PHP研究所(PHPビジネス新書)(2012/12/19)
¥ 861
もともと、報道の偏りというか、バイアスには関心があったからだ。
なかなか興味深い1冊だった。
◆目次◆
序章 私たちはなぜ、「もっともらしいこと」を言いたくなるのか
第1章 「草食男子」流行に見る「もっともらしいニュース」ができるまで
第2章 「イマドキの若者は○○○」説を疑う
第3章 騒がれる「少子晩婚化」の意外なデータ
第4章 あの社会問題の表と裏
第5章 「日本は終わっている」のか
終章 あなたの「偏見」を大切にしよう
著者の深澤真紀さんはいくつかの会社で編集者として活躍し、現在は独立。コメンテーターとして新聞やテレビなどにも出られている。
実は、「草食男子」という言葉を作ったのが著者だそうだ。ところが、著者の意図した意味*2とは逆の方向にどんどん広がっていったという。
この本の前半では、実際に「草食男子」という言葉がいかに都合のいい意味に解釈されて広まったか、ということが細かく検証されている。確かに、“人は都合のいいように曲解するんだなあ”というのがよくわかる。
このような体験から、後半は「ニュース・報道は伝える側の意図がかなり反映されたものである」という仮説をもとに、さまざまな説の真偽を見ていく。まことしやかに伝わっている、今や常識のようであるあれやこれやが、実は違いますよ、というデータと共に“開示”されている。
やはり、伝え手が人である以上、その人の考え方や「伝えたいもの」に沿ったニュースが作られてしまうのは、ある程度仕方がないのかもしれない*3。
取材を受けるときにも、記者がそのニュースについてあまり予習してこなかったり、あるいは逆に、最初から「こういう記事を書く」という筋立てを決めてくることも少なくなく、「もっともらしい」ニュースにされてしまう。これは国内のメディアだけではなく、海外のメディアでもそうなのです(P5)。
それは、見る側の問題でもある。
私たちは、自分の望むようにニュースをみてしまい、「もっともらしい」言葉を使ってしまうことが往々にしてあります(P184)。
この、「もっともらしい」が一番危ないのだ。
ではどうするのか。
著者の答は「“偏見”を持ち寄る」こと。
…「意見を言う」ことはそれぞれが“偏見”を持ち寄ることだと思うのです。その“偏見”をどうとらえるか、自分はどういう“偏見”を持つのか。人々が様々な“偏見”を持ち合いながら、それを尊重していきたいと思うのです。
(中略)
偏見をうまく扱う技術を身につけると、自分が生きやすいと感じられることや、依拠するべきことは何かがわかってきて、生きやすくなるはずです(P185,187)。
自分を含めそれぞれが偏見を持っている、と自覚すること。その上でニュースやマスコミ報道に触れ、理解すること。
著者は「みんなちがってみんないい」ではなく、「みんなちがってみんなヘン」と思うのがいいのではないか、と書かれていた。
みんな偏っているし、ちょっとヘンなのだ。そう思っていれば、もっともらしい言葉にコロリと引っかかる確率はかなり減るだろう。
「草食男子」がいかに命名者の意図を離れて一人歩きしていったかを読むだけでも、バイアスの危険を実感できる。
これからは、自分の考えを持ち、自分で判断できる能力が求められると思う。
何でも鵜呑みにしない、質のよい「アンテナ」と「フィルター」を持つためにぜひ読んでみてください。
※この本のメモはありません