文をひたすら写していたら審査が通ったそうだ。


また、非コミュプログラマーだった著者が独立するのに必要だった、ふたつの勇気について述べているところが特に面白い。
非コミュとはコミュニケーション能力が劣っているという意味(著者の説明による)
これも、すべての人にとって真理だと思う。

1.nullなり適当な値を突っ込んでコンパイルする勇気
2.プライドを捨てて、人に聞いたり、頼ったりする勇気

「null」(ヌル)とはプログラミング用語で「からっぽ」または「空欄」のような意味。コンパイルとは、ここでは「実行する」と解釈する。

会社を設立しようにも登記する書類を作るのが大変だったため、法務省のWebページからテンプレートをダウンロードし、面倒に思える箇所は空欄のまま法務局に提出。

すると、後日法務局から呼び出される。
奥の部屋で担当のおっちゃんがひとつひとつ教えてくれたという。
そして、とどめのひと言。

「ええか、これからもな、わからんかったら、人に聞いたらええんや。誰でもなんでも最初からうまいこと行くもんちゃうんや。人生、勉強やで」

その後、著者は同じやり方で初めての法人税の納税もクリア。

大きなメーカーで開発職だった著者は、営業も経験がなく、
「見積書って何ですか?」
から始めたそうだ。

著者によれば、知ったかぶりをした同業者(独立したプログラマー)は消えていったという。わからなければ素直に聞く、という姿勢を貫いた著者は生き残っている。


また、著者の「好きなことをやりなさい」と言う大人は無責任だ、という考え方も面白い。

僕が高校のときに読んだ数学の参考書にこう書いてありました。

「好きだからできるようになるのではない。できるようになったから好きになるのだ」
(中略)
「好きなこと」のみをやっていくと、何もできない無限ループに陥る可能性がすこぶる高い。「とりあえずやってみる人」のほうが好きなものを見つけやすいですし、ずっとハッピーな未来があると思います(P158〜161)。

確かに、「とりあえずnullを突っ込んでコンパイルする」人らしい説だ。こう考えれば、「好きなことが見つからない」と悩んだりせずに、ハードルを下げてとりあえずやってみようと思えそうだ。


単なるソーシャルメディア批判本でもないし、分類がむずかしいが、こういう話にちょっとでも興味がある人は、読んでみてください。私は著者の文章そのものが気に入った*2ので、ブログを探してお気に入りに入れました。
私のアクション:「とある外国語」習得に「写経」を取り入れる


以下は私のメモなので、興味のある方はどうぞ。※メモに関してこちらをご覧ください。

プログラミングを覚えるためには「写経」しかない(P113)

Webプログラミングは、漢字の書き方を覚えるのと大差ない。最初の最初は「写して、書いて、覚える」しかない。
どんなに素晴らしい本や教材やサイトがあっても、地道にやる「根気」と「時間」がないと意味はない。
どんなに歳を取っても、どんなにベテランになっても、何かを学ぶ時にはプライドも恥も捨てて、素直に「地道に写経」から。

相見積もりを取られない分野で仕事をしよう。競争は最大のコストだ(P146)

競争に勝ち抜くより、いかに競争しないかを考え抜くことが大事

「好きだからできるようになるのではない。できるようになったから好きになるのだ」(P158)

人は、最初、何もできない。大人になっても多くの分野で無知のままだ。

「好きなこと」のみをやっていくと、何もできない無限ループに陥る可能性がすこぶる高い(P161)

「とりあえずやってみる人」のほうが好きなものを見つけやすいし、ずっとハッピーな未来がある。

リーチするメディアを持っていないと、ムーブメントを起こすのはむずかしい(P172)

いいものを作るだけではだめ。商品を買っていただけるお客様に届くメディアを持たないといけない。メディアなり、パブリシティなり、自分でコントロール可能なリーチ手段が必要。

*1:この本を読むまで知らなかったんですが、当時話題になったやらせかどうか判定するサイト「ステログ」は著者が作ったものでした→食べログ内のヤラセがわかる?今度は「ステログ」が話題に http://news.infoseek.co.jp/article/menjoy_34277

*2:笑えるけど、ものの見方はとても鋭く参考になります